開き直れるルート-4

→【まぁ、いいだろう。藪はつつかない。】→中学生になった。

→中学生になった。




 こういうのでいいんだよ。

 というように、問題ごともなくなって、子供時代を謳歌できていると思う。


 後悔の始まりだったいじめ問題と、その後の問題もなんだかんだ解決し――いつの間にか終わってただけだけど。ネグレクト状態だったのも、いつの間にか解決――というには、おどおど両親に冷えっ冷えの芽衣という、芽衣の独壇場状態に見えたというか怖かったけど――してしまったのを目にしたし。

 気を使わなくていいタイプの同性の友人を迎え、その問題もなくなった――どうやってとか一切知らないけど。


 まぁ、いいのだ。

 正直、納得できないこともあるし、気に入らないことだってある。しかし、全部知ろうとすることが間違いなのだ。君子危うきに近寄らずというだろう。それに、知らせないのだって気遣いには違いないのだから。


 この時期には、ぽつぽつと記憶している以上に同年代から多少の先輩後輩あたりの人間が死んでいることに引いたり、一定期間ごとにあることだからと悲しい空気ながらそれを受け入れている住民に異常さを覚えたけれど――触れると火傷するとわかっていて、触れる必要はない。いや、一定期間にあるなら何かしら問題解決に動けよ、とかそういうことを考えないでもなかったが、自分がしないのに他人に押し付けることはできないだろう。


 むしろ――むやみに触れるよりは安パイであるだろう友人たちから知ることをしないで、今更これに触れようとするのはちょっとなんか違うと思うので。


 知らない他者に働きかけるのは怖すぎるともいう。なんか怪しげなセミナーにはまってた知り合いよりもやばいにおいしかしない、というのもある。俺はマインドコントロールとかにも詳しいわけじゃないし、そういうのならどうにかしたいと思ったところでどうしようもない。


 それに、無責任――もとより俺に関わる責任なんてないけど――かもしれないが、『いじめやそれに伴う自殺者の問題』はこれで、少なくとも俺の年代は終わり、という直感が働いていることもある。

 直感だけでなく、それ以後しばらく現実でも何かあったとは聞いたことがないというのもある。


 問題ごとが起こらないなら、もう終わって、渦中にいないのなら。

 率先して関わるのはバカの所業だろう。何かできる能力があると錯覚するほど、俺は才能にあふれていないことくらいは理解している。


 積み立てた分があるから、現実の俺よりできることはいっぱい増えているし、かさまされてはいる。けれど、それでもよく見積もって中の上レベルにいくくらいでしかない。大祐とか芽衣を見ているといやでもわかるというか。


 レア度とかがあるタイプのゲームでいうと、俺がなんか特殊スキルを持っているから戦術が合致すれば使える、それ以外はゴミ、みたいなタイプのRくらいだとすれば、大祐はSSR最高、芽衣もSR高めの上位クラスになるのではないか。芽衣はどうしてそうなったんだろう? お前、俺よりかなり馬鹿で体力ないっていうか運動音痴だったじゃん。とは思うけど、子供の成長は早いということなんだろう。


 そんな両名の近くにいれば、普通なら嫉妬に包まれるなり劣等感にさいなまれるなりするかもしれないが、俺は一人だけ実は年齢も違うし、ゲームという感覚もあるため比較的簡単に開き直ることができている。


 わーい、友達優秀でこっちにも便宜はかってくれるしラクー! 楽しーい! みたいな。


 バカげたことに思うだろうが、こういう開き直りは大事だ。そうできない人間からストレスで潰れていくんだよ。






 目の前で、見た目で怖がられるタイプの目つきの鋭いタイプな少年がへこんでいる。

 親戚であるらしい、最近知り合うことになった人間。


 俺、同年代の親戚とかいたんだなぁ……


 現実では知らないし、こっちでもなんで今更、という疑問はあった。

 しかし、知らなかった理由は単純な話で、今まで絶縁に近い状況だったらしい。その親戚が、というより、母親周りの血筋関係は全部。


 現実でも親戚と会ったことほとんどないから、そういうこと絶縁状態のままだったんだろう。なんか駆け落ちに近いというか、無理やり結婚したみたいなことでごちゃごちゃとしたようだ。ドラマか何かかな?


