→【深くつっこんだ。】→森崎の芽依ちゃんさんって。
→森崎の芽依ちゃんさんって。
そもそもが、と意を決したように大祐は続けた。
「数字の家以外が呪われているのが調べた情報と違う所だ」
数字の家? またなんかゲームみたいな単語出てきたな。
呪われる順番とかがあった、ということなのだろうと考えるとゲーム云々言ってる場合じゃなくえぐい事ではある。
大祐もそういや三宮だったはずだが、それはそもそも父親の苗字ではないのだろうか。
「母親の方に養子に入った形だったのか?」
「いいや、そもそも父の方の何世代か前がそうだったらしい。父はまさか関わるなんて思っていなかったから、これは聞き込みで手に入れた情報だから、そのことを母は知らなかったのかもな。範囲から抜け出した後、この地を飛び出したんだろう。優先度合いが高かったらしい一がつく苗字だったからな」
一、二、三、四……と後につくものは様々だが、数字がつくと。四などは篠宮なども含まれるらしい。
そして、『予備』とされているような家系があったらしいことがわかっているということだ。
「森崎、という名前は見たことがなかったが……社の守りから社守というのはいたらしくてな。そこから防人、に転じて役目を隠すために森崎とした、みたいなことかもしれない」
「それは……考え過ぎじゃないか? 優秀な奴が的にされるってんなら、こう、上限越えちゃったから、みたいなバグもありそうじゃん。呪いってそういうガバガバなところない? 芽があったら手あたり次第パターンに突入してるとか」
「それはそれでありえそうだからなんともいえないが……」
しかし、それにしたって最初から警戒していたそぶりがあったと思うのだ。
気になったから重点を置いて調べたり俺に聞いたりしてきたのだろうし。
「ともかく、呪われているのは確かだ。しかし、森崎さんは救われた。君にだ」
「そういわれると結構凄い事したみたいに聞こえるけど」
でも、それもおかしいよな?
呪いだ。
呪われているというのだ。
たかが、俺が突っ込んだくらいでとけるようなものだろうか、それは。そんな弱弱しいものが大祐にここまで悪影響を及ぼすものだろうか。
「やって、変わった状況のわりには、みたいな?」
「そう、そこに疑問があった。呪われた感応なのか、同じような相手はわかるんだ。
その、森崎さんは……歪だ。俺にはとても、歪に見える。それは最初に見た時から今までずっとだ。だから、怖い」
ふぅ、と一息つく。
お互い、途中で購入しておいたペットボトルから水分を補給した。運動と話で喉が予想異常に乾いていたらしい。とても染み渡る。
「一時的に洗脳のような効果が解けたのは――君が想像以上の衝撃を与えたから、だろうな。もし、ここで中途半端なことをしていればもしかしたら……」
ずきり、と全身が痛んだ。
頭が痛む、ならわかるがまるで叩きつけられた記憶が再現されたみたいに、一瞬全身が痛んだ気がして、顔をしかめる。
そんな経験はないはずなのに、やけにリアルな痛みがこびりつく。
「もしかしたら?」
「……排除されるように動いた可能性が高かったと思う。弱弱しくなっているが、時間がたっているからだろうがそういう流れが最近あっただろう。俺がいる時のクラスメイトの動きじゃなくて、外からの働きかけみたいなことが、だ」
「あぁ――あれって、そういうことだったの? マジ?」
「結構強引な奴もいたはずだぞ?」
「あぁ……いたわー。馬鹿な奴ってそういうことするもんだから、わかりにくいんだよ……」
呪われているとかその儀式の範囲にいるとか関係なく、無理やりとか強引に、とか行動する奴っているからな。頭の悪い不良系グループなら猶更だ。もう少し頭が働くと絡めて使ってきたりするからそれはそれで鬱陶しいんだけど。
しかし、引かれるくらいやったのが良かったとは。
「しかし、今考えると嘘……はついてないな。でも言わないように、探り探りやってたんだな、俺に」
「悪かったと思っている。ごめん」
「いきなり呪いとか言われても困ったろうけどさぁ……あ、割とショックかもしれん」
「森崎さんもだけど、啓も最初意味わからなくて……本当にごめん」
範囲から出ていることも、当人をそこからひっぱりだせたことも、怪しく見えたと。
「俺は、森崎さんは呪われた振りをして、あっち側、儀式側みたいなものがいて、そういうのなんじゃないかと疑ってさえいた。啓は……結局よくわかない理由で最初から効果が薄かったっぽいけど、森崎さんについては……まだ疑っているんだ、俺は」
「それは、どうしてだ? 抜けた、というならクラスメイトと同じなんじゃ?」
「呪われたものには別のバイアスがかかる。負のサイクルめいた思考がそうだ。それが、たった一度でそこまで――いや、違う。そこはいいんだ。そこは聞いていくうちに解決した部分もある。だから言いたくなかったというのもあるんだけど」
気を遣うような視線。かまわないと態度で返す。
「最初は多分……無意識的に利用されていたんだと思う」
「利用とな」
「かなり強めの依存と君は言っていた。俺が引いたのは、ただそれだけを見て感じ取ったからじゃない……彼女は君の近くに寄り、思考を合わせ、引っ張られていくことで呪いを均したんじゃないか、と思っている。君に聞いたところや、周りからの話からして、最初はあまり推測から外れていないはずなんだ」
「ならした? 均した、か?」
「そう。一人で駄目なら二人で。そのもう一人が影響をはじけるんなら言う事はないだろ」
詳しい事は不明だが、言いたいことはなんとなくわかった。
悪く言えば、俺にも呪いが流れるようにした、ということだ。
大祐の母親ほど露骨ではないし、完全にそうしたわけではないのだろうが、確かに俺に押し付けたのだと。
「そう思いついて、参考になったところもある。現状それだけなら逆に分散すればいい、という解決方法になると思った。君には迷惑だろうが」
「なんともいえない」
芽依を警戒したのは、それが予想でしかなく、現状が異常だったからだ。
「なんといえばいいのか……そう色々こねくりまして考えても、森崎さんの呪いは、濃いんだよ。濃くなっている。一度見に行って後悔した、上の方の世代の、もう死に向かっている寸前の人より、ずっと濃いんだ。なのに笑ってる。影響が出ていない。救われて明るくなりました。もう終わりましたという雰囲気だ。クラスメイトの時だって、ターゲットになっていたのは俺だろう? こんなに近くに濃い人間がいたというのに」
死にかけている。そのような言葉を聞いて、背筋が凍る。
それはそうか。それはそうだ。
生贄とされるものが、俺たちの世代だけであるものか。
毎年、というほど強欲じゃなくとも、それだけではすんでないのだろう。そのくらいは予想して叱るべきだった。ちょっと治安が悪いとか、そういうレベルの話じゃなかった。
そうか。
担任などの大人も、事なかれ主義の隠蔽体質だからとか思っていたんだが、それすら違うということになるのか?
大人になるにつれて範囲から出やすい、とはいうが、小さい頃からのほうが影響が出やすい、という事は――学校という存在は、ずっと儀式の場であり続けているということでもあり。
そこに居続けたものが、果たして正常でいられるかといえば。
「ちょっとだけだけど、学校の教師の皆さんに同情したわ」
「話が飛んだな。言いたいことはわかるが。俺も多分同じ感想だ。教師連中は抜けれていない」
教師連中とかいうくくり方をしている時点で、同情はしているが見下してもいるなぁ。
俺も同情は同情で、今更見方はそう簡単に変えられる気はしないのはそうだけど。
「現実逃避したくなったけど、結局芽依は俺が考えている以上に厄があるっていうか、まずい存在であるかもしれない、ってことであってる?」
「俺の想像通りならそうだろう、としか。
感じ取れる他の人間がいないのが痛いが……異常としか思えないぞあれは。あれで、まともに話せているという時点で、毎回話すのは怖いんだ。
逆に沈静化するレベルなんだぞ? 俺の
大祐の母親のように引っ張られる、ではなく、沈静化。
静まっちゃうのか。
芽依の呪いが濃すぎて? 社長が来たから平社員は大人しくみたいなノリなのか。
「儀式から抜けたから生贄扱いされないようになった。君が助けてそうなったなら、本来なら、話に聞いた通りなら、呪いそのものは薄くなるか別のところにいくかしていないとおかしいのに。
濃くなり続けていて、それで生贄として儀式が発動しているわけでもないんだ。意味が分からない。
呪いの側にいった、というとわけがわからないが、そう考えて警戒しても仕方ないだろう? その近くにいる君に逆に影響が薄いことを疑う事も、俺視点で考えるとやばいだろ」
「俺には影響ないっていうのが逆にやばい感あるな!」
笑うしかない。
とにかく呪われている理由がわからなく、開放されているにしては呪いが濃いから怪しいと。そういう話だった。
「ところで、関係ないんだけど、もし俺が芽依を助けず見捨ててたら見下してた?」
「俺が?」
「うん。割と冷たい目で見ることあるだろ、そういうやつ」
「それは――しないだろうな。儀式の範囲でそうさせられているやつを、そんな目では見ない、はずだ。そう見る価値がないからな」
興味本位で聞いてみたが、思った答えではなかった。
「そうだな……逆に、急速に助けなかったことを気に病んでいて落ち込んでいる、とかのほうがその対象になるかもしれない。ちょっとは抜け出しているという証拠だからな。まぁ、後悔できるだけ他の奴よりましだし、それだけなにかあったという証拠になるだろうから直接何かいうことはないだろうが」
あぁ。
なるほど。
記憶の中の現実も、これが本当に起こったことだとしたら。
やはりあれは、被害妄想ではなかった、ということになるのだろう。
目の前で取り繕う余裕もなく落ち込んでいた。
そこまで、ある意味なりふり構わず沈み込んだのは、確かにショックがあったからだ。
全て、繋がることが後悔になったこともきっと。
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