藪先ルート:選択→感情の矛先
→【お兄さんは最後まで踏んだり蹴ったり。】→兄神に苛立った。
→兄神に苛立った。
一連の物語はこれでおしまいだ。それがわかる。
後はだらだら、早回しするように歪んだ呪いが行使される光景が流れていくだけ。
結局のところ、何を見せたかったのだろう。
これを見せて、どう思ってほしかったんだろうか。
それとも、目的なんかなかった?
ともかく――俺は、結局は元凶である兄神という存在に苛立ちを覚えた。
今だ思い出空間? からは解放されていないが、出ていこうと思えばすぐに出ていける状態であることは把握している。
しかし、出ていこうとは思わない。
何せ俺はイラついている。それに、それをぶつけて解決できるタイミングもここだと思う。
大祐、はもう繋がりは薄くなってしまっていると思う。
呪いというものがなくなる、ということは、それだけ繋がりが無くなるという事に等しいだろう。
反して、芽依はどうだろう。
言っていた。
『呪いが濃すぎる』
つまりそれは、それだけ繋がりが深いという事を意味する。
介入もしていたようだ。
呪いを受けながら、その悪影響を受けていなかったという事は――幼馴染神と同じようなことをしたのではないだろうか?
思えば、大祐が言う通りなら、俺を通して薄くするという事をしていたのだ。
俺に黙って。
幼馴染神が自分が消えないために呪いを方々に分散したのとある種同じである。
多分、大祐の母親がやったことも似たような事だと今は思う。
おそらく、この呪いは幼馴染神に似ているとより深くなる。
それはあり方だ。
だが、似ていてつながりが深くなるという事は、同じことができても不思議ではないのだ。
そして、山自体が幼馴染神なのだから、そこにいればわからなくなる。つまり、存在が重なるのではないか。
幼馴染神自体はパスであり、呪いのターゲット事態ではない。だから、同調して同じものと認識させることで一時的に呪いの範囲から逃れることができるのではないか。
そうして逃れることができたなら、その余った分のというか、呪いは別のものに流れていく。そのままにすると元々のターゲットである幼馴染神に流れかねないからだ。
それにしたって、芽依は異常だ。
呪いを受けたものが呪いをそらす方法として山を利用すればできる、まではいい。いや、十分理解できないオカルトではあるのだが、できるっていうんだから仕方ない。呪い自体がアレな存在だし。
だが、濃くなるというのは同調を続けているという事ではないか。
認めてやっている、とも言っていた気がする。
つまり、呪いを通して干渉し、力を奪うようなことをしていた?
ぞっとする。それで、何になろうとしていたんだろう。
言った通り、俺の都合のいい存在としてあろうとしたいた、とかお為ごかしも良い所じゃないか。そんなもの。
だが、今は都合がいい。
きっと、普通の状態ではできないことが今はできる。
気持ち悪いが、俺と芽依、芽依と神々は呪いでリンクしている。それが膨れ上がった――おそらく、近くに寄り過ぎた上に濃くなりすぎて幼馴染神とみなされでもした結果だろう――芽依から漏れ出たものによって今の状況がある。
今なら干渉できる。俺が。
物語が終わり、気の抜けたような状況というか見ることの強制は弱まっている。
芽依の存在を探すのは容易だった。
同じく気が抜けているような状況のそれに話しかけず、パスとして利用する。
自分が黙っていたんだ、俺が黙ってそうしても仕方ない事だろう?
苛立ちをぶつけるために、その力事奪ってやろうと考えた。
潜っていく。
潜って、潜って、潜っていって。
すぐに、大きな塊を見つけることができた。
それは感覚的なものでしかないが、確かに兄神であると思える。
『……』
じぃっと、目も確認できないのにこちらをみていることだけ理解させられるような気色の悪い感覚。
「(結局、結局お前のせいだ)」
喋れない。実際声は出せないが、喋っているように思えばそれは伝わっている気がした。
「(色々あった。それはわかる。けど、そもそもお前が何もしなければ呪いは生まれなかった。誰も苦しまなかったんだ。
八つ当たりの逆恨みで、散々死んだ人の身にもなれよ。神同士でやってろってんだよ気持ちの悪い)」
弟神や幼馴染神、人によって歪められたからなのか。伝わっている様子であるし、無視されているわけでもないと理解できるのに、それに怒りはないようだった。
見下されている、というわけでもない。
なんというか――がっかりしている、だろうか?