 そして、新しく知り合ったわけだが――親戚関係、全てが和解したわけではない。

 なんというか、青春の情動というか。


 隣町に住んでいたらしい、現在へこんでいる天竺桂たぶのき あおい君……苗字を現実ゲーム合わせて初めて聞いた……が、なんだか一部の情に熱くなっちゃうタイプだったのか、青春でそうなっているのかはまだ付き合いも浅くて不明だけど、とにかく『反対を押し切って結婚した夫婦だから縁切りされている』ということを知って、それに不満バリバリだったようで……近くにいると知って独断で来ちゃったのだ。


 曰く、『それ以外になんも問題起こしてねぇって話だったし、迷惑だってかけてきてねぇのに一方的に気に入らねぇからって親類切るほうが信じらんねぇ。ダメだって口だけで言われて納得できなかった。そんなら、自分の目で見て決めてぇ』みたいなノリだったらしい。さすがに、その行動自体が突発的過ぎて、俺たちの家もよく知らず着ていろいろ苦労してたどり着いた結果、ある程度頭は冷えていたみたいだけど。


 しかし。

 それがきっかけで、親戚の一つと和解できたっぽいのだから、馬鹿にできたことではない。凄いぞ若い勢い。俺も現実でも一応若者だけど!


 なんだか気が合ったというか、空気があったのか。それとも、向こうが今までいなかった関係を切るまいと気を使っているのか。


 一度きて、話してから割と来るようになっていて。一応、同年代だからかというか――俺は俺で気が合うなら開き直れるし、向こうは向こうで『親類だし、気を使いすぎんのはよくねぇだろ、それでだめならいつまでたってもダメだろ』みたいな思考だったらしく、それがうまいことかみ合った形で仲良くなったのだ。


 前の俺だと無理だったろうな。どっちかっていうとさっぱりした脳みそ筋肉直情系だと合わないだろう。


 見た目もあいまって、というか見た目は完全に不良系悪そうに見えるし、葵君。ずしんと暗かった俺は鬱陶しいと思う――余裕もなかったろうし、あっちはあっちでそんな俺にむかついたか引いたか……いや、結構、内側の人間には気が合わないと知っても迷惑かけたりしなければ切り捨てられないというか気を使うタイプっぽくもあるからな、なんか不思議な関係にはなったかもしれないけど。


 ともかく。

 そんな新しく増えた親類が沈んでいるのを見ていた。

 とはいえ、この光景は知り合ってからはよく見るもので気にもしていないわけだが。


「うー」

「こ、こわくないよぉ?」

「こわい!」


 うちの妹である未希ちゃんに怖がられているだけだ。

 目つきめっちゃ悪いもんな。言葉崩して無理やり笑おうとしているが失敗していてひきつっている表情は不気味だ。


 葵君自体は子供好きっぽい上に身内だから仲良くなりたいらしいのだが、ことごとく失敗している。最初は泣かれていたし、前進はしているはずではある。


「助けてくれ、お兄ちゃん」

「誰がお前の兄だよ。鬼みたいな顔しやがって鬼いちゃん」

「てめぇ! 世の中にはわかっててもいっちゃなんねぇことってのがあんだろが! だからフォローしてください!」

「こわい!」

「ご、ごめんねぇ。こえおっきかったねぇ?」

「弱いのわろける」

「ぶっ……ぶっころすしますぞぉ?」


 現実の今頃には全くなかった関係だが、こういうのも悪くはない。

 あっちでも、もし早めに仲良くなれたりしていたなら、もっと前の俺も立ち直りが早くなったりしたのだろうか?

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