第16話 魔神轟哭~Cri of DemonDeus~
1.
彼の身体から生える突起物を通して地面に落ちている液体は
血ではあるが赤黒いものではなく、オイルの様な黒い色合いだった。
アキラ「ゴウさん!?」
ゴウ「――――グッ・・・・ッ!!!」
突き刺された痛みもあってか苦悶と苦痛の表情を浮かべるゴウ。
そんなゴウを見ても動じない所が感情らしい感情を見せない青騎士ナイトメア。
ナイトメアは顔色一つ変えずにただ無造作にゴウを貫いた刃を引き抜く。
ハザード「ギャーハッハッハッ!!!ザマァネェし、最高だナァ!ああ、デモンデウスよぉ?」
ブハァァァァ!!!と葉巻の煙を排気ガスの様に吐き出しながら高笑いするハザード。
フォビドゥンもまたそれに呼応する様に邪悪な笑みを浮かべている。
フォビドゥン「どうしたねデモンデウス。レイアム殿が目を掛けていたというのは
間違いだったということかね?」
ゴウ「――――ッ!レイアムが――――だと・・・・・?」
フォビドゥン「気になるかね?だが知った所でもはや何も出来まい。キミはここで―――死ぬのだからなぁ!!!」
更に邪悪さを増した笑みでそう答えるフォビドゥンを合図にナイトメアやジョン=ドゥはそれぞれ武器を構える。
負傷したゴウを支える様に寄り添うアキラは息を呑み、ゴウもアキラを守る様に
銃をフォビドゥン達へと向ける。
カイレンは手を合わせたまま微動だにせず、ファムファタルは妖艶な笑みを浮かべ、ファウストはそれらを眺めていた。
だがその一瞬を打ち砕く、“声”が轟く。
?????「ちょーーーーーーーーーとまったああああああああああああああああメカーーーーーーー!!!!!」
全員『!?』
皆、声の方向へと視線を向けた。
声の主は上から地上へ向けて勢いよく降りてくる。
その人物は2つある巨大なバズーカとも取れる獲物を構えると同時にフォビドゥンたちを睨みつける。
?????「ダーリン達をこれ以上、傷つけさせることはこのアーミィが赦さないメカ!!」
2.
アキラ「アーミィちゃん!?」
ゴウ「ッ―――――アイツ・・・・・・!!」
アーミィ「―――――――メカッ!!!」
2人の声にそう答えると少女の姿をしたアンドロイドは振り返らずにフォビドゥン達に睨みを利かせる。
そんな睨みも効かないかの様にフォビドゥンは不敵な笑みを崩さなかった。
ハザード「ハッハッハッハ!!!ちょうどいい。コイツラを俺様の実験道具としてやるぜぇ!!!良いよなぁ、フォビドゥン?」
フォビドゥン「――――好きにしろ」
フォビドゥンの応答に応える様にハザードの身体が徐々に変容・巨大化していく。
またハザードの後を続く様にナイトメアもまたその姿を変貌させてく。
それに伴い、2人以外のフォビドゥン達他のメンバーはその場から順次にその姿を消していった。
アーミィ「逃げるメカか!!」
フォビドゥン「流石に多勢に無勢というシチュエーションは我々としても好ましくないのでね・・・キミ達がこの困難をどう乗り越えるか・・・楽しませて貰うとしよう」
不敵の笑みを崩さず、高笑いを上げながら消えていくフォビドゥン。
同時にナイトメアとハザードの姿が完全に機怪化神へと変わっていた。
ナイトメアの姿は騎士としての意匠を思わせるまさに鋼の騎士を模した怪物の姿となり、その手に異形の大剣を携えている。
対するハザードもその姿は元の姿に幾つもの排気筒を生やしており、呼吸をするように排気ガスの様な黒煙を上げ出す。
ハザード『ブハァーーーー!!【バッドハザード】だぜぇ!!!』
ナイトメア『――――【ペイルナイトメア】』
2体の巨大な鋼の機怪化神体がそれぞれ名乗りを挙げる。
それを見たゴウは胸を押さえながら体勢が崩れた身体を起こす。
激痛はまだあるが傷は既に塞がっている。
アキラ「ゴウさん、動いちゃ・・・・・!」
ゴウ「問題ねぇ、もう傷は塞がっている――――!」
アキラの心配の声を跳ね除ける様に応えながら2体の機械の怪物へと睨み続けるゴウ。
2体の機怪化神体はゴウの視線を気づきながらも微動だにはしなかった。
ゴウがデモンデウスへと変身するのをジッと待っているかの様だ。
一抹の不安を抱きながらアキラはゴウを止めようと声を掛けようとした時、白い
魔女がどこからともなく姿を現した。
ケン「大事になっているな」
アキラ「ケンさん!!」
ゴウ「おそぇぞ・・・・・グゥ!!」
痛みを抑えながらケンに向けて言葉を放つゴウ。
その表情は痛みを抑えながらも笑みを浮かべていた。
それをゴウも笑みを浮かべながら答えた。
ケン「減らず口を叩けるのならば問題はないようだな」
ゴウ「ケッ――――弱音なんざ“あの時”から棄ててるんだよ。―――――行くぜ」
ケン「ああ――――!!」
短いやり取りを行い、ゴウの隣に立つケン。
同時にしっかりと立ち上がり、意志が折れていない瞳をグラサン越しからでも感じさせるゴウ。
そんな彼らを見てたアキラだがそれを制止させる様に声を荒げる。
アキラ「ダメだよ!!ゴウさん、大怪我を負ってるし、しかもあの機怪化獣を超えるのが2体もいるんだよ!!今は引いて少しでもゴウさんの体力を快復させた方がいいよ!!!」
ケン「――――」
ゴウ「―――――」
アキラの言葉に2人は振り向かず、そして沈黙していた。
幾らデモンデウスと云えどもかつてのカイテンとの戦いで苦戦したことを考えれば、ハンティング・ホラーズ2人を相手取るのはどれだけ大変かはアキラもわかっていた。
更にゴウは傷が塞がっているとはいえ、深手を負ったのも確かである。
そんな状況で戦えばどうなるかはアキラも何となくだがわかっている。
だからこそ今ゴウを無理させたくないのだ。
短いながらも長く感じる沈黙。
それを破る様に短くともゴウはアキラに聞こえる様にこういった
ゴウ「―――――ありがとな」
アキラ「っ!!!!」
その言葉にアキラは全身を貫かれる様な衝撃を受けた。
同時にアキラが今度は膝から崩れ落ちる様に地面へと座り込んでしまう。
そんな彼女に振り向かず、ゴウはケンを伴い、刃金の魔神へとその姿を変える。
アキラは地面に視線を落としたまま、アーミィが静かに寄り添いながらも何も出来なく、ただただ悲痛な表情を浮かべる以外なかった。
ケン「――――いいのか?」
ゴウ『アイツは“普通”だ――――それ以上の何があるんだよ』
ケン「――――素直じゃないヤツめ」
デモンデウス内でケンとゴウはそう会話していた。
そんな態度のゴウにケンはため息を付くもそこには素直になれという意味合いも込められてのもの。
気持ちを切り替える様に視線をハンティング・ホラーズの変化した2体の機械仕掛けの巨人へと向ける2人。
3.
ナイトメア『話は済んだか?――――――』
ハザード『ブアッハッハ!!大事なカノジョの前でズタボロにされる覚悟も出来てるよなぁ!?』
デモンデウスの出現に伴う動きを見せるナイトメアとハザード。
機怪化したこともあってか排煙の量が更に増えた様子を見せるハザードと臨戦態勢を整えているナイトメアの動きはとても対照的だった。
デモンデウス『ご丁寧に待ってるとはな――――大した余裕だぜ』
ハザード『当然よぉ~騎士のコイツは元より俺様は紳士なマッドだからなぁ!!下手な言い訳されても困るからよぉ!!』
どうだどうだぁ!!と粋がるハザード。
それを他所にナイトメアは無言のまま手に持った大剣を構える。
デモンデウスも無言でデモンズハーケンを出して2体の機怪化神体へと刃を向けながら、口を開く。
デモンデウス『ならそんなヤツに負けたら言い訳にもならないよな?騒音野郎!!』
ハザード『ほざけ!半端野郎がっ!!!』
その言葉を戦闘開始の合図となり、そう言いながらハザードことバッドハザードは片腕を異様で凶悪な武器へと変形させていく。
丸ノコを彷彿とさせるチェーンソーへと変形させた手とフレキシブルにつなぎ合わせた鞭の様な腕を唸らせ、デモンデウスへと向けて叩き付けにくる。
それを迎撃する為にデモンズハーケンを叩き付けるデモンデウス。
だが直撃する瞬間、チェーンソーが更に伸びてデモンズハーケンに捲きついて来る。
デモンデウス『何ッ?!』
ハザード『ブワハハハハハハ、そーらよ!!!』
高笑いを上げながらチェーンソーの腕を伸ばすハザード。
物凄いパワーとそれに伴う速さでバランスを崩し掛けたデモンデウスは即座にデモンズハーケンを手放す。
とはいえ、一瞬ではあるが体勢が崩れそちらの方に集中していた隙を突く様に今まで沈黙していた青騎士が動く。
ナイトメア『・・・・・・フン!!』
ケン「―――!ゴウ、後ろだ!!」
ゴウ『チィ―――ッ!!』
こちらに向けて大剣を振り下ろす青騎士に対応すべく、機体を反らしながら、片刃の大剣『カラミティナッパー』を呼び出して受け止める。
激突する黒と青の巨人の刃がぶつかりあい、激しい軋みの音を掻き立てる。
不安定な体勢ながらも青騎士の大剣を片手持ちの剣で抑えているデモンデウス。
ナイトメア『―――――――』
デモンデウス『クソ、変身前よりも莫迦力かよ・・・!?』
苦悶の声を漏らしながらも少しずつ体勢を持ち直していく。
出力を高め、全体の力を片刃剣を持っていた右腕に集約させていくデモンデウスは勢いを付けてナイトメアを大剣ごと跳ね飛ばす。
跳ね飛ばされたナイトメアはそのままデモンデウスと距離を取る様に離れる。
そしてそんな隙を埋める感じにハザードの触手の様なワイヤーを複数伸ばし、デモンデウスの身体を縛り付けていく。
デモンデウス『グッ――――!?』
ハザード『ブワァハッハッハッーーーーー!!!捕まえたゼーーーーー!!』
勝ち誇った様に馬鹿笑いの様に大声で笑うハザード。
ワイヤーの様な触手がデモンデウスの黒い躯体に絡み付き、力を強めてメキメキと締め上げるのが感じる。
デモンデウス『こんなモン、すぐに引き千切ってやるっ!!』
締め付けに対抗する様に力を強めるデモンデウス。
だがそれと同時にワイヤーからバチバチと光が現れると同時に電撃が発生し、デモンデウスの身体を襲う。
デモンデウス『ぐわああああああああああああっ!!!!』
ハザード『そんな簡単に行くかよぉ!想定済みなのは当然だろうがぁぁ!!!』
電撃と同時に締め付けを強めるハザード。
デモンデウスの躯体は徐々に軋み、装甲を歪ませ、破壊していく音がする。
ハザード『ブワハッハッハ、壊れろ壊れろ!!』
歓声と排煙を上げながら出力を高めるハザード。
青い騎士の巨人たるナイトメアは警戒を解かず、そのまま静観の様子を見せている。
アキラもまたそんな様子を何も出来ない焦燥感を抱きながら不安の表情を浮かべながら
デモンデウスを信じるべく、ジッと見つめていた。
アキラ「―――――デモンデウス、ゴウさん・・・ッ!!」
4.
身体を締め付ける強い痛みを感じる。
機械の怪物とも云えるこの身体になってから痛みに関しては特に気にもしていなかった。
いつからだろうか。
“痛み”を認識し始めたのは。
“アイツ”との出逢いからか?
“ヤツ”との再会からか?
―――――少なくとも“魔女”との接触以降は“痛み”も“傷”も何とも思わなかった。
それが今は――――疼く
何故かはわからない。
今までは何も感じなかった、思わなかった、そんな認識が何故今なのか、知らなかった。
いや―――――
“そんなこと”はもうどうでもいい。
今湧き上がっている“モノ”の前ではそれはもはや意味がないからだ。
それは――――
<怒り>
憤怒。憎悪。怨嗟。悔恨。
数多の感情の沸点であり、原罪の1つに処されるもの。
負の側面が強く主張されるがそれはあくまでも因果関係が付与されたものに過ぎない。
己に沸き上がっている怒りは敵への怒りだけではない。
不甲斐ない己に対しての怒りもあった。
―――何の為の力を得たの。
―――何の為に戦ってきた。
―――何の為に生き残った。
―――何の為に・・・・・
沸き上がってくるモノは感情とは違った“何か”がゴウのデモンデウスの意志を侵食していく。
ケン「―――――ッ!!まずい、ゴウ!!!!」
相棒が異変に気づき、ゴウに言葉を投げるも届かなかった。
デモンデウス『ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』
そして、魔神は轟哭した。
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