→【新旧友人と遊びに出かけた。】→さらに友達がさらりと増えた。あの苦労はいったい。
→さらに友達がさらりと増えた。あの苦労はいったい。
どーもぉー、とやる気がないように挨拶してきた葵君の幼馴染――兼護という男との初対面は、声に乗っているように感じられるけだるいものに反して、目は鋭く思えた。
それは、多分観察で、きっと仲介に葵君がいなければ、こいつとは合わないんだろうなと思わせるには十分なものでもあった。
それでも、現実は仲介に葵君がいて、仲良くしているのだから不思議なものである。向こうも同じように感じただろうに、それでいいのかお前。
『まぁ、いいんじゃない? こういうのもさ。全部が全部、気が合わなきゃダメってこともないさね。機会が訪れてくれたと考えようよ、お互いさ』
『テキトウだなぁ』
『えぇ? それは大雑把な意味でいってる? そんなつもりないんだけどなぁ』
なんて、そんな会話をしたこともあるから、認識に間違いはなかった。
この葵君の幼馴染というやつは、どうにもやる気がない様子に見えるし、容姿も普通なのだが……なんというか、前向きでどことなく憎めないやつみたいなタイプだ。
「ていうかさぁ、そんなにやる気なく見える? 垂れ目気味だからかなぁ? やる気ないつもりないんだけどなぁ」
「あー、それはあるかも。あと、ブレス多めで喋るからなおさらじゃない? それと雰囲気」
「そうかなぁ……そんなつもりないんだけど」
佇まいも喋りもどうにもやる気なさそうでけだるそうに見えるが、本人は溢れていないがやる気がないわけでもないらしい。
実際、最初『合わない』とお互い感じ取れるレベルだったのだが、いったん友達関係を初めて見れば嫌悪感を見せたり拒絶するわけでもなく。そういういったん内側に入るとそのままするする入ってくるのは、葵君とも似ているかもしれない。類が友を呼んでしまったか。
「僕も葵も、方や怖い方ややる気ないって第一印象悪いタイプだからかもねぇ。緩いとかもよく言われるしねぇ。そんなつもりもないんだけど」
「そんなつもりないんだけど、がつもって語尾みたいになってるなそれ」
「そんなつもりないんだけど」
「語尾だけでしゃべるなっ……!」
「こちとら語尾のつもりないんだよなぁ」
どっちも印象悪いというが、その悪さは別方向だと思う。
「わかってきたけど、啓は割と楽しい人だよねぇ。話していると、最初の印象からは想像できないくらいには楽しいや。こういうのも、『合わない』という印象を乗り越えないとわからないよね、なかなかね。若いんだから、チャレンジ精神は大事だよねぇ」
「言ってることがお年寄りじみてるんだよなぁ、なぁ中学生! フレッシュさが足りないんじゃないかい! どうなんだい!」
「ちゅーにだから、こんなんも許されるんじゃない? 知らないけど」
「中二はいつからそんな免罪符みたいな概念に?」
結局、なんだかんだこうして二人で遊びに行ったりもするようになってしまった。遊びに行っても気まずくなくなってしまったというか。俺も類に呼ばれた友だったのだろうか。
葵君がいたはずなのだが、途中で呼び出されたらしく帰ってしまわれた。
『そのまま帰るのもな』『じゃあ遊ぶか』みたいな流れで遊んでいる。
「るい、とも? いやぁ、啓は違うでしょー。なんだかんだ、僕と葵、大祐君もかな、似ているところはあると思うけどさぁ……」
「お? いじめかな?」
大祐が君で、俺がもう呼び捨てなのは仲がいいというより気を使われてない感じだろうし。俺と同じで。
「そこでなんだかちょっとわくわくする感じは葵っぽいけどねぇ。そういうところが合ったのかな? がおー! みたいな? こんぼーとか持ってそうというか?」
「誰が蛮族か。別に喧嘩が好きなわけでもないんだけどね」
「まぁ、だろうねぇ。君って、面倒ごとがクソほど嫌いそうだもん。相手主導だと特にさぁ。そういうところが合わないところで、そういうところが似てないところなんだと思うよ。スパっとしちゃう癖に粘着質なとこもあるしねぇ」
そんな話をしもするようになった。
唐突に二人になっても、別れず遊びもするようにいつのまにかなった。
だからじゃないけど、多分、友達といっていい。でも、芽衣とも大祐とも葵君とも違う。現実での付き合いのあたトモダチ達ともまた違った関係。
最初は合わないと思ったけれど、これはこれで悪くはない。葵君ほど関係がなく、大祐らほどの友情めいたものを感じているわけでもない。でも、知り合いよりは近いし、友達ではあるといえる関係。お互い、尊敬していないところがあるよというのを隠さない、ある意味気を使わないでいい関係でもあるが、それで喧嘩にもならない妙な感じ。多分、これもお互いそう思っていた。多分、お互いそれはそれでという位置に着地していた。
現実はもっと年上とはいえ、こういう関係性をあまり作ってこなかったからか、こういう時はどういっていいのかわからない感情がいつも湧いている。
だから、新鮮味があってわるくなかった。やってみなければわからない、というのはこういうことだろうか。まぁ、普段はそういうのって上手くいかないことのほうが多いんだから率先してやろうとは考えないんだけども。
「はぁん? どういうことよ?」
「わかってて聞いてるでしょー? 都合いいんだから、全く。別に、そういうのも価値観だよなって思っちゃったからいいけどさぁ」
「わかるようなわからんような。とりあえずむかついたから殴るね」
「そういう所だぞぉ」
男四人で集まって話していて、もう何か月か経つのになんとなくやっぱり新規二人は芽衣は合わない感じです、みたいな話にまたなった。芽衣ちゃんったら大人気だな。逆方向に。
「どちらからも嫌われてる芽衣ちゃんかわいそう」
「いや、その、別に、ほら、嫌いってわけじゃねぇんだって……なんつうか、苦手?」
「僕は嫌いかなぁ、多分。今以上嫌いたくないからお話ししない、みたいな所あるしなぁ」
「あぁ、それはなんとなくわかるな」
葵君はともかく、合わないとわかっていても友達になれた俺とかもいるのに、兼護がそこまで拒絶を示すとは思いもしなかった。
何が違うのか。首をひねる。
「不思議そうな顔してるけど、啓と森崎さんは違うよ。啓は『合わなそうだなぁ』、大祐は『友達になれそうかな?』、森崎さんは『うわぁ』だったから」
「うわぁ」
「うわぁ?」
「うっわぁ……」
なんかとてつもなく酷いことを言われている気がするが、なんだか一番否定しなきゃいけない位置にいるだろう俺もなんか納得が走ってしまった。
『うわぁ』か、うん。確かに。
ってなる。なんだろうこの気持ち。
葵君も大祐もなんか『よくわからないというか説明できないけど、あぁ、うん。なんかわかる』みたいな顔してるし。
「……こっちにも、女の子の幼馴染がいてさぁ、だから余計にかも? こういう比べ方って多分、ダメなんだけどねぇ」
「あ、そうなんだ?」
「まぁ、向こうは話してるから興味もってんだが、これねぇんだよな……ちょいと体悪くしちまってるからな」
「それは……なんともだな。興味があろうが、下手に知らないやつが見舞っても変だろうし」
「なんだよねぇ。割となれると失礼なんだけど、人見知りというか、繊細というかメンタルよわよわというかで?」
葵君になれていれば大丈夫そうな気がするけど、とは言わない分別が俺にもある。
「性格上は大祐とか、すぐ仲良くなれそうだがなぁ」
「えぇ? イケメン度が高すぎて呼吸がしんどい、とかの超次元の文句っぽいの後でいわれそーじゃない?」
聞くとさらに愉快そうで、そんな線の細さがイメージできないのだが。
「……ま、紹介できそうだったら、紹介したいねぇ。そうでもしないと、なかなか友達作れない奴だからなぁ……でも異性ばっかりってのもダメなのかなぁ印象的には……あぁ、でも森崎さんはきついかなぁ……」
「わかる。わかるが、ナチュラルに嫌いというかダメだということを前面に押し出してるな……わかるが」
「大祐クン? そんなにわかってないで、君はもうちょっとフォローしてあげてもいいんじゃない?」
「啓がすればいいだろう。役目だろう。しっかりしろ」
「毎度不思議になってくんだけどよ……ダチなんだよな?」
そこだけはすぐに『そうだよ』とどちらも返事ができた。
うん。友達ではあるんだよ。問題も特に起こさないし、むしろ何か起きる前に処理している節さえあるし。見た目は好みだし、話していて楽しくないわけじゃないし……すげぇ合わせてる感たまに感じるけど……なんか腹黒さとかなんかいつの間にかトラウマじみたものが俺の中で勝手に生えてるというか、そんな感じなだけでさ……
「芽衣だって最初引っ込み思案だったんだかんな。お前らの幼馴染だってそうなる可能性あるんだからなぁ! そうなるようにパワーを込めてやる! 安心しろ、少なくともいろいろタフにはなる!」
「呪いをかけるのはやめてよねぇ」
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