第3話:決断

「いえ、いえ、愛と平和を説く教会が叛乱を企むなどありえませんよ。

 教会はただ悪魔と情を通じた魔女をこの世から滅ぼしたいだけなのですよ。

 ヴィルヘルム王家が神を信じらておられ、教会と共に悪魔と情を通じる魔女を滅ぼしてくださるのなら、何の問題もない事ではありませんか」


 おれの大司祭、オスカル王子を、いえ、王家まで教会に取り込む気ですか。


「もちろん私も王家も神を信じている。

 王家に国の支配を託してくださったのは神なのだからな」


 悔しいですが、オスカル王子には民を護る責任があります。

 教会と戦争を始めるわけにはいかないのですよね。

 ここは私が手を血で染める覚悟が必要ですね。


「だからこそ、金や権力に目がくらんで神の言葉を偽る者は断じて許さん。

 大司祭、お前とアストリッドが手を組んで神を騙ったのか。

 それとも教会が金に目がくらんで神を騙ったのか、どっちだ!」


 ありがとうございます、オスカル王子。

 民を護る責務を放棄してでも私を護る決断をしてくださったのですね。


「何と畏れ多い事を、神を疑うなど神罰が下りますぞ」


 おのれ大司祭、最後まで自分ではなく神の名を使って殿下を脅すのですね。


「やはり最後まで神の名を騙って自分達の悪事を隠すか。

 ヴィルヘルム王家は神から王権を授かっているのだ。

 神を信じると騙るだけで信徒を偽装できるお前達と同列ではない。

 金と権力に目がくらんで神の名を貶める悪魔の手先め。

 私がこの剣で成敗してくれる。

 お前が本当に神の使徒なら神が私をお止めになるだろう」


 オスカル王子が剣を手に大司祭に迫っていきます。


「ひぃいいいい、殺せ、殺せ、その悪魔の手先を殺せ」


 大司祭が警備をしていた聖堂騎士に殿下を殺すように命じます。

 それを聞いた殿下直属の近衛騎士が剣を抜いて対抗します。

 このままでは、この場で王家と教会の戦争が始まってしまいますね。

 私としては殿下の愛を感じられてうれしいですが、戦争がはじまると何の罪もない民が戦争に巻き込まれてしまいます。

 ここは神を演じて大司祭とアストリッドを火炎魔法で焼き滅ぼしましょう。


「お待ちください、オスカル王子殿下。

 今神から新たな神託が下されました。

 とても重大な神託なので、全てはこれを聞かれてからにしてくださいませ」


 この期に及んでまだ神を騙りますか、アストリッド。

 貴女らしい最後の最後まで他人を利用しようとする醜いやり口ですね。

 ですが、もうここまで来ては誤魔化しようがないですよ。

 今までやってきた事の責任を自分の命で償う時が来たのです。

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