徳梅聖流さん⑤:24歳。スーパーの店員 ~ラジオ収録にて~

てゆうか、ほんとに私でよかったの?


私、ただのスーパーの店員よ。


……。


ああ、それ。


そのファンサイト、私、まったく関係ないのよ。


盗撮。


そこに投稿されてる画像、全部、盗撮だから。


……だから、別に芸能人でもないって。


何度も言うけど、ただのスーパーの店員なのよ。


ほんとにいいの?


あまり、たいしたことできないわよ。


お悩み相談なんてやったことないし……。


え?


そういうのが良いって?


自然な感じね……。


じゃあ、がんばろうかな。ご期待に沿えるかわからないけど……。


これを読めばいいのね?


んん。


なんか緊張してきたかも。


不思議な感覚ね。


喉も渇く……。水は飲んじゃだめなんだっけ?


あ、いいの?


……やっぱりいいや。


うわっ。手に汗がすごい。


え? 


いやよ。そういうノリ。私、そういうの好きじゃないの。


じゃあ、読むわね。


ごめんね、私なんかで。


んんっ。


初めまして、僕は高校二年生の男子です。


僕には好きな人がいます。その人は、通学の電車でみかける女の子です。


制服からすると、たぶんK大学付属校の生徒です。


とても可愛くて、一目惚れをしてしまいました。でも、どうやって声をかけたらいいかわかりません。


一回だけ、すぐ近くになったことがあります。


ラッシュで揉みくちゃにされながら、彼女と背中が密着しました。


めちゃくちゃドキドキしました。


でも、やっぱり声をかけられませんでした。


彼女を前にすると息ができません。


勇気をもてません。


どうしたらいいのでしょうか。


教えてください。


……ふう。


……なるほどね。


こういうのがくるわけね。


なんだか面白いわね。人の悩みって。その人の私生活を垣間見ているような感覚で、ぞくぞくする感じ。


私?


いや、まあ、そんな、ないわよ。


あなたが勝手にそう思ってるだけでしょ。


――って。


私は関係ないじゃない。


この子でしょ。解決しなきゃならないのは。


もういいの?


答えちゃって。


……。


じゃあ、いくね。


まあ、あれね。


あれよ。


うん。


さっさと声かけなさい。


それでダメなら次いきなさい。


勇気なんて、ただの言葉よ。


言葉にだせば消えるから。


わかった?


……。


……こんなんでいい?


……最高?


これが?


え?


そういうのが好きな人がいる?


なに、そういうのって。よくわからないんだけど。


次回も来て欲しいの?


ほんとに?




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