第24話 事後処理中の男子会
私との婚姻はエリカ本人にお断りされてしまったが、ソラリアとエリカの世界で婚期が違うのなら仕方が無い。
でも、エリカをソラリアに繋ぎとめる必要はわかるが、アロールとエリカの婚姻を結ばさせるのは嫌だった。
エリカを騙すような形になってしまったが、なんとか特殊諜報部隊として契約できて安心した。
可能ならエリカにはずっとソラリアにいてほしいが、元いた世界を大事に思っているのも知っている。
そこで定期的に召喚してはどうかという話になり、エリカも賛同してくれたので、いつなら都合が良いかを決めるためにも召喚の検証をした。
なにしろ私も発現したばかりの異能『召喚』なので、どの程度使えるものなのかわからない。
私はアロール、エスト、ムトゥ、ソルと一緒に、何度もエリカを召喚しては解除した(申し訳ないことだが、今回の内情を知ってしまった天使様にも特殊諜報部隊に席を置いてもらうことになった)。
どうやらエリカがこちらにいる間は、エリカの世界の時間は止まっているらしい。
召喚する時に私が「ここに来て欲しい」と意識すればそこに召喚されるが、意識しなければソール神のお力が強い円形の噴水に出現してしまう。
ソルが言うには、初めてエリカが召喚された時は、おそらく私が無意識にだが強く「誰でもいいから助けてほしい!」と願ったからのようだ。
「純粋な願いほど叶えられやすいのですよ」と天使然としたソルに言われると、そういうものかと納得してしまう。
検証の結果、エリカの意識がはっきりしない状態でないと召喚できないこともわかった。
昼間にエリカが意識を失うことはまずないので、召喚は、エリカが睡眠中の朝か夜になり、エリカは平日に働いているということから、喚ぶのは休日早朝がいいだろうとまとまった。疲れて帰宅してからここに来るのも、ここに来た後に仕事に行くのも大変だろう、と。
急ぎでないなら毎週日曜日の早朝で、急ぎなら平日の早朝と決まった。
ソラリアとは時間がずれるので、エリカの世界にある暦もわかる時計というもの持って来てもらった。
しかし何度試しても、こちらでしばらく経つと時計は動きを止めたので、似た物をこちらで開発することにした。
無事に完成すれば、その『暦時計』をエリカがこちらに来たら止めて、戻ったら動かすことにする。そうすれば、こちらにいてもエリカの世界では何曜日の何時かがわかるだろう。
眠っているところを召喚されるエリカが床に落ちないように、アロールの屋敷に用意した召喚部屋には、エリカが横になったまま来ても大丈夫な大きさのソファを置いた。
次回の召喚はこちらで時を計り、エリカの世界の次の日曜日の未明から早朝になるよう約束した。
ひとまずの目処がついたところで検証を終了し、エリカには次回の召喚まで戻ってもらった。
こちらは引き続き、エリカの異能『経地転移』と私の異能『召喚』を登録するべく書類にまとめている。
ソルとエリカの特殊諜報部隊への加入手続きも同時に行う。
教会生活が長かったソルを心配していたが、脱獄してからずっとこの屋敷で過ごしていたおかげか、すっかり馴染んだ様子でにこにこしている。
「これでこれからもエリカさんと一緒にいられますね」
「うむ。なんとか形になったな」
「『召喚』面白いよね。ボクも異能が欲しいよ」
「エスト。お前は以前、俺の『判別』は面倒くさそうって言ってなかったか?」
「ムトゥの仕事は忙し過ぎるからね」
ムトゥは遊撃隊隊長の肩書きを持っているが、異能者がらみでほとんど外回りだ。諜報部隊自体は常から遊撃隊副隊長が仕切っている。ムトゥは異能者を発見するのと、異能者情報を諜報部隊にはもちろん、王家や特殊諜報部隊につなぐ働きをしている。今のムトゥはアロールやエストのように直接的な仕事はしていない。
「おいおい、エストは女ウケが異能じゃないのか?」
「違いますよ、将軍! これはただの実力です!」
「エストの実力、エリカにはきかなかったよねぇ? あの時なんか頭突きされてたし」
「それを言うなら、サンクトス君、お前はどうなのって話だけどね? あれだけ懐かれてて断られるとか」
「ぐっ。あれはエリカの国での婚期なのだから仕方ないだろう?」
「はいはい。じゃあ、なんでエリカと会う時はわざわざサンクトスの姿になるのかな? 俺たちはすぐに戻ったし、あれ以来やってもないんだけど?」
「そ、それは、ラスーノ本来の姿だとエリカは話し方さえ他人行儀になるから、検証の効率が悪かったからで」
エリカの豹変ぶりに私が衝撃を受けているのを知っていて、わざと聞いてくるエストがにくい。
あまりエリカと接点のなかったムトゥが首を傾げた。
「そう考えると、結婚するという幼馴染やエリカは実際のところ何歳なんだろうな?」
「ソラリアでは14歳から婚姻可能ですから、てっきりエリカさんは幼く見える14歳かと思っていたのですが。もしや御使い様の世界では、私たちと年の数え方が違うのかもしれませんね」
「天使様より年上かつ将軍様がアリってことは、あの姿で実は40歳以上ってこと?」
「おいおい。さすがにそれはないだろうよ」
埒もない会話にため息が出る。エリカは今頃なにをしているのだろう。
と思った瞬間、ソファに人影が現れていた。
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