第17話 魔神憤怒~DEMONDEUS OF WRATH~

1.


自称“超絶世界最高大天才科学者”であるプロフェッサー・トミィの自宅。

その地下はトミィの秘密最高研究所でそこでは毎日プロフェッサーの名に

恥じない世界平和の為に多種多様な発明を飽きもせず、毎日汗水流しながら

奮闘している正義の科学者たる人間。

そんな日夜、悪を倒す為に自宅の秘密地下研究所に籠っていたプロフェッサーは

休憩も兼ねて地上の自宅のリビングへとその姿を現す。


トミィ「ふぅ、ようやっと完成まであと一歩までこれたザマス。やはり小生の頭脳は天才と呼ばれるに相応しいのザマスな。これでどんな悪党が現れようとも“アレ”と

アイアンジャスティスがあれば敵なしザマス!!無論、我が好敵手デモンデウスが

相手であろうとも!!!!ヌハハハハハハハハハッハアハ・・・ブヘェ!!ゴホゴホ!!」


高笑いが過ぎて1人むせるプロフェッサーはキッチンへと赴き、冷蔵庫から飲み物を飲んで落ち着きを取り戻す。


トミィ「いかんいかん。ついついテンションが高まり過ぎてむせ返ってしまったザマス・・・天才がこのようなことで死ぬようなことがあればまさしく不幸にして悲劇ザマス!!人類全体の損失にして世界の危機に陥りかねない大事件になるところザマス・・・!!」

オーヴァ「フンガー・・・」


高らかにのたまうプロフェッサーを余所にオーヴァは呆れ気味のため息を付きながら

洗濯物を畳んで片づけていく。

そんな1人芝居をしていたプロフェッサー・トミィではあったがいつもならすぐ来るであろうツッコミが来ないことに気付き、アーミィを探すべく周囲を見る。


トミィ「そういえばアーミィはどうしたのでザマスか?もしかして朝から飛び出したっきりでまだ帰ってきていないのでザマス?」

オーヴァ「フンガー」


うんうん、と頷くオーヴァ。

それを聞いたプロフェッサーはとても表現できない様な身悶え的に身体をねじる。


トミィ「なんとぉぉぉぉぉぉ、つまり小生はアーミィがそのまま出掛けてまだ帰っていないのに研究と開発に没頭していたということなのザマスかぁ!?なんという失態!!帰ってきたら小生の不徳の至らなさに猛反省会を開催しなければ!!!謝罪も込みで!!」


そんな1人で大暴れしている矢先だった。

凄まじい轟音が部屋をいや、家屋全体を震えさせる。


オーヴァ「フンガー!?」

トミィ「な、何事か!?敵襲か、それとも災害か!?天変地異級の怪獣の出現ザマスか!?ええい、なればアイアンジャスティスで迎え撃たなければ!!いやその前に人命救助などの用意もしなければならないか!?とその前に情報収集の為にもスイッチ、オンっとな!!」


テレビのリモコンに手を掛け、電源ボタンをポチっと押す。


トミィ「ええい、こうはしておれん!善は急げ!!の精神!!!餅は桶屋!!!!オーヴァよ、大至急、アイアンジャスティス28GO【ワタシよ、世界の為に愛をむせび泣け!そして、永遠に・・・】発進準備ザマスーーーーー!!!」

オーヴァ「フンガー!!」

トミィ「アーミィの居場所は小生が昼寝の合間に開発した【迷子さん、いらっしゃーい!子羊は教会へと訪れる】でサーチ可能ザマス!!」


さあ、行くザマスよと動くトミィの後に続くオーヴァ。

2人が向かった先は寝室のクローゼットでオーヴァとギュウギュウに詰め込んだトミィはスイッチを押すとそのままガクンとエレベーターとして機能してそのままアイアンジャスティスのある格納庫へ向かっていった。

地下格納庫に堂々と鎮座していた巨大ロボは主の出撃に反応する様に一つ目のモノアイが雄々しく光る。


トミィ「ゲートオープン!!進路クリア!!!!アイアンジャスティス、発進ッ!!!!!」


トミィの怒号と共にポージングを決めながら天井部分が開いたカタパルトからアイアンジャスティスは激しく爆炎を吐きながら発進するのであった。


2.


