幕間 閑話休題~the break time~
「フ~ンガフンガ、フンガッガ♪フーンガ、フンガ、フンガッガ♪」
日が昇り始めた明朝。
システムキッチンに立つ大柄の人影は鼻歌まじりにフライパンを動かしている。
その人影はオーヴァというロボットでその容姿はどこかひと昔前のロボット味を
感じさせるといった風貌だ。
「フンガー」としか喋れないがその言葉には彼の言いたいことが要約・濃縮されて
おり多くの人はその意味合いを理解している。
これに関しては製作者曰く「企業秘密」とのことらしい。
そんな彼が今やっているのは製作者であり主でもある天才科学者への食事を作っている最中だった。
食事の内容はベーコンエッグに目玉焼き(両面焼き=主人の好物)にコーヒーという割とテンプレな内容だった。
これに関しては主曰く「テンプレを侮る者はテンプレに土下座してドロップキックかまされるべき重罪ザマス!!!!」だそうな
「フンガー・・・・・」
本当かな?、と独りごちになりながら朝食の準備を済ませていく。
とそこへ話題の主人が朝からハイテンションな様相でリビングへとその姿を現した。
「グッモーニン、エブリバディー!!皆々様おはようございます!ご近所様から宇宙の彼方の来訪者にまで御用とあらば即参上!遠からん者は音にも聴けば近くで寄って見て笑えばいいのです!!愛と勇気と友情と希望の正義の使者。ごぞんじ平和を望む
マッドサイエンティスト、プロフェッサー・トミィ~プロフェッサー・トミィでございます~!!ドクターと呼んでも構いませんが教授と呼んでくれた方が小生とても嬉しくワンダフルゥウウウウウなのザマス!!!」
とても長々と登場用のセリフを垂れ流し彼なりにカッコイイと思われるポージングを1人で行っていた。
そしてそれを後ろにいった少女におもっいきり蹴っ飛ばされるのであった。
「ウボアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
断末魔を上げながら綺麗に転がりながらフローリングの床を滑走するプロフェッサー。
蹴った少女もとい女の子の姿をしたアンドロイド―――アーミィはフンスと鼻息を鳴らす。
「キョージュ、はっきり言って邪魔メカ。サッサと席に着くメカよ。せっかくオーヴァが朝ごはん作ったというのに冷めちゃうメカ」
「うう、オ・ノーレェアーミィ!!それが創造主である小生への仕打ちザマスか!?愛の鞭でも限度があるザマスよ!!虐待というのは親でも子でもやっちゃダメなのザマスなの!?そんな子にプラグラムした記憶は・・・多分毛頭ないのザマス!!!」
「うっせーメカ。虐待でも愛の鞭でもないメカ。ただ単純に邪魔だっただけメカ。デカデカとドアの前でポージングなんかするんじゃねぇメカ」
「ンマ!?ということは小生はその辺のゴミ箱とか空き段ボール箱の様に雑な扱いをされたということザマスか!?人権と言うのはないのザマス!?そして邪魔をしてしまい、ごめんなさい!!!!」
「――――フンガー・・・」
やれやれと言った様子で吹っ飛ばされるプロフェッサーを余所にオーヴァは新聞を取りに外へと向かっていった。
その後、朝刊を取りに戻っているとボロボロの状態でありながらも慎ましく朝食をとっている主人と同じくテーブルに頬杖を突きながら椅子に腰かけているアーミィの姿があった。
その様子に満足気な様子を見ながらオーヴァもまた席に着くのであった。
「ウーム、やはりオーヴァの作る料理は素晴らしい!日々精進を感じて小生、感激の感想をついつい零してしまうでザマス」
「フンガ~・・・!!」
「フフフ、そう謙遜するでないぞオーヴァ君。貴兄の料理の腕の成長っぷりはそんなプログラミングをしていない小生をして絶賛に値するもの。あ、アーミィ、コーヒーお代わりプリーズ。であるからしてもしオーヴァが料理店を開業すればミシェランから星3つは確定事項!」
延々と続くプロフェッサーの賛辞の言葉にオーヴァは当初は嬉しかったが今では若干引き気味になりつつあった。
そこへアーミィがコーヒーのお代わりを持ってきてプロフェッサーの手前に置く。
「キョージュ、コーヒーお代わりメカ」
「おお、すまないなアーミィよ。そういう健気な姿勢を続けてくれれば小生としては嬉しいかぎ・・・グボァ!!?」
感謝の言葉を言いながらコーヒーを飲んだプロフェッサーが急にギャグの様に噴き出した。
「フンガー!?」
「ゴホッエホッウェゲゴ・・・あ、アーミィ・・・貴様、何を淹れたザマスかぁぁぁぁぁぁ!!!」
「刺激を欲しいといつも言ってるメカだからコーヒーにショーユをブレンドしてみたメカよ」
「確かに香ばしい風味の中にしょっ辛さという刺激があったザマスが・・・ゴホゲホ・・・!!」
ひと悶着あったものの朝食を終えた一同はひと時のくつろぎをしていた。
「さてはて。騒がしい朝とは相成ったが小生は研究の続きをやってくるザマス」
「フンガー?」
「うむ。今の所はようやく“形”となりつつあるザマスがまだまだ完成にはもう一苦労ザマスな。デモンデウスらが今後苦戦するであろうことは火を見るよりも明らかとなるであろう状況が近づきつつあるであろうし、もしもの時の備えは必要ザマスからな。オーヴァとアーミィは家事が一区切り付いた辺りでアイアンジャスティスの整備を頼むザマス。いつでも出撃できる様にしておくザマスのよ」
「了解メカ~。ちなみにキョージュ、その“例のアレ”の手伝いはいいのメカ?」
「ふむ、手伝ってほしいと思ったらその時に声掛けするザマスからとりあえずは先の命令通りでザマスよ」
「フンガー!」
プロフェッサーに返事をするとオーヴァとアーミィはそれぞれの仕事に移るのであった。
そんな2人を見届けたプロフェッサー・トミィはリビングから出て廊下の突き当りに移動する。
壁に右手を当てると触った部分から伝達する様に壁全体にレイラインが走ると偽装されていた扉が開く。
そこから先へと進んでいくとプロフェッサーはふと誰も居ないの様にクルリと振り返り、言葉を投げる。
「ここから先はまだ教えることはできないザマス。本編までお楽しみにしておくでザマスよ」
そう言うと同時に暗い扉の先へと消えると同時に扉は再び偽装となって壁へと変化する。
オーヴァは快晴とも言える天気の元、洗濯物などを鼻歌交じりに片づけていった。
平穏な日々の中にありながらもいずれ来たる脅威に向けて正義を標本するマッドでデンジャーで愉快な科学者とそのお供たちは日常を過ごしていく。
―終―
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