幼馴染の朝ご飯 ※千聖

「じゃあ制服だね!待ってて!」


そーちゃんと離れるのは名残惜しいけどメイドに新品のそーちゃんの服を触られたくないし、しかたがない。

予め用意していたそーちゃんの服を手に部屋に戻ろうとすると、そーちゃんの好きなパン料理が頭を過ぎった。


「よし!」


私は心を弾ませながらキッチンに向かった。

ベーコンと目玉焼きをパンに挟む。

こんな簡単な料理だけど、昔よくそーちゃんが食べてたものだ。

私のそーちゃんノートの好物欄にも載ってある。


「うんっ♪いいでき!」


「でも作りすぎたかな……?」


まあいいやと料理と服を持って寝室に向かう。

寝室のドアを開けると、そーちゃんがなにやら可愛い顔で驚いているようだ。


「そーちゃん!制服持ってきたよ!どう?綺麗でしょ?」


「綺麗って…どう見ても新品だろ」


当たり前だよそーちゃん!

そーちゃんは私の大切で大切でしかたない人なんだから。


「だって前にそーちゃんが着てたのボロボロなんだもん」


私のそーちゃんをこんな目に合わせた蛆虫共は絶対に殺してやる。

ああ、かわいそうなそーちゃん……。

ずっと抱きしめててあげたいけど我慢しないと。


「うっ……ってそんなことより!この部屋はどこかのホテルか?」


「ちがうよ?私の部屋だよ?あ、でもそーちゃんも住むことになるから私とそーちゃんの部屋だね!」


そう!今日からここは私とそーちゃんの愛の巣!!

毎朝毎晩一緒にいて…それでそれでっ…キャー!

そーちゃんと話していると、そーちゃんのお腹の虫さんが鳴いたようだ。

お腹の音も可愛い……。

ってちがうちがう!ちがうくないけど!


「あ、お腹空いたよね。そーちゃんココ最近雑草とかしか食べてないでしょ。そんなんじゃ不健康だよ」


「なんで知ってるんだよ……」


「ひみつ〜。さっ!ご飯食べよー!」


乙女には聞いちゃいけないことだってあるんだよ?






「そーちゃんってベーコンと目玉焼きをパンで挟んだやつ好きだったよね〜」


「ああ!今も好きだがな!アレにマヨネーズかけて食うと美味しいんだよ!!」


私が好物について話題を振ると、そーちゃんは無邪気な笑顔で話し始める。

そんな反応されると私も嬉しい。


「ふふ。そう言うと思って作ってきましたー!」


「お、おぉぉぉ……!!」


そう言ってさっき作った料理をそーちゃんの前に差し出した。

そーちゃんは目を輝かせて見つめている。

か、かわいい…!


「お、お嬢様!ご食事は私達がお持ち致します!」


メイドの料理なんてそーちゃんには食べさせたくない。


「えぇ。私がそーちゃんにご飯あげたいの!」


「で、ですが……」


「いいの!はい終わり!」


強引に話を終わらせる。

そーちゃんに目を向けると、今にもヨダレが垂れそうな雰囲気を出しながら物欲しそうに言ってきた。


「な、なぁ。食べていいか…?」


キュンキュンしすぎて口から心臓が出そうだよ。

私は今すぐそーちゃんを食べたいけどね。

待たせるのはとてもかわいそうなので謝罪を交えつつ食べていいよとサインを出す。


「あ!ごめんね!いいよ沢山食べて!」


「じゃあ、いただきます!」


そう言ってそーちゃんがサンドを口に含む。


「美味い…!」


「よかったぁ〜!頑張って作ったんだ!」


「やばい。美味い、美味すぎるぞこれ!?」


「そんなに急がなくてもたくさんあるからね」


「でもっ……!」


そーちゃんは止まらないといった様子でサンドを頬張る。

もう幸せで今にも倒れそうだよぉ。


「かわいいなぁそーちゃんは…本当に…本当にかわいいなぁ」


ついかわいいと思うあまり口に出てしまった。

しかしそーちゃんはご飯に夢中で聞こえていないようだ。

余りに頬張っているので喉に詰まらせないか心配だ。

一応水を持っておこう。

そーちゃんを眺めていると、口に卵が付いていた。


「あ、そーちゃん口元に卵付いてるよ。って聞いてないや、取ってあげるね」


口に付いた卵を指先で拭う。

そーちゃんの卵……。

思わず口に入れてしまった。

うんうんっ!美味しい!これだけでお腹いっぱいになっちゃう。


「お嬢様!そのようなお行儀の悪い行動は……」


黒髪の眼鏡をしたメイドが注意してくる。


「えぇ〜いいじゃんべつにー」


「庶民の口に付いてるものなんて不潔で…」


「それ以上言うと怒るよ?」


そう言ってメイドを睨む。

自分でも空気が重くなるのがわかる。


「も、申し訳ありません…」


「そーちゃんに汚いとこなんてどこにもないよ。そーちゃんは全部全部綺麗なの。次同じようなこと言ったら知らないからね」


「し、承知致しました……」


少し沈黙をそーちゃんが破るように声を上げた。


「はぁ〜美味かった!」


「わあ!全部食べてくれたの!?嬉しいなぁ」


「美味すぎてまだ食べれそうなくらいだ」


「んふふ。さすがに食べすきだよ」


相変わらずそーちゃんはかわいいままだ。


「千聖は食べないのか?」


そーちゃんは申し訳なさそうに私に問いかけてくる。

私は安心させるように冗談を交えつつ大丈夫だという気持ちを伝えた。


「そーちゃんが食べてるの見てるとお腹いっぱいだ

よ〜」


「なんだよそれ」


わっ!そーちゃんが笑った!

後で確認しないと!


「じゃあ歯磨きして学校行こっか」


「…ん?千聖も来るのか?違う高校だろ?」


「ちょっとそーちゃんの学校に用事があるだけだよ」


「そういうことか」


身支度を済ませると、そーちゃんと玄関へ向かった。

あ、そうだ。一つ忘れてたことがあった。


「ごめんねそーちゃん。ちょっと忘れ物」


「ん?ああ、大丈夫だ。待ってる」


「ありがとう!すぐ終わるから!」


そう言ってそーちゃんから離れた。



これくらい離れればそーちゃんには聞こえないだろう。

私はスマホを取り出して電話をかける。


『はい。どういたしましたか?』


「今から一人頼める?」


『大丈夫です』


「じゃあ、今日の私の担当メイドいるでしょ?黒髪で……あとは眼鏡かけてた!」


『最近入ってきた木崎智美ですね』


「そいつ!」


『では、対象は木崎智美、とういうことで差し支えないですか?』


「うん!今日中には殺しといて〜」


『承知しました』


電話が切れて無気力な音が一定の音階で流れる。

あの時は許す感じで言っちゃったけどやっぱり…。

そーちゃんをバカにするやつは許さない。


「早くそーちゃんのところに戻らないと!」


私はスキップをしながらそーちゃんの場所へ向かった。

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