一つ目の話 雨と水鉄砲

「やっほーキリノちゃん!いる?」

 六月某日。雨。黄色い傘をさし、同色のレインコートを着た、ロングツインテールの中学生。

「だれだ……。ああ、ハナオか。みてのとおりだ」

 芝地から、のそりと顔を出すショートボブの小学生。

「きょうはあめだぞ」

「雨だから来たんだよ!暗くてつまらないの」

 泥で汚れたキリノに、傘をかざすハナオ。

「なんだ、われとおなじではないか」

「だと思った!遊ぼうよ!」

「そうだな。……とりあえず、どろをおとさせてくれ」

「じゃあ、傘いらないか」

 二人で雨を浴びる。

「ハナオ。あっちのほうに、こどもがおいていったものがある。とってきてくれ」

「りょーかい!ちょっと待っててね!」

 軽く手を振り、キリノが示した方へ走っていくハナオ。長靴に泥が跳ねる。

「……やはりわれも、ついていくべきだったか?」

 取り残されて、キリノは急に不安になった。

「──取ってきたよー!この水鉄砲?」

 ハナオが水鉄砲を抱えて帰ってきた。キリノの顔に笑顔が咲く。

「それだそれだ。けんじゅうがたのほうをくれ」

「これかな?どうぞ!キリノちゃん!あたしは……なんて言うんだろ?この形?」

 ピストルタイプの水鉄砲を、屈んで手渡しするハナオ。そして、ふとした疑問を口にした。

「しゅぽしゅぽできるやつか。……はて、かんがえたこともなかったな」

「ポンプ式っていうのは分かるんだけど、形を表してないからなぁ?」

「しんぷるに、『すたんだーと』とかじゃないか?」

「なんか違う感が……」

「たしかに……」

 雨の中、傘もささずに話し合うハナオとキリノ。

「『アサルトライフル型』とか?」

「あさ……それは、そんなにまるくないだろ」

「だよねー」

「うーむ……。すぷら」

「キリノちゃんダメ!なんかそれ以上言っちゃダメだと思う!」

「そ、そうか」

 話している間にも、雨は強くなっていく。

「『ウォーターガン型』とか?」

「ただのみずでっぽうではないか。すべてふくまれるぞ」

「そーだよなー?他に……」

「『ちゃーじ』など、どうだろう」

「形じゃないよー?」

 あまり深く考えず、思い付いたことを口にしていく。

「なんかもう、これでいいんじゃないかってヤツなら思い付いたよ!」

「きぐうだな。われも、おもいついたものがある。」

「せーので言ってみる!?」

「やってみるか」

 薄暗い草原で、目を合わせる。

「じゃあいくよ!せーの!」


「「しゅぽしゅぽするやつ」!」


「……『いしんでんしん』というやつだな」

「『相思相愛』でしょ♪」

「……ちがうけど、ひていできない」

「んふふー♡キリノちゃんかーわいー♡」

 少し赤面するキリノの頬を、ツンツンとつつくハナオ。

「ん。3せんちほど、したのほうがもっとやわらかいぞ」

「え?……ホントだー!気持ちいい!」

「それよりも、これであそぼうではないか」

「そうだった!撃ち合おう!」

「ふふふ、われはつよいぞ!」




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