→【さらに友達がさらりと増えた。あの苦労はいったい。】→順風満帆。お腹もパンパン。


→順風満帆。お腹もパンパン。




 なべて世は事もなし。世はなべて事もなし。どっちでもいい。

 とにかく、なんと平和な青春を送れているのだろうかということだ。


「成長期は食べても太らない、なんていうのは幻想なんだよ!」

「それはただ成長以上に食べているからなのでは?」


 小学校が一番の難関だった疑惑。

 初期町の周りに強敵置くのやめろよ状態だったんだろうか。日常に不満はない。


 友達も増え、勉学もやっておいたほうがいいということを実感を込めて理解しているのでちゃんとやっている。現実の俺がもう大人な体な以上、ゲーム補正ということになるのだろうが、小学生の時よりは劣るとはいえいまだ現実よりもすいすい覚えられる――いや本当にこれオカルトだろうがなんだろうが現実にもっていったほうが色々はかどる技術なんじゃないのか。やっていいよ? と言われてもじぶんでやろうとは思わないけども。


「運動すれば? ジョグとか人気じゃん」

「啓くん。ジョギングっていうのはね……マラソンの一味なんだよ! 許されるものではないのだ」

「ないのだて」

「いや、君、運動能力も体力もあるのだから走れるだろうに」

「できるからするのが当然とか傲慢の極みなんだよ。三宮くん! そういう考えが差別を生みます! この差別主義者め、この人参を食べろ!」

「やめろ。移動させてくるな人参くらい自分で食べろ」


 部活もやっておいたほうがいい、ということで縛りが浅い文化部に所属もしてみたりしたのだ。

 おまけに大祐やら芽衣やらがついてくるので、俺がいわゆるタイムスリップとか転生ものとかにあるような知識チートとかは一切できないわけだが。


「というか芽衣って人参嫌いだったっけ? 走ることへの憎悪は運動能力よわよわだったころからずっとだから知ってるけど」

「別に……? グラッセとかも好きだけど、生でも食べれるよ?」

「じゃあなぜ俺のさらに人参を執拗に移したんだっ」

「ふふ、そんなの三宮くんが人参嫌いだからに決まってるじゃない? 成績いいのにバカなんだよ?」

「性格悪いのを隠そうともしない」


 わーい、めだたなーい。

 と喜びはしないが、逆に嫉妬もしない状況。目立つことが素晴らしいばかりではない、嫉妬しすぎるとろくなことにならないということを――なんでか強く知っている気がするのだ。そんなことを強く思うようなきっかけとなる記憶もないのに。


 嫉妬はされる。

 それははそう。見た目もより洗練されてきた中に、清潔感は保つ努力等しているとはいえ中の中くらいの人間がいるというだけで、変な目を向けてくるのはいる。その上に中身も優秀なのだから。平気で当然の顔してなんたら賞とかとったりするのだ。俺より高い位置で。

 もはや幼いころから自我があるから俺強え! というのはできない状況。


「だってこのくらいなら啓くん気にしないし、三宮くんだってそうでしょ」

「気にしてるなら猫かぶります宣言をここまで堂々と」

「にゃーん。思春期なのです。思春期ですので」

「思春期とはいったい……」

「思春期ってそんなのだったか……? あと、あざとすぎて気持ち悪い――やめ、いたっ……やめろ!性差があるから反撃されないと思ったら大間違いだぞ!」


 とはいえ、表立って『あいつごときが』等はあまり言われない。言われていない。

 まぁね。目立たないとはいえ、本来の俺より強化に強化を重ねてはきたわけで。見た目差、才能差ははっきりしているとはいえ、俺だって平均値よりは高いわけでして。


 本来同じランクにいるような奴でも初期強化しているのとしていないのとはまるで違うということを身をもって知ったね。というか引いたね。あぁ、初期から教育されている奴ってこんなに違うんだ、自覚のあるなしでやってたやつとやってないやつでこんなに差が出るんだってね。そら、エリート教育とかするし、でやってたやつのほがプロに多いのも当り前ですわって感じ。


 そこからさらに才能のふるいには欠けられるのだろうが、才能が低かろうがやれば強化分は乗るわけで。レアリティがRレアでも、他のRレアとは違うんですよ。ゲーム的に言うと、プラス補正かけたり上限突破とかすでにしちゃってレベルもあげてる感じ。ゲーム的にっていうかゲームなんだけどさ。


「今日はどうするの?」

「部活だろう。さぼるつもりなら止めないが、巻き込むのはやめてもらおうか」

「三宮くんがその自慢のフェイスと口八丁手八丁で顧問をオとせば解決するんだよ?」

「教師をオとす発言とは大きく出たなぁ。大祐ならできそうな気もするけど」

「いや、無理だろうそれは、さすがに」

「え?」

「え? なんだその目は」


 あぁ。本当に。


「いや、気付いてないのなら、そのままが幸せかなって」

「やめろ。不穏な空気を出すな。君がそれやるとシャレにならない」

「よっ! 不穏が似合う女!」

「ふははー! ……はともかく、あの顧問、隠しているけど三宮くんにねっちょりした視線よく向けてるよ? 三宮くんが捨てたごみとか回収もしてる。さりげなく。さすがの私も見たときは記録するより逃げたくなったんだよ……現代社会の闇なんだよ」

「待ってほしい。いって現代社会だけだろうか! 昔からあったんじゃないですかね! 俺はそういいたいですね」

「そっかー! そうかも!」

「え? いや、待ってくれ。二人とも。ちょ、え? 本気で? 冗談?」


 現実とこちらが、入れ替わりでもしてくれればいいのに。

 小学校のころからそう思っていたが、色々と解決してプラスが積み重なってくるとなおさらそう思う。

 入れ替わらなくとも、これが大事であるしやめようとは思えないが、そうなってくれればいいと。


「マジだぞ」

「マジなんだよ?」

「逮捕、案件レベルじゃないのか……? え? 気づいたら部屋の中にいるとかいう方面に……? カメラとか仕掛けられてないか?」

「いやぁ、実際、気は使ってるというか隠してるは隠してるから……ちょっと弱いかなぁ。放置でもそこまで害はなさそうだったし三宮くんだから、記録取ってないし?」

「大祐だから、という部分に信用とどうでもいいという矛盾した二つのものを感じる……!」

「とってくれ。そこは。捨てたごみ収集とかもう害だろう。精神的に考えて……」

「ぐったりしとる」

「無理もない」


 そのくらい、あまりにいいものに思えてしまうから。

 そのくらい、あまりに現実がつまらなく感じてしまってきているから。


「実際、嫌ならさりげなくでも気付いている言えば解決すると思うよ。言われてまで続けられるほど図太くはないみたいだから。隠しカメラとか盗聴の類のやつとかもないと思う。たまにおうちの近く通って悦に入るくらいはしてるかも?」

「はぁー……そうか。じゃあ、そうするか……何もしてこないかもしれないとはいえ、知ってしまうと放置は気持ち悪い……」

「さりげなくフォローいれる芽衣ちゃん。ナイスだね!」

「フォロー入れる芽衣ちゃんのほうが受けがいいと思ってるのです!」

「忖度を隠しもしないのマイナスなのでは……?」

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