三つ目の話 図書室と性癖
十二月某日。
「っくち!……しつないでもさむいな」
「冬だからねー」
図書室に座る中学生と、その膝に座る子ども。
「ハナオ、きょうはなにをするのだ?」
「そうだねー。今日は他の図書部の友達もいないし、どうしよう?」
図書部。ハナオの所属する部活動。内容は、図書室で色々やること。
「われとしては、じしょをよみたい」
「そうだねー?すごろくでもしようかな!」
「きけよ」
「えー!辞書なんか読んでどうするのさ?」
「おまえがくせいだろ!」
「キリノちゃーん?あたしは勉強しなくてもいいのですよー?」
「……バカだからか?」
キリノがハナオの顔を見上げると、ハナオもキリノの顔を覗きこんだ。
「えへへー!馬鹿だから!」
「……われもハナオのがっこうに、へんにゅうするべきだな」
「それだったら!高校はワイアール学園にするから、いっしょに受験しようよ!」
「われは8さいだぞ?うけることもむりだろう」
「キリノちゃん、頭いいからイケるって!」
「ハナオは8さいと、どうきゅうせいでいいのか?」
「構わないよ!一緒にご飯食べれるし!」
「いいのか……」
拳を握るハナオを、蔑むような目で見るキリノ。
「キリノちゃん!いい目をしてるね!」
「あいかわらずだな……」
「え?好きな人に引かれるって興奮しない?」
「わからん(即答)」
「嘘だ!(即答)」
「じゃあ、わかる」
「嘘だ!(即答)」
「なんとこたえればよいのだ!」
キリノが頬を膨らませる。
「答え?そんなの無いよ?」
「……ハナオはほんとうに、おちょくることがすきだな」
「うーん。そうゆうわけじゃないんだけど」
「じっさい、そうじゃないか」
「えっとねー、言っちゃっていいかなコレ?」
「なんだ、もったいぶって」
「……コレするとキリノちゃん嬉しそうだから!」
「…………は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするキリノ。
「おいおい、そんなことはないだろう」
「えー?さっきも体温上がってたよー?」
「そ、そんなことはないだろう」
「ポカポカカイロ♪」
「やめろー!われにそんなシュミはない!」
「口ではそう言っても、体は正直だぞー?」
「このぉ!はなせぇ!」
ハナオの膝の上でもがくキリノ。腹部をホールドされており、身動きが取れない。
「ひきょうだぞ!」
「ここに乗ったのはキリノちゃんだよー?」
「それはそうだが……むぅ……」
「かわいいー!」
「……やめろくるしい」
キリノがハナオの腕を、軽く叩く。
「ゴメンゴメン!しっかし、やっぱり気付いてなかったのかー」
「きづいたところで、みとめないがな」
「認めちゃおうよ!性癖さらけ出そうよ!」
「……ハナオが、してほしいというのなら、かんがえんでもない」
「やってやって!堂々と宣言しちゃおうよ!誰もいないし!」
「そ、そうか……」
言ったものの、食い気味なハナオの態度に、キリノは躊躇してしまう。
「ほーら?早く早く!」
「んむ、い、いうぞ?」
「オッケーカモン!」
「わ、われは……ハナオに……からかわれることが、すきだ……」
「よく言えましたー♡」
赤面するキリノの頭を、ハナオが撫で回す。
「なんなんだ、このちゃばんは……」
「満足!」
「そ、そうか……」
「てことですごろくやろうよ!」
「じしょは?」
「すごろくやろうよ!」
「……やれやれ、きょひけんはどこへやら」
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