一方、渦中にあるデモンデウスはその様子を一変させていた。

先ほどまでの荒々しくも勇ましい印象を抱かせていたが今はその荒々しさが激しくそしてどこか禍々しい印象へと変わっている。


デモンデウス『グゥオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!』


凄まじい咆哮を上げるデモンデウス。

咆哮の姿はまるで獣の様な悪魔の様な観る人によっては印象が変わるとも云えるがどちらにしても先ほどまでのデモンデウスとはまるで異なることだけは確かだ。


ハザード『ブハァ!!吼えた所で勝てる訳じゃないだろうがよぉ!!やれぇ機怪化獣共ぉぉぉぉぉお!!!』


号令に応じる様にどこからともなく、現れる機怪化獣の軍団。

有象無象の量産型とも取れる意匠の機械仕掛けの怪物たちは唸りを上げて上位種で

あるハザードの命令に従う様にデモンデウスへと襲い掛かっていく。

それに対して臆することもないデモンデウスは大錨を異空間から取り出す。


デモンデウス『デモンズゥゥゥゥゥゥゥゥハァァァァケェェェェェンッッッ!!!』


しかし、大錨は一つだけではなかった。

無数の異空間から鎖の付いた無数の錨がまるで獲物を刈り取る様に飛び出し、機怪化獣の大群へと襲い掛かっていく。

鋭利な刃を兼ねた錨の先端は轟音と共に有象無象の獣たちをいとも簡単に切り裂く。


ハザード『ンナァ!?』

ナイトメア『・・・・・・・・ッ!!』


機怪化獣群を切り裂いた無数の刃金の錨は唸り声を上げるかの様に凄まじい轟音と

爆速が2体の機怪化神へと迫る。


ハザード『チィ!!』


舌打ちと同時に片腕の巨大チェーンソーで錨を蹴散らすバッドハザード。

ペイルナイトメアもまた異形の大剣で無言のまま錨を切り払っていく。

弾かれた錨は無造作に打ち上げられた後、近場のビルへと突き刺さる。

突き刺さったビルは破片とガレキと化しながら崩れていく。


アキラ「キャアアアアアアアアア!?」

アーミィ「捕まるメカ!!」


ビルの近くにいったアキラはアーミィのお陰でガレキの下敷きになるのは危うく避けれた。


アキラ「ありがとう、アーミィちゃん」

アーミィ「お安い御用メカよ。それはともかく・・・ダーリン、何をやってるメカかぁー!!」


アーミィは抗議の声を上げるがデモンデウスには届いておらず、デモンズハーケンを構えて機怪化獣を蹴散らしながら機怪化神2機へと突っ込んでいく。


アーミィ「無視メカか!!」

アキラ「――――まるで私たちのことを見ていない、いや、見えていないの?」


先ほどの咆哮からゴウの――――デモンデウスの様子が一変しているのはアキラでもわかっていた。

それは外見のことではない。

根本的なデモンデウスとしての“在り方”に変化が生じていることについてだ。

具体的なことを説明するのはアキラも言葉を有しておらず、どう口にすればいいのかわからない。

だけども、心の底から断言と確信はできた。


アキラ(ゴウさんは――――デモンデウスは今、変わりかけている・・・)


理不尽なことに対する義憤を有した正しき怒りを持って邪悪を滅する刃金の魔神からただただその怒りという感情によって全てを破壊尽すだけの破滅を招く破壊衝動の塊とも云える存在へと化そうとしていることをアキラは感じ取っていた。


3.


アキラ「止めなきゃ・・・止めないとゴウさんが――――デモンデウスが・・・」


だけどもどうすれば?

デモンデウスはハザードとナイトメア相手に怒りの衝動に駆られた様に暴れ回っている。

そんな中、生身の何の力も持たないアキラが突っ込むの自殺行為でしかない。

アーミィの手を借りれば近付くことは出来たとしてもそれ以上はどうにもできないのは同じ。


アキラ「せめてケンさんと連絡が取れれば――――」


スマホ鳴らしてみたがやはりデモンデウスの中にいるケンとは繋がらない。

既に八方塞がりと云え、今のアキラではもはや打つ手がなかった。

自分の無力さに苛立ちと失望と絶望に苛まれる様な感覚に襲われそうだ。

そんな時だ。

ピーピーとアキラの近くで音が鳴った。


アキラ「?」


キョロキョロと周囲を見渡す。

自分のスマホでなければ周りに鳴りそうものがどこかにある。

そう思って周囲を探していたら、アーミィに行き着いた。

音は彼女から鳴り響いていた。


アキラ「アーミィちゃん、その音―――――」

アーミィ「これはキョージュからのエマージェンシーコールでメカ。緊急性のとても高い大事件への対応の為の招集用連絡メカよ」


あっさりと説明するアーミィ。

しかし、彼女はそのコールを無視している様だったらしく、全く意にも介していない。


アキラ「あの―――出なくていいの?」

アーミィ「いいメカ。出た所でただやかましくてうるさいキョージュのマシンガントークを聞くだけメカ。それにアーミィには

発信機が備わっているからその信号を辿れば別に通信に出なくても大丈夫問題ナッシングメカよ」


シレっと言い切るアーミィにアキラは困惑の表情を浮かべていた。

とはいえ、このままでは近所迷惑騒音になると判断したのかアーミィは仕方なく

通信をオンにする。

アーミィ内蔵のスピーカーから物凄い大音量の声が流れてきた。


トミィ『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!ようやく繋がったザマスか!!!!アーミィよ、小生を心配させるなと

