→【マジならどうにもできなくない?】→深くつっこんだ。
→深くつっこんだ。
もしかして。
そう思う所があった。
大祐の性格として、ありうるだろうか。
そう思うのだ。
方法として、自分が助かるために他人を巻き込む。なるほど、ありがちだ。むやみやたらに否定するのは簡単だが、誰しもやっているといえばそうだし、その他人とやらと友達になった人間、どちらをとるかといえば友達をとるのもまたありがちだろう。
これが知り合いや家族が巻き込まれるとなれば別だろうが、さすがにその場合は話そうとはしないだろうし。うん、酷い話ではあるし知られればまた俺も罵られるだろうが知らん、優先度というものがあるだろうと流す程度の友情はあるわけで。
だが、それを許すような性格だろうか。
大祐とは言葉遣いさえ、少し無理して強く話している節がある人間なのだ。
強い感情がないとはいわない。
むしろ、強い感情があるからこそだ。
それを、知らない誰かに向けられるなら、押し付けるという選択肢を仕方なくでもとれるなら。
もっと騙してくるだろう。こんな風ではなく、利用できるように持っていくだろう。
いざ、という時はそうしなければ己だけが危ういわけではないかもしれないという理論で覚悟は決めているつもりかもしれない。
だが、そのいざという時がきて本当にできるのかも疑問な性格。
冷静にしているようで、俺に話すだけで時折震えているような子供が。
これが、自分以外の家族がそうしなければ今すぐ死ぬというのならともかく。
だから疑問に思ったのだ。
そして、だからこそ、強い感情も誤魔化し切れるわけではない。優しいだとか、他者を傷つけたくない性格がイコール負の感情が弱いという事を意味するわけではない。
大祐の中では燻っているのではないか。
それは、隠そうとしても奥底に隠せない程度の熱で。
ぶすぶすと、煙を上げ続けているのではないだろうか。
恨みの熱が。ひっそりと全てを炭にして言っているのではないか。
「母親か。どうやるのかまではわからないけど、他人にできる方法を知っているか思いついているかしているってことは、それもできるってことで――そうするくらいなら、みたいな? 肉親への復讐心を、知られたくなかったか」
「――ばれるか」
端的にいえば、大祐は諦めたようなため息をついた。
言い訳することもないと。すとんと、その目すら表情をなくして。
「心まで醜くなったと、君は俺を笑うだろうか」
「どこをどうしてそう思うんだ?」
「復讐は愚かだとか、やられたことをやり返すのは不毛で意味がないだとか、知ったようなことを皆いうだろ?
当事者じゃない奴は、どいつもこいつもそういう。わからなくもない。それは、綺麗だと困るからだろ? 馬鹿げているけど、そうじゃないってそうおもうなって言いたいわけじゃないんだ俺は」
いや、なんか聞いたら引かれるのが当たり前みたいな顔しているけど、俺はばりばり報復する派なのでそれは杞憂というか。
「いや、その……俺は殴られたら殴り返す派だから、逃亡した母親放置してるってことのほうがひっかかってたから……むしろ妹は一緒じゃないのかというのが気になるくらいで」
「それはそれで引く」
「理不尽な」
和ませようと思ったと取られたか、大祐が笑う。本気ですけど。
しかし、ふっ、と笑えるのは余裕がないとできない。引きつり笑いとか笑うしかないみたいな逆の状況なら切羽詰まっても出るが。
「まぁ、というか、逃げた復讐のつもりかも知らんが、元々なんか流れからして母親のせいっぽいんだよな? じゃあ復讐にも満たないっていうか因果応報というか、な。言ってる通りなら、押し付けられたものを返すってだけの話だろ? やろうとしてることってのは」
「それはそうだが。そうじゃない可能性もあるんだぞ?」
そう。押し付けたという発言などからして、やはり原因は母親にあるように思う。
どうにかして呪いを家族に押し付けて逃げ、回りまわってその子供に返ってきた。
押し付けられたものを返して復讐といわれても困る。むしろどうしろというのだろう。これで復讐は愚かというやつがいるなら。そうじゃなくとも、原因知っててガン逃げするような奴だぞ? 親としてどうなのという話なのでは?
肉親よりは他人に押し付ける? それとも全て我慢する? 犠牲心を出せとでもいうか? そんなのそっちのほうが滅茶苦茶言っていると思うのだ。
元々が理不尽といえばそうだが、だからといって押し付けられた上に我慢しろというのはないだろう。
「でも、実際どうすればいいのかわかってるのか? 社? にいけば解決できるの? 話が嘘とか今更言い出すつもりはないけどさ、怪しくない?」
もう何か呪いはある前提で、社もあって、その社にいけば解決! みたいな空気になってるけどそうはならんでしょ、という気持ちがある。
儀式にはめ込まれている事から起こっているみたいな洗脳効果から抜け出すのがまず難しいのだろうし――どうやら年を取っていくにつれて抜けているようにも思えるが、そうなるころにはもう
とにかく、確かにこの地に関わっているとそもそも辿り着けないという意味で簡単ではない風には思えるけど……だからといって、行くのが難しいからといってたどり着いたから解決するわけではなくないか、という話だ。
そもそも、社があって、訴えられたとして、呪ってる張本人? に頼んで聞いてくれるか怪しい。話のままなら逆切れして全員苦しんで死ね! ってやってるやつだぞ。大祐の母がした方法が何にせよ、結局抜けれてないみたいな話だし。
「あぁ。もう、こればかりはここまでくると理屈じゃない、というか、妄想だと言われても仕方ないしもう理詰めで説明できない事なんだが……本当に、調べるたびに呪われているという実感があるんだ。そして、それが深まるたびにどこから来ているのかという事もわかってしまう。いっそ、狂っているとわかるために、そこになにもないことを知りたいだけかもしれないと思うほど、しっかりとした何かを」
ぐっと、手を握りこむ。
効果があるかどうかは別として何か”ある”という確信だけ受け取る。それはそれで、またいいようのない気持ち悪さがあった。
「ここまできたら俺もついていくぞ。どうせお前んとこの兄ちゃんとか父ちゃんはおいて一人で行くつもりだったろ?」
「あぁ、それはそうだが……おすすめはしない。やめてほいたほうがいい。関わってほしくて、話したんじゃないんだ」
「そうすると気持ち悪いっていうのもあるんだけどさぁ……ここでやめたほうが何か起こる展開じゃん。そういうのありがちじゃん……」
「あぁー……わかる、わかるけど、気が抜けるような事いうなぁ……」
こんなところにいられるか! と関わらない選択したからバッドエンドはありがちなのだ。次のページで犠牲者になるようなことは御免被る。
もう無理やりでもって空気を出したおかげか、じゃあもう仕方ないという調子で一緒に山に。
あまり人が通っていないと思われるはずの山道なのに、どうしてかそれにしては整っている。不気味である。
寒々しささえ覚える。進むたび、そんなわけもないのに生き物の気配がなくなっている気がしていた。
ふと、初めてなのに迷いなく歩いているような大祐が進む道とは違う道が目に入った気がしたが、明らかに獣道っぽい。獣はやはりいることは間違いない。当然といえば当然だが、何か安心してしまう。
「……なぁ」
「なんだ。喋るとばてるぞ」
「お前と一緒にするなよ、お前の方がもやしじゃん」
「誰がもやしか!」
俺は走ってたり鍛えたりほどほどにしてるから体力は多い方なのだ。
むしろこうなって大きくは運動してないだろう大祐が山道はほいほい歩けているのが意外だ。呪いの話からして、ポテンシャルは高いということなのだろうか。それにしては芽依は馬鹿ですっとろかったはずだが。
「それで、どうした」
「あぁ、話せない理由で呪いの話は聞いたけど、結局芽依はなんだったんだろうってちょっと」
「あぁ――」
そういわれて思い出したのか、納得したような顔。
しかし、言葉に詰まった。言いにくいことがありますといったようなものだ。
「彼女は――わからない。わからないから、怖かったんだ。いや、君がいうようなメン……依存がどうこう……というのがないとはいわないけど、そういうことじゃなくて……」
「同じ呪われてる同士って事でもなく?」
「そう。いや呪われているのは感覚から言えば間違いないが、そういうのではなくて……どうして抜けているのかとか、だとしてどうしてこんなに、というかだな」
「こんなに?」
たびたび詰まる理由は、自分の中でまとまっていない風にも見え、俺に言いにくいという空気も醸し出されていた。
一応、友人としての配慮というやつだろうか。
それでも促すと、大祐は一度深くため息をついた。
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