幼馴染と学校

高級感のあるリムジンで学校に向かう。


「すげえ…!」


「んふふ」


初めてのリムジンにテンションが上がってしまって千聖に笑われてしまった。

だってしかたないだろ!

椅子がベッドみたいにフカフカなんだぞ!?

椅子のフカフカ具合を堪能したり、備え付けの豪華な冷蔵庫を見たりと、リムジンを存分に味わった。


「そーちゃんってば子供〜!」


千聖は楽しそうに言った。




リムジンを堪能していると、いつの間にか学校についていた。


「あれ…ここ学校じゃん」


「数分前から着いてたよ?」


「え!?なんで言ってくれなかったんだ!?」


「そーちゃんが楽しそうだから、ついね?」


「あ、いや、その、すまん」


「いいんだよ〜。さ、行こっか」


千聖がそう言うと、外に待機していた黒服の人がドアを開けた。

金持ちってなんでも人にやってもらえるのか。

些細なことに感動しつつ校門に向かう。


「っ…」


校門の前で足が止まる。

これ以上は進みたくないと本能が訴えかけているようだ。

久しぶりの学校に緊張しているのだろうか。

いや、それはちがう。これは緊張なんかじゃない。

アイツに対する嫌悪感と恐怖。

くそっ。情けないな俺は。


「大丈夫だよそーちゃん。私がいるでしょ?」


「千聖……」


千聖が手を握ってくれる。

誰にでもできる簡単なことなのに、これ一つで勇気が出てくる。


「もう大丈夫だ。ありがとう千聖」


「うんっ!」


そう言って校門をくぐった。




下駄箱で靴を履き替え、職員室へ向かう。


「すみません。あら…白石です」


俺の苗字は荒川あらかわだが、もうこんな苗字は俺に必要ない。

これからは千聖の苗字でもある白石しらいしを名乗ることにした。

もちろんこれも千聖に言われたことだ。

ガラガラと音を立てて扉が開く。


「白石…?そんな生徒うちには、って荒川じゃないか!」


担任の福田先生が出てきた。

急に登校しなくなったら俺を見て驚いているようだ。


「それは旧名です。これからは白石を名乗ることにします」


「あ、ああ。事情はよくわからないが、そこの女子はなんだ?」


そう言って先生は後ろに目を向ける。


「私は白石千聖です。校長室に学校長はいられますか?」


「いるが……」


「そうですか。ではこれで。そーちゃんまた後でね!」


そう言って千聖はどこかに行ってしまった。

呆気にとられていた先生だが、我に戻って俺に目を向けた。


「とりあえず、教室に行くか?」


「いえ、そのつもりはありません。退学申請をしにきました」


「た、退学!?なにを言ってるんだ!?」


「説明するつもりはありません。教室にある俺の物は処分していただいてもかまいませんので。では」


「お、おいっ!」


先生が制止を呼びかけるが無視して学校を出た。


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