作戦実行

そして翌日、暴力団の殲滅作戦が実行される。


「千聖、本当に蒼太くんは大丈夫なのか?なんなら今からでも……」


「ううん」


千聖は父親が言おうとしたことに首をふり否定する。


「そーちゃんは少し抜けてるところとか、あまり頭は回らないけど…」


「けど?」


父親が聞き返す。


「そーたなら大丈夫!!!」


「なるほど。そーたくんなら任せられる」


千聖の父親はそういって安心したような顔つきになった。






俺は檜山会の拠点から少し離れたところで指揮をすることになった。

昨日言った通りに親衛隊は既に配置についている。

後は俺が合図を出すだけだ。


「蒼太様。準備が整いました」


「ああ」


隣にいる東山がそう言うと、俺は頷き襟腰を触る。


「これはもういらないな」


そういって襟腰から取って踏み潰した。

再び地図を確認したあと、俺は開始の合図を出した。






場所は変わって敵拠点の裏道。

10人の精鋭部隊が慎重に行動している。


「隊長、本当にあの高校生で大丈夫なんですか?」


一人の隊員が不安を口にする。


「黙れ、その言動は規定に反する。次はないぞ」


「っ…すみません」


規定とは親衛隊拠規定を指しており、全部で10条まである。

これは白石家がつくったものではなく、先の親衛隊達が勝手につくり、それを代々固く守っている。


裏道を進むこと一分、隊長の無線に反応が出る。


『奇襲部隊、こちらは大隊長の蒼太です』


「こちら奇襲部隊、どうぞ」


『隊長含め三人はそのまま作戦を実行。残りの六人は二手に別れ、敵の退路を塞げ』


「了解」


「お前ら、話は聞いたな?」


その場にいる全員が頷く。

隊長が合図を出すと、作戦通りに動いた。




『左配置完了』


『右配置完了』


「了解。突入!!」


合図と共に中に閃光弾を投げる。

閃光弾が作動する音とともに中から悲鳴があがる。

悲鳴を確認した隊員たちは突撃する。


「ぐあっ!」


「がっ!」


敵に向けて弾を放つ。

ろくな抵抗もできず次々に内部にいた敵が殺られていく。

それもそうだ。

訓練された兵士からすれば、素人が持つ拳銃なんぞ恐るるに足らない。


「う、うああああああ!!」


「くそっ!とりあえず引くぞ!」


「急げ!!まだ出口に迎え!」


構成員たちは出口に向かって走り出す。

銃を持った敵に背を向けるなど殺してくださいと言っているようなもの。

隊員たちは構わず撃ち続ける。


「よし!出れっ…」


「ってえ!!」


左右斜めの方向から銃弾の嵐が降り注ぐ。


「うああ!まだいやがる!!」


「は、はあ!?」


「通路の窪みに隠れろ!」


命からがら銃弾から逃れた構成員は通路にある少しの窪みに身を隠す。

もう既に、部屋にいた構成員は一人を残し死んでいた。

それに比べ奇襲部隊は死傷者0だ。


「ちくしょう!!こんなことなら外に何人か潜伏させとけばっ……!」


油断が生んだ結果だ。


「裏にいるなんて聞いてねえぞ!くそが!」


あの場にいた構成員が愚痴を零す。

今の状況に怒りを感じていると、目の前になにかを投げ込まれる。


「まずっ!手榴弾……!」


反射的に腕で身を守る。

だが、一向に爆発はしない。

疑問に思い恐る恐る投げられたものに目を向ける。


『ドカーン!!』


「っ!?」


唐突な声にビクリと体を震わせる。


『なんちゃって』


「くそ!なんなんだお前!」


『油断は禁物、いかなる時も慎重に、気を緩めてはいけない。ほら、今も』


「は…?」


前を向くと、奇襲部隊が銃を構えている。


「くそ!くそおおおお!!」


一発の銃声が鳴り響いた。


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