21話も続くとマンネリになるかもしれない
亜未田久志
第21話
暗い路地裏、湿っぽい空気が鼻につく。室外機の群れが邪魔だった。ゴミが散乱し、酔っ払いが倒れている。非常事態に役に立たなさそうな非常階段が降りて来ており。それもまた邪魔だった。
「ったく、なんでこんなところに呼び出しやがった」
煙草を吸いながら、身体に入れ墨を入れたタンクトップにデニムの男は苛々と呟く。
「まあそう怒るな相棒」
そう言ったのは、スーツ姿のメガネをかけた男。如何にもインテリと言った感じ、ガタイの良いタンクトップとは対照的だ。
「俺達の任務は此処に来るターゲットを殺す事、それだけだいいな?」
「チッ、わかったよ」
その時だった。
ガタンッ! という音と共に室外機が落ちた。
「なんだ!?」
「敵能力者の仕業だ、恐らくサイコキネシス」
メガネの男が冷静に分析した。
「へっ! なら、念動力の力比べといこうや!」
入れ墨の男が笑う。
暴れ回る室外機、巻き込まれる酔っ払いの死体。
「ん?」
そこで違和感に気づく。
「今の、血噴いてなかったか?」
「血だと? マズい伏せろ!」
メガネの男が咄嗟に伏せる。入れ墨の男は間に合わない。
「なんだなん/だ」
入れ墨の男は血飛沫で出来たウォーターカッターでその身を切り裂かれていた。
「相当な、使い手らしいな……おい、降参だ。もう出てきたらどうだ?」
そこに現れたのは白髪に白い雨合羽を来た少年。
「ホワイト……お前だったのか、今回のターゲットは」
ホワイトと呼ばれた少年はため息を吐く。
「アンタ等で21回目、もう飽きて来たよ、この小説にも、すっと同じ展開なんだもの」
「この小説? なにを言っている?」
ホワイトは何度も溜め息を吐く。
「だからさ、俺の能力はサイコキネシスなんかじゃなくて〈
「なんだと、そんなの勝ち用が無いじゃないか!」
「そんなの作者に言ってよ。こうやって無敵の超能力で次から次へと湧いて出てくる殺し屋を退治するのがこの小説の面白いとこだと作者は信じてるんだから」
メガネは冷や汗をかく。
「作者? そんな神じみた存在がいるとでも?」
「いるよ、でもダサいよね〈次元突破〉とかさ。もっと他に無かったのかね」
「お前ならソイツにあらがえるんじゃないか?」
「残念、それが出来たら1話の時点で殺してる」
「何故出来ない」
「アイツのが次元が上だからさ、そういう風に設定された。そういうとこだけ用意周到だよね。小説の中では好き勝手暴れさせてる癖にさ」
「お前は何のために戦う」
懐から拳銃を取り出すメガネの男。
ホワイトが笑う。
「正当防衛?」
何の予兆もなく、拳銃がねじ切られる。
「……殺される前に聞きたい事がある。死にたいと思った事は?」
「……考えた事もなかったな。多分、設定されてない」
「記念すべき21回目だ。記念に死んでみたらどうだ?」
ナイフを取り出すメガネの男。
ホワイトは首を傾げながら。
「いいかもね」
と言って頸動脈を斬られた。
ああ、また死にやがったよコイツ。
これで何度目だよ。
これは殺し屋退治ものなの! 殺され屋ものじゃないの!
ほら生き返れ!
そこにあるのは頸動脈を斬られたメガネの男の死体。
「あーあ、またダメだったみたい。という訳でみんな22話に乞うご期待!」
21話も続くとマンネリになるかもしれない 亜未田久志 @abky-6102
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます