第5話:静養
私は魔女裁判ともいえる争いの後で王国軍と公爵軍に護られて領地に戻りました。
万が一私が殺されるような事があれば、王家も公爵家も面目丸潰れですから。
いえ、父上と母上は家の面目よりも私への愛情で護ってくださっています。
王家も、国王陛下はともかく、オスカル王子は私を愛して王国軍を派遣してくださったのだと心から信じています。
「お嬢様、お茶の用意が整いました、ティールームの方に移動されてください」
領城の戦闘侍女が言葉をかけて来てくれます。
うららかな今の季節ならテラスで庭を見ながらお茶を愉しみたいのですが、魔術で狙撃されてはいけませんから、仕方なく狙撃され難い場所でのお茶になります。
最精鋭の護衛達が護ってくれているのならテラスでも安全なのかもしれませんが、彼らには王都におられる父上と母上の護衛があります。
王都のような多くの人間が集まる場所では、どこから刺客が紛れ込むか分からないので、常に最強の布陣で警備をしなければいけません。
ですが領城ならば、城下町、領都に行かなければ狙われる可能性が格段に低くなりますし、常時発動されている領城の護りがありますから。
私が愚かな行動をしない限りは、普段の警備で十分なのです。
「分かったわ、今日は第四ティールームでお茶をします」
「はい、お嬢様」
私が使うティールームは毎回私が決めて家臣任せにはしません。
時にはティールームではなく応接室や控室を使うようにしています。
それは食事も同じで、毎回食べる場所を変えるようにしているのです。
神経質すぎると言う人がいるかもしれませんが、相手は教会なのです。
信徒の中には、司祭や大司祭に命じられたら、何の疑問も感じずに親や子供さえ殺すような狂信者もいるのですから。
「領民の中から忠誠心のある人間を探すという話はどうなっているの」
私は領地に戻って直ぐに城代家老に命じた事の確認をしてみました。
あまり期待はしていないのですが、できれば新たに有能な人材を発掘したいとおもったのです。
でも譜代の家臣達は乗り気ではないようです。
「恐れながら、武芸にしても学問にしても基礎的な教育を受けていない領民の中から、有能な人材を探すのはとても難しい事でございます」
やはり無理でしたか。
譜代家臣達から見れば、自分達の権利を侵す者を探すのと同じですからね。
ですが、教会と戦うことになるのなら、今の家臣達だけでは心もとないのです。
「それは分かっています。
ですが戦争になるようなら、領民を集めて戦うことになります。
私の護衛ができるとか、一軍を指揮するとか、そう言った事ができるような、突出した能力のある者を探せと言っているわけではありません。
徴兵した領民軍の伍長や什長を務められる者を、今から探し出して訓練して欲しいと言っているのです」
「承りました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます