46 Q:S【騎士団との悶着】
>Quest : Suddenly
「おや、気鋭の新人冒険者殿がお帰りか」
丙3D周回の戦利品を納品しにギルドにやってきた俺たちを嫌味な感じで出迎えたのはギルド職員ではなく大勢の部下を
見覚えのある
「さすがは冒険者と言ったところか。足並みを乱すことに関しては一流ということだな」
何の話か分からないが、とにかく俺たちに何やら喧嘩腰であることは確かのようだ。
「すみません、素材の提出を。あと
カツゾウの方は相手にするだけ無駄だと思ったのか、無視して受付嬢に今日の戦利品の納品と、明日の目当てである乙3Dの依頼を確認するが
「言った傍から……しかも乙等級だと?たった二人、マグレで丙等級を攻略できたからと偉く思い上がっているようだ。全く、バカは救いようがないな」
おっと、聞き逃せないセリフが聞こえた。
無視を通していたカツゾウもさすがにこれには嫌な顔をして騎士の方を見る。
「……何の御用で?」
問うと、騎士の中でも一等偉そうな長髪の男が嫌味たらしい笑みを浮かべながらこちらに寄って来る。
「貴様らが勝手にダンジョンを攻略したせいで、今度の大規模攻略の計画が台無しだ。おかげで騎士団の面子は丸つぶれだよ」
「はぁ?」
欠片程もこちらの知った話ではなかった。
いちいち癪に障る言い方に腹は立ったものの一応話だけは聞いてみた。
曰く、近く騎士団主導で冒険者と騎士団による大規模な攻略クランを構成し、丁2D攻略に乗り出す予定だったと。当然莫大な費用がかかり、その補填には丁2D関連依頼の報酬を当てにしていたものの、『オウル』を名乗る新参パーティーが突然やってきたかと思えば先だって攻略、依頼達成してしまい、想定していた稼ぎの大半が横取りされたことに嫌味を言いにきたらしい。
よく聞いてはみたが、マジでこちらの知った話ではなかった。
そもそも依頼は自由に請けられて報酬は早い者勝ちだ。ダンジョンも基本的にはいつ何時も開かれていて、一定ランクの冒険者ならいつでも挑戦可能だ。大規模討伐とやらも自信があるのならさっさとやれば良かったものを、手を付けなかったんだから流浪の冒険者に先を越されたとて文句を言われる筋合いはない。
要するに言いがかりだ。
「……ではこの依頼全部請けます」
カツゾウの方は聞いている内に耳が持たなくなったのか、受付嬢が持ってきた乙3D関連の依頼を一通り受注手続きしている。
「おい」
そんな飄々とした様子が癪に障ったのか、騎士は部下に指示を出すと、仰々しい青い鎧が俺たちを取り囲んだ。
「ぽっと出の冒険者風情が、運良くマグレを重ねたからって調子に乗るなよ」
おっと、二度目だ。
彼らが予定していたという丁2Dどころか、こちらは
「おい、止まれ」
ふと、騎士の一人が依頼書をしまおうとしていたカツゾウの華奢な腕を掴むが
「お、おぉおお!!?」
カツゾウはお得意の体術防参【逸らし】で掴みかかった騎士の体勢を崩し、その場に転ばせて
「……弱っ」
煽り返した。ちょっと彼女、喧嘩っ早いところがあるよなぁ……
これには騎士団もざわついた。
「貴様……!何をしたか分かっているのか?!」
偉そうな長髪が激昂するが
「手を出されたので
カツゾウは淡々と答える。
「俺も見てたぞ!女の子に手ぇ出そうとして
「そもそもコウケツな騎士サマが冒険者ギルドに偉そうに居座ってんじゃねぇ!目障りなんだよ!」
と、何故か周囲に居た冒険者たちがカツゾウに加勢した。
あぁ、ここ、仲悪いのか……
次第に大きくなる冒険者の野次に騎士たちは顔を赤黒くしていくが、不意に長髪が剣を抜いてこちらに切っ先を向ける。
「抜け」
ここで?子供の
「騎士団をここまでコケにしてくれたんだ。貴様らの
いやいやいや……
一連の流れでこちらから吹っ掛けた場面は無かった。一方的に絡んできてあしらわれてこの言い草……騎士団、コンプライアンスとか存在しないのか?
「受けましょう、【契約決闘】」
何故かカツゾウは二つ返事でこれを受けた。
カツゾウがコマンドを口にすると、カツゾウと長髪騎士とそれぞれの前に小窓が表示される。あぁこのコマンドも使えるのか。
【契約決闘】とは、当事者同士が自由にルールを設定し、仮想の決闘を行うことができる補助コマンドだ。スキルの制限や勝敗の基準なども設定でき、仮想なのでどちらかが死んでもHP1で固定スタン。終わればデスペナルティなく生き返ることができる。
NSVではガチ強襲を何度となく経験した俺やカツゾウにとっては生温い設定であるが、今回敢えて契約決闘を申し出たのはきっと彼女なりの憂さ晴らしだろう。
「あ、あの……!」
不意にカツゾウの対応をしていた受付嬢が怯えながら声を上げる。特に長髪騎士の方が「一体何だ!」と言いたげに受付嬢を睨み付けるが
「け、決闘なら……どうか訓練場にてお願いします」
ド正論だった。
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