前々から言ってたでザマスよ!?コールは最低でも10回までには出るのがマナーでリテラシーだとお母さん教えたザマスですよ!!!』


アキラ「――――――うるさい」

アーミィ「だあああああもおおおおおおおウルセェェェェェェメカァァァァァァァ!!!!!」


マシンガントークでまくし立てるプロフェッサー・トミィを一蹴する様に叫ぶアーミィ。

横にいたアキラも耳を塞ぐほどの高音。

間を置かずにアーミィはプロフェッサーにさっさと要件を言う様に急かすべく声を

通信機の向こうへ発する。


アーミィ「それでなにメカ?こっちは色々取り込んでいるメカだから来るなら早く来るメカ!!」

トミィ「おおう、肝心なことを忘れていたザマス!今、現在そちらに急行中ザry・・・ガガガ、ガガ・・・ピィィィィィィィ!!」


プロフェッサーの言葉を遮る様に通信が途切れ、ノイズがスピーカーからあふれ出す。

なんなの、と再び耳をふさぐアキラは何かに気付いて空に顔を向ける。


アキラ「何かが――――来る?」


すると同時に空に異変が起きる。

眩い光が空から降り注ぎ、辺り一面を激しく恐れを抱かせる様に照らし出す。

そして天空より“ソレ”が降臨した。


アキラ「アレは・・・!!」


アキラは眩い光を遮りながら天空に現れた白い機体を見やる。

彼女は知っていた。

“アレ”はレイアムの変化した白い機体だと。


4.


周囲はただ、制止していた。

唐突に現れた白い機体は【ゲベート】の面々からすればイレギュラーな事態だと

言っても過言ではない。

自己の意思を持たない機怪化獣は元より、その場にいた2体の機怪化神ですら、

突然の出現に動きを忘れてしまっているのが現状だ。

デモンデウスだけはすぐにでも襲い掛かろうとしている衝動を少ない理性で押さえ

付けようとしている様に全身を震わして制動を掛けている。


ナイトメア『―――何故、こちらへ?デモンデウスの対処は我々に任せていたはず』

レイアム『少し気が変わってね、悪いがここからはボクに任せてもらうよ』

ハザード『おいおい、そりゃあないですゼ~?』


唐突なレイアムの言葉に不満を漏らすハザード。

しかし、レイアムの冷徹とも取れる視線を向けられ『うっ』と呻きたじろぐ。

ナイトメアもレイアムから発する威圧感には何も出来なかった。

レイアムはそんな2人を一瞥し、デモンデウスの方へと振り向く。

黒き魔神は憎悪が混ざった怒りの感情を白い機神へと向けていた。


デモンデウス『レイアァァァァァァァァム!!』


憎悪を纏った一撃が白い機神へと入った。

――――――かに思えたが・・・・・・

魔神の一撃はギリギリの所で白い機神に入っておらず、その小さい隙間は

何も見えない様な力場によって遮られているかの様だった。


デモンデウス『グッ・・・!!』

レイアム『無駄だよ、今のキミではね―――――』


そう言うと同時にデモンデウスは凄まじい勢いで吹き飛ばされる。

激突したビル群は次々とガレキと化し、デモンデウスは呻きながらそこから動けなくなった。


デモンデウス『グッ・・・・・・ガッ・・・・・・!!―――――』

レイアム『残念だよ――――キミを“また”殺さなければならないなんてね・・・』


そう言うと白い機神は己の手を伸ばす。

同時に機神の手のひらに光が集束していく。


ハザード『や、やべぇ。おいナイトメア、ズラかるぞ!!』


そう言うとその場から撤退を開始するハザード。

ナイトメアもまた黙したまま、その後を追う様にその場から姿を消す。


アキラ「ダメェェェェェェェェ!!!!!!」


危険な状況だと察したアキラは精一杯の抵抗の叫びをあげるがそれが無意味なのは

彼女が一番よくわかっている。


レイアム『―――――――絶対零度の極致へ誘おう』


静かにされども冷徹なまでに言葉を告げる白き機神。


レイアム『アブソリュート・ゼロ・プレッシャー!』


白い機神の手のひらから放たれた小さな光は瞬時にデモンデウスの近くへと姿を

現すと同時に凄まじい速さ黒く反転する。

そしてデモンデウスら周囲の空間を呑み込む様に黒い球体が大きく膨張した後、白い光が全てを支配した。

アキラはその後の出来事を覚えてはいなかった。

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