43 Q:A-T2D-Rw【丁2D攻略の報酬】

 丙3Dゲスターブ遺跡を気持ちよく攻略した俺とカツゾウはさっさと核座から入り口に転移しもう一周……今度はお宝発掘コースでサクサクと二周目を終えた。

 ダンジョンの宝箱は一定時間でいずれか所定の位置にリポップするため、明日の取り分を前に今日の分を確保しておきたかった。結局さほど大した収穫はなかったが、いくつかの装備のグレードアップはできた。


 二周目では宝探しコースで必中の強敵ゴブリンディザスターを二人でひねり、カツゾウがパラディンを、俺がロードをそれぞれ討ち取り一仕事終えたとホクホク顔で帰投。先ほどの一次帰投でチェックインしておいた木漏日亭は食堂が閉まっていたので、ストックしていた食料で腹を満たすだけ満たし、身体と装備を綺麗にしてから眠りに就いた。




 翌朝


 「丙3Dを攻略……?昨日あの後ですか……?」


 マリス・メリサ兄妹を待つ間に昨日応対してくれた受付嬢にその後の顛末を報告がてら依頼達成の提出を申請したところ、信じられないモノを見るような顔をされた。ギルドに行くとよくこんな顔されるなぁ……


 「と、とりあえず解体場に……」


 前日の提出で暴力的な物量を見せていたためか、二言目には解体場に案内された。

 ちょうどそのタイミングで兄妹もギルドに到着したので、二人を伴い解体場へ向かった。


 「『オウル』が素材を持ち込んだ」との報告で解体場の作業員と鑑定職が急遽集い、昨日の分に引き続き提出された丙3Dの素材を前にして一様に目を丸くして固まっていた。


 素材を提出するまでは「まさか二人組の新参者があの短時間で丙のダンジョンを攻略できるはずがない」と野次馬根性でわらいながら着いてきた他のギルド職員も、ロード級の魔石二つを筆頭に提出された成果物を前に押し黙るしかなかった。


 攻略しなければ手に入らない。そもそも市場に出回る物でもないのでズルの持ち込みはできない。それが手元にあるということは、少なくともそれらをいずこかから持ち帰るだけの地力があるということ。

 加えてそこにあるのはパラディン級の魔石が複数、他大量のゴブリン種の魔石に加え、過去丙3Dで見つかったと報告のあるアイテムたち。二人が丙3Dに挑み成果を上げて生還した証拠が綺麗に揃っている。


 「しゅ、集計にかけます……」


 職員たちは現物を見るまでは各々様々な表情をしていたが、丙等級ボスクラスの魔石を目にすると顔付きが変わった。それこそ一流のパーティーがマルト滞在中に挑戦でもしなければ滅多にお目にかかれない代物。丙3D自体は過去に攻略歴のあるダンジョンだが、誰でも攻略可能な難易度ではなく、宝探しの散策ならともかく敢えてボスやパラディン級に挑戦するなどよほどの強者か命知らずのすることだ。

 これは一仕事だと、職員たちの顔つきは一瞬にして職人のそれに代わり、各々が無駄口を叩くことなくテキパキと作業にかかった。




………




 「…………えー、では昨日のご依頼の分について」


 職員たちが総出で集計にかかる中、受付嬢が俺とカツゾウ、マリスとメリサ兄妹に昨日提出した素材の集計結果を伝えに来る。


 「まずフォレストワスプ及びその上位種、変異種の討伐並びに巣の回収につきまして……こちらは依頼内容が初期調査となっていましたが、実際の討伐内容にて依頼ランクを訂正した上での遂行と見做みなし、正規の討伐報酬に加え特別報酬をお渡しします。また、同様に実際の討伐内容にて冒険者ランク及びパーティーランクに貢献度が反映されます」


 実は各種ワスプの針の部分は薬の原料として重宝される素材でもある。巣の蜂蜜も生薬の素材、幼虫は見た目はアレだがスタミナ食として、巣自体は工芸品に用いられることもあるという。あれだけの死骸と巨大な巣を比較的良好な状態で提出したのだから、ギルドとしてはウハウハだろう。報酬には期待できそうだ。


 「その上でマリス君、メリサさん両名をDランクに昇格し、丁2Dローセント鉱山道関連成果を計上します。『オウル』のお二方にお請け頂いた丁2D関連依頼は全部で四つ、ご提出いただいた素材にて数量・グレード共に適格、全て依頼達成となります。こちらは『オウル』に一次参加していたマリス君とメリサさんを含めた四人宛てに一括で報酬が支払われるので、按分割合は四人でご相談ください」


 一応戦闘に参加していたとはいえ、兄妹は報酬の按分については若干申し訳なさそうな顔をしている。


 「次いで、依頼外で提出された魔石の報酬のお渡しと……冒険者ランク・パーティーランクへの貢献度が反映になりますが。『オウル』のお二方は……本日丙3Dの攻略分が計上されましたら間違いなくBランクへ。マリス君とメリサさんはCランクとなります」


 聞くと兄妹は申し訳なさを通り越して青い顔をする。

 つい昨日まではロクな討伐経験もない成りたてのEランク。それが一晩明けてみたら統率適格の太鼓判であるCランク。少人数で周回したため貢献割合が高かったのか思いがけずスピード昇格となった。

 ランクだけ見て舞い上がるお調子者なら早晩命を落とすだろうが、兄妹はそんなことはないはずだ。とは言え、引っ張り回すにしてもやり過ぎたかもしれないな、と二人の顔を見て思い直した。


 「……あの、ミツカさん、チヒロさん」


 と、意を決したように兄のマリスが声を上げる。

 まぁ言いたいことの一つや二つあるだろうとは思ったものの、その意を決したような視線に思わずカツゾウと目が合う。

 逡巡している内にマリスはその場に膝を着いて


 「俺とメリサを二人の奴隷にしてくれませんか!?」


 そう、とんでもないことを言い放った。





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