第315話 28ー10 結婚式
12月8日は、優奈とユーリーの結婚式です。
当初は、お知らせだけで済まそうと思っていた方から、結婚式の披露宴にぜひ参加したいと強く申し入れがあって、急遽招待状を送った方が10名ほどいらっしゃいます。
優奈の友人である英国のカレンと韓国のソニン、フランスのファッションデザイナーであるサイーラ・フェルトン女子とその専属モデルであり優奈の友人でもあるレナとソフィ。
オーストラリア研修中の下宿先の息子夫婦であるケヴィン・ソーンダイクさんとアリス・ソーンダイクさん、それに二人の幼い子供ケント君、ケント君は優奈がアリスさんの不妊症を治して授かった子供です。
それにマードック大学リンジー・フェルトン教授は、オーストラリア研修中の担当教授であり、ラコルブログ菌の検出に指導的役割を果たし、関連する論文を優奈との共著で出してくれた恩師でもあります。
そうして5年間のウィーン留学中の大家さんであるカミラ・カールセン女子は、ご老体ながらこんな時でもないと日本を訪れることができないからとごり押しでしたが、その実孫娘のベルタ嬢の過ちを見逃してくれたことに恩義を感じてのことらしいのです。
優奈の入っていた部屋は、カミラさんの計らいでそのままにしてあり、入居者には由来を説明し、家具をそのまま使うように条件を付けているようです。
そうしてウィーンで知り合った友人の川原美津子さんと青山早紀さんも是非にとお願いされた口です。
いずれもご迷惑になってはいけないと思い招待状を出さずに結婚しますというお手紙を出したら、是非とも出席するから招待状を出してと督促されました。
川原さんと青山さんは既に日本に帰国していましたが、それ以外の方たちはいずれも外国にお住まいですから遠方から来ていただくのは大変だとこちらで遠慮したのですが、逆にお小言を頂いてしまいました。
知人の類は数多居ますが、できるだけ絞った結果、色々とクレームめいたお祝いのメールも届きました。
概ね陸上競技と水泳競技の協会等お世話になった方たちには念のため招待状を出したのですが、全員披露宴に参加すると返事をいただきました。
で、それ以外の知り合いの方たちから情報を漏れ聞いてどうして呼んでくれないの?的なメールが、わんさかと来たわけです。
さすがに知り合い全部を呼んでいたらオークラホテルの披露宴会場に入りきれません。
ユーリーの親族だけでも絞りに絞って結局450名余り、優奈の親族知り合いで250名余り、合計700人超の披露宴は、オークラホテルでも初めてのことだそうです。
東京あたりでは有名人の結婚式等で千人を超える披露宴もあるわけですが、神戸ではそんなに大規模な披露宴は催さないようです。
大阪人ではないですけれど、無駄を省いて締めるところは締める習慣が関西では根付いているようです。
まぁ、某県等のように嫁入り道具に大枚の金をかけるところもありますけれど、それでも結婚式や披露宴は左程仰々しくはないようですね.
色々ありましたが結婚式当日、この日は流石に午前中のみの診療で、午後からは休診としています。
入院中の患畜は居ませんが、お馴染みさんに何かあった場合のバックアップについては、神戸獣医師会の伝手でKOBE❆❆動物病院にお願いしてそちらに回るよう張り紙をしており、その暇のない救急等の場合はどうぶつ王国の獣医であり獣生大の先輩である加賀原裕紀さんが対応してくれることになりました。
午後からは特別に頼んでいた美容師さんが三人も助手を引き連れて我が家に押しかけて来て、優奈はエステのモデル扱いです。
午後4時までにはユーリーともどもオークラホテルにチェックインしていなければなりません。
式の前に優奈の父母等親族一同と、式に参加するユーリーの親族一同が会する一種のお見合いがありました。
それぞれ初めて会う訳なので、私とユーリーが間に立って紹介をするのです。
私が日本語で、ユーリーがフィンランド語でそれぞれの通訳をします。
尤もユーリーの親族は念話で意思疎通ができちゃうので通訳は不要なんですけれどね。
まぁ、建前上はユーリーとその家族の母国と想定したフィンランド語で対応してもらっているわけです。
それから衣装や化粧を再度整え、ホテル付属の教会で式を挙げて指輪の交換がありました。
勿論誓いの言葉もキスもありましたけれど、ユーリーとは毎日キスをし合っている中で特段の感慨もありません。
牧師さんからは、「神の御前での二人の結婚を許可します。」旨の結婚証明書を頂きました。
因みに結婚届を提出するのは後日叔父がやってくれることになっていますし、夫婦別姓の婚姻届です。
教会の結婚式場に入れたのは、優奈の親類で従兄弟・従姉妹まで入れて28名ほど、ユーリー側もそれに合わせて30名に絞ったようです。
実際のところユーリーの兄弟姉妹は8人、父方の叔父叔母が7名、母方の叔父叔母が10名、従妹の類は100名近くになります。
なので、従兄弟・従姉妹以下の参列は遠慮してもらい、両親と兄弟姉妹で小計9名、父方の両親と叔父叔母で小計9名、母方の両親と叔父叔母で小計12名の全部で30名なのです。
一応キリスト教の式次第に則って、式自体は無事に終わり、教会を出ると大勢の親族や知人が二人を待っていました。
クラッカーや紙吹雪それに花びらなどが二人をお出迎えです。
式場前で記念写真を撮り、それから一旦化粧直しに控室に入り、しばらく時間を置いてから今度は披露宴会場に向かいます。
ホテルの式場担当者のチェックを受けて会場前の入り口で待機、司会者のアナウンスで式場に入ります。
新郎新婦抜きで既に宴会は始まっていますが、新郎新婦の入場から正式の会食になるようです。
入場すると会場がざわざわっとしました。
多分、普段の優奈とは違う優奈が見られたからでしょうか。
中には知らない異言語で内緒話をしている異世界人もいますが、ちょっとひやひやモノです。
だってかなりの数のスマホやビデオカメラがいたるところで構えられていますから、当然にそんな内緒話も録音されてしまいます。
もしも、その録音が言語学者の手にでも渡ったなら、考えるだに恐ろしい詮索が始まりますよね。
そんなことには関わりたくない優奈なんです。
披露宴の進行について一応の大枠は優奈とユーリーが決めましたが、詳細の詰めは優奈の友人たちがユーリーの会社の社員やホテル側担当者と色々協議して決めたようで、当初の優奈たちの思惑とは違った展開もありました。
それでも色々な逸話を紹介され、頬を赤く染めたりもした優奈です。
ユーリーの分はフィンランド語ですが、英語と日本語の同時通訳が入ります。
そのために会場では右耳にかける骨伝導イヤホンが手渡されています。
勿論優奈とユーリーにそんなものは不要です。
披露宴恒例の隠し芸的余興の時間もありました。
隠し芸ではないのですが、チェ・ソニンとカレンが All of me を演奏してくれました。
ソニンがピアノを弾きながら歌い、カレンがバイオリンで伴奏するのです。
とても素敵で見事な歌と演奏でした。
ソニンは当然としても、カレンは高校時代よりも演奏の腕を上げたみたいですね。
事前にメール等で連絡は取れていても、この結婚式で初めて会ったはずのソニンとカレンですが、演奏自体はとても息が合っていました。
披露宴の後は,、優奈の知人やユーリーの知人のウチでも若い人達が募って二次会です。
ほとんどの人がオークラホテルに宿泊しますので、オークラホテルの三階にあるバーラウンジを借り切って午後11時45分までのパーティです。
最後に乾杯をして皆さんと別れましたが、優奈とユーリーは、スィートルームに直行。
シャワーを浴びてからベッドイン。
R18ものの色々なベッドスポーツを繰り広げてから、抱き合って寝ました。
翌日は午前10時にチェックアウト、ポートアイランドの自宅へタクシーで帰りました。
その日の午後からYUNA動物病院の勤務です。
夫婦のセックスは勿論解禁ですので、この日から二人は主寝室に移動して毎夜励んでいるのです。
特段避妊はしていません。
そうして12月24日のクリスマス・イブ、優奈とユーリーはハネムーンで関西空港からハワイへ向けて飛び立ちました。
行く先は取り敢えずオアフ島なのです。
JALの場合、関空を夜10時過ぎに発って、約8時間のフライトで到着は現地時間の24日午前10時頃。
当日は、シェラトン・ワイキキで一泊し、翌日、予めレンタルしたクルーザーでカウアイ島のエラエラを目指します。
船長は英国のRYA資格を有するユーリーが努めますが、優奈も通り一遍の操船はできます。
米国はレジャーボートについては特段の免許制度がありません。
相応の経験があれば大丈夫なようですね。
優奈たちが借りたのは35フィート型のクルーザーヨットです。
帆走だけでなく内装エンジンで機走もできますし、5~6人が宿泊できるキャビンもあります。
ユーリーの知人であるホノルル在住のドイツ系オーナーにお願いしてベアチャーター(裸傭船:乗員を付けずに船体のみを借りる傭船契約)で借りたものです。
建造から10年ほど経過した船体ですが、しっかりと整備されていて、隅々まで清掃されていました。
概ね8ノットの速力でも14時間ほどあれば、ホノルル港からカウアイ島エレエレに到着できますが、その航路途中で船ごとバックレる予定です。
別に遭難するつもりはありませんよ。
一応、ハワイ周辺海域を三日ほど航行してからエレエレに寄港予定と関係官庁には計画を出しています。
予定通り米国ハワイ時間12月25日午前10時過ぎにホノルル港を出港、周辺に船影が見られないところで、異次元世界に船ごと跳躍しました。
出現したのは、ユーリーの出自であるノーバック世界の無人島にある地下の係留埠頭。
ユーリーの一族が買い取った無人島で地表には小さな別荘があるものの、周辺の者には知られないよう地下には秘密基地が作られているのです。
そこから転移してユーリーの実家であるマクシム家の邸宅へ。
既に連絡を受けていたマクシム家ではユーリーの一族他800名余りが待機している状況でした。
優奈は早速、ご当地での花嫁衣装に着替えさせられ、邸宅内の庭に設けられた披露宴会場に文字通り運ばれました。
優奈の前には長蛇の列が作られ、ユーリー一族との対面の儀が繰り広げられたのです。
これほどたくさんの人が次々に押し寄せると流石に普通の人では覚えきれないけれど、優奈はそのすべての顔と名前を憶えたのです。
披露宴は参加者も多い所為か、ノーバック世界の昼過ぎから始まって、夜半の午後8時過ぎに終わりました。
優奈も体力的には問題なくても、流石に精神的に疲労を感じていましたね。
その日は、マキシム邸の一室でユーリーと励んでから抱き合ったまま寝たのです。
翌日は、ユーリー一族の伝統に則り、始祖であるエドガルド王の王国があったカルムル世界を訪れ、アルカンディアを治める王家に非公式のご挨拶を済ませ、そのあと若返りの秘術(機械を使って個人データに基づいた薬品を造り、その薬品を体内に入れることで細胞の活性化を行うようです。)を扱う一族の婚姻登録所を訪れ、婚姻届けを出しました。
エドガルド王を始祖とするユーリーの一族は若返りの措置を受けることにより実質上の不死となることから、その婚姻及びその子供の素性を明確に登録しておかないと、近親婚による弊害が出ることになるので、そんなことにならないよう系譜を管理しているらしいのです。
要は男女ともセックスをする前にきちんと素性を確認しなさいと言うことなのです。
この登録所に問い合わせれば、少なくとも自分の伴侶候補が近親者か否かはすぐにわかるようになっているのです。
この手続きが終わって、優奈の所属する世界に戻ったわけですが、優奈の体感時間は概ね二日程度だったのに、元の世界では三日が経過していました。
ノーバック世界、カルムル世界それに登録所のあるモレンデス世界のいずