開き直れるルート-3
→【当然、でかけようとは言わない。】→後悔の種をなるべく枯らしていくような毎日。
→後悔の種をなるべく枯らしていくような毎日
大きな後悔は覚えているし印象的であるが、ふとした場面場面で『こうしていればよかった』と思うような後悔というものもある。
それは前者に比べれば軽いといえるものの、後悔という種類の荷物であることには変わりがない。
もちろん、全てなくせるか? と聞かれでもしたらノーとしか言えない。
そんなものは無理だ。
何かをするという事は、何かをしないという事でもある。
ただ、面倒だからとしないことをやめる。
『やっておけばよかった』は減らすことができる。
こうしていればよかった、あれをしていればよかった、というのはチャンスをつかめるのに掴んでない時になりがちだ。
だから、その瞬間面倒で意味がないと思う事でも一応取り組んでおくことで、後悔したとしても重さを減らすことができる。
もちろん、やる気はあったが事情でできなかった等というものもある。こちらに必要なのは納得だろう。
できない場合は仕方ない、そういう納得できる状態までもっていくことが必要だ。
無駄でも、そのためにどう行動したかということになるのだろう。
これも、面倒でもやっておくべきだ。結果できないとしても足掻くだけ足掻いた記憶は後悔した時に支えになってくれる。足掻いた記憶がほとんどないからこそわかる。
「啓くんはどうしてそれであれなのに点数高いの?」
「頭がいいっていってくれてもいいんだよ? 俺より点数が低かった森崎の芽依ちゃん……」
「凄い煽ってくる……!」
「いや、そもそも芽依ちゃんも結構ナチュラルに煽ってるからな。それであれて」
「……ごめんね」
「普通に謝られるとマジっぽくて傷つくやつ」
勉強なんかは力を入れやすい事柄だろう。
ゲームとは言え――というかこれ何にでも実現できるとしたら凄い事だよな。子供だから覚えがいい、とか思っちゃってたけど、現実の俺は大学生なわけで。なのに、現実より明らかに覚えられてる。オカルトかもしれないけど、応用出来たらいい事なのでは……
ゲーム云々は最近考え過ぎると沼だな。
さておいて、勉強は授業中に集中するだけでも大分違う。
後悔している、というやつは大体結構な手を抜いている、抜いていた時期がある奴も多い事だろう。
すでにそれを知って望む集中とは、ただの集中よりも高いといっていいと思う。
「でもあれだよ。解釈違いってやつなんだよ! ぐはは! ちからこそぱわー! みたいなことする人が授業中机に全力の型! みたいなのは誰だってそうだと思うんだよ!」
「必死だなぁ。悔しかったなら君も勉強したまえよ。授業中なんとなく下手な熊? の絵なんてかいてないで」
「もー! 何で見てるの!? そういうのは見てもいわないのがデリカシーでしょ! 苦労するんだからね、なんか、結婚してからとかに……?」
「言いながら自信なくなってるじゃん」
というか改めて考えると、子供のポテンシャルは高くてびっくりする。
逆に変に興味が薄い事は忘れやすかったり、スタミナあるようでがくんとくるというか、テンションでごまかせる何かがあるというか。
色々と大学生で自覚しているあれこれとはずれがあって面白い。
「走るのもなんか得意みたいになった。ずるい。ずるいなー! なんかずるしてるんだ……ずるしてる! 私もしたい! 走りたくない。むしろ浮いていたいんだよ……」
「走るの嫌い過ぎない? 普段ゲームとかじゃずるはダメ! な芽依ちゃんさんはどこにいったんだい?」
「ここだよ!」
「胸張って言う場面じゃないです。多分三国志のここにいるぞ! の人も無言で首ふって否定するレベルで違う」
知識も運動も、小さいころにやっていたほうがいいというのは体感では本当にそうだと思う。
やればやるほどというわけではないが、経験の蓄積とその反映が早いというか、ゲーム的にいえばその後のステータスの伸びに影響しそうというか。土台が作られていくのがわかるといえばいいだろうか。
芽依は普段の外面的には勉強もできそうではあるが、一言無難である。
この年で無難だと後々辛くなるんじゃ? というくらいの数値。
最近は俺の点数を見て焦りか対抗かやろうとして、やる気が続かないから一緒にやろうやぁ……とゆすりに来るようになった。思えば逞しくなったものだ。学校にいる時にびくびくしていた彼女はもういなくなったらしい。というか一緒にいるというか遊びたがるくせにやらなかったから、最近やっとやるようになったともいう。
芽依は今なら多分、同じ状況になったらまず話し合いに持ち込もうとはするだろうし、できないとぐーぱんで解決しようとする気がする。気がするというか八割がたするという確信がある。それがわかる程度に脳筋化著しい。
「うんどーもしてるんですか……」
「何もしてないのにめっちゃ弱ってるやん」
「おいてかないで、おいてかないで」
「引っ張るな。河童か何かか貴様」
「もっと可愛いのがいい。河童ハゲてるもん。私ふさふさだもん」
「我儘か。河童に謝れ。好きで禿げてるんじゃないんですよ!」
「あやまられたからこそ――傷つくことも、あると思う……」
「それはそう」
この前こりないというか、好意の裏返しを操作され気味だった俺にぐーぱんされた嫌がらせ主犯男子がなんかさすがにいたずらとかはせずに、しかしどの面下げてか知らないが好意はもったままなんか普通に喋ろうとか絡もうとしていた時の事を思い出す。
ぶっちゃけくるみちゃんの事を許してはいない、と言い切るように、許して聖女! というタイプではないのだ。多分、くるみちゃんと井戸端するようにもっていったのは、そのほうが便利だからという点がでかいっぽいし。
「お? また彼から熱視線来てるぞ」
「えー。鬱陶しいんだよ……懲りないなぁ……」
「やだ辛辣……悪口一つで泣き出しそうだった君が行方不明」
「啓くん見てたら、そういうの馬鹿らしくなるようになった!」
「お? 最近馬鹿にしてんな? お? やんのか? お?」
だから当然、男子君も許されてはいないわけだ。あの後、何を言わなくても。そも、くるみちゃん等をのぞいて、ちゃんとした謝罪等芽依にしていないわけだから、許すもくそもまずない。
だからというか、相手をまともにするのもメンドクサイと思ったか、芽依ちゃんはスルーしていたわけなのだ。
さすがに同じ穴の狢っぽいのは嫌と思ったかは知らないが、それもできただろうに話すようになった女子の誘導等での攻撃で追い払ったりはしていないし、苗字何だっけのくるみちゃんがこのまたどの面下げてなのか保身なのか何か言おうとするのも止めていた。
言葉にすれば、『どうでもいいけど鬱陶しいからどっかいけ』みたいな感じだろうか。
これについては、これは俺の考えが浅かったというかなんというか。
「あの後、ちゃんときっぱり言葉でもいったのに何でいまだに見てはくるんだろう?」
「まぁ、何かしては来なくなったんだろ?」
「むしろ誰もいないと逃げてくようにはなった!」
「何故にそんな満足気」
主犯君は俺に対しては強く出れない。でれないようにしたしできたと思う。が、それ以外については思考が回っていないというか、割と思ったより馬鹿だったというか。
自分より弱いものと認識しているからだろうか、子供だからという点もあるが、激昂するとすぐ手が出るタイプだったのか。
これは知らない事だった。
怒った主犯君は顔を真っ赤にして――殴る、という行動をしなかったか頭になかったのかはわからない――捕まえるか押そうとでもしたのだろうか、手を伸ばして襲い掛かったのだ。
そこに芽依ちゃん、無言のぐーぱんであった。
ぐーぱんというか、右手は置くだけ……くらいのものだったが、それでも攻撃で会ったのは確かだ。
これぞまさかの反撃だったのだろうか、クラスの静寂再びだった。一瞬飛び出そうとした俺だけ笑えてきて一人で笑いをこらえる羽目になった。
『え? マジ?』という度合いは俺よりあったかもしれない。主犯君もぽかんとしたあと、泣き出した。
芽依ちゃんは俺の真似だったのかダメ押しのもう一撃を加えた後なぜかくるみちゃん等複数に止められる始末。
「男子の中でも居場所がなくなり気味だから目の保養してんじゃない?」
「そうなんだ?」
「そうなんだよ。俺はどうでもいいけど、他の男子だって女子グループに嫌われたくはないみたいな感じみたいよ」
「へー」
「凄い興味無さそうな声上手ですね」
「それほどでもない」
俺の悪影響がもろに出ている気がする今日この頃。暴力にドン引きしていた彼女まではいなくならないで良かった気がする。俺の影響だけとは思いたくないような部分もある。俺の影響が強く出るというのなら運動とか勉強とかもしてくれていい。
後悔の記憶の彼女からは考えられない姿。
弱弱しい姿しか知らない。記憶の中では悲しそうな顔のほうが印象に残っているのだから。反撃する力も元気もなかったから、ああなったのだろうから。
一年たたずの変化。
いい変化なのか、悪い変化なのか――それは今、俺に言えることではないだろう。いい変化であればいいと思うが……
きっと答えはこれから次第だ。
先送りといえるかもしれない。でもそれは、『これから次第』ができるようになったのだということだ。
例えば今怪しい変化をしているように見えても、その事実だけは、良い事だと言い切っていいと思う。
俺にとっても、芽依にとっても。
もっともっと変わっていくのだ。性格も関係も全ての事が。全部できなかったことをしていくのだから。
一応なり助けた身として、そして友人としては、明るい未来であってほしいと思う。これも、お互いにとって。
現実の彼女は、どうにもならないのだから。
一瞬、全てが冷めてしまいそうな気持ちに支配されそうになる。
どこか深い場所に引っ張りこまれそうな気がして、急いでそれを奥底に閉じ込めた。
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