それは、明らかにしたの生き物としてみていたはずのものに文句を言われてあらわすものとしては、奇妙だと思う。
「(全部お前が悪いってわけじゃないのかもしれないけど、そんなこと知るか。
八つ当たりし続けたんだ、俺の八つ当たりも当たり前みたいに受けろ)」
しかし、やることは変わらない。やろうとすることは変えない。
結局、こいつがいなければ解決はするのだ。
だけど、すぐさま消してしまえはしない。だから、俺が使ってやろうというのだ。
力だけもっていけば、いなくなったことにはならないだろう。弟神や幼馴染神といった厄介そうなものを開放するような事にもならないはずだと思ったのだ。
奪ったなら、後はいらなければ捨てるなりすればいい。俺は、神と違って力事態に執着などしていないのだから。
芽依を通して、力を引っ張る。
弱まっている意識や、奇襲に近くもある、それに芽依から幼馴染神も利用できるような状態だからできるはず、とは思ったいたが――予想以上に、抵抗という抵抗がない。
まるで、できるならすればいいといわんばかり。
怒りもなく。
焦りもなく。
代わりに、哀れみすらあるような。
『そうか』
すぽん、と綺麗に詰まったものを引き抜くように力を抜いた瞬間。
どこか可哀そうに思うような、安心したような感情が込められた一言が、耳に届いた。
「(あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!)」
芽依の悲鳴。
意識を向けると、体をびくびくと痙攣するように、打ち上げられた魚が命をかけて踊るように、のたうち回っているのがわかる。
なんだ。
どうしたというのだ。
「(うあああああああああ!!!)」
大祐も叫んでいる。
何が起きているというのだ。
そう思っていると、自分の中で奪ったものが膨れ上がってきているのがわかる。
「(お゛)」
一瞬で体重がトン単位で加増でもされれば、もしかしたらこんな気持ちになるかもしれない。
ぼぐん、とでも擬音を付けられるように、一瞬で俺は膨れ上がって――他の二人とは違って、叫ぶ余裕すらなく、それ以上苦しむ余裕すらなく――
ぽん。
と、体が無くなって、力に溶けた。
目を覚ます。
目が覚める。
「(ここは)」
確かに意識が浮上した。
なのに、どうしてか、手足の感覚がない。
「(そんな、これは)」
それどころか、当たり前に行っていた瞼を開ける閉じるという行動すらできない。その存在を感じないのだ。
呼吸すらできない。なのに、苦しくもない。
何もかも、当たり前だったものがない。しかしただただ、よくわからない苦痛が俺に存在していて離れない。
そんな状態だというのに、俺という存在はここにあって、目も開く動作ができないのに、できたとしてもわからない範囲まで把握できる。
手もないのに、足もないのに、動けもしないのに、その範囲ならある程度動かしたり触れる感触を覚えることもできる。
なんだ。
なんだというんだ。
何が起こった?
見て、利用して、奪って。
破裂して――?
破裂したから感覚がない? それなら、破裂したのに意識だけあるのがおかしいだろうが。
頭を抱えることもできず、状況に困惑する。
ふと、そんな中、感覚の中に知っている気配がある事に気付く。
大祐と、芽依?
二人は、二人も、よくわからないが動けないようだった。
ただ、会話はできそうにない。
視線――というとおかしいか、ともかく、ドローン操縦のように視界を動かしてみる。
「(は――)」
多分、俺が体を持っていたなら、そこで呼吸が止まっていたかもしれない。
芽依は、見つからなかった。
いや、最初からいたのだ。
大祐も、見つからなかった。
大祐として、俺が知っている形のものは。
「(山、と、社――)」
ドローンを飛ばすように、視界を上に引き上げる。
人にはできない行動だ。
自分自身の全体図を、己だけで見るという事は。
そこには、俺の意識があるとどうしてか確信できる場所には、ぽつんと、一つだけの社があった。
それは、見たことがある光景で。
でも、それが俺であるはずがないもので。
哀れまれた、理由が分かった。
安心した理由も、わかる気がした。
怒りのまま、感情のまま行動すべきではなかったのだ。
そもそも、関わるべきじゃなかった――
そんな思いももう、手遅れでしかない。
同じく愚かなものが現れるまで、きっとこうして待っているしかないのだろう――餌を巻くように呪いを振りまいて。
『特定地点到達に寄り、自動バックアップ地点に自動ロードします。
引き続きMyLifeをお楽しみください!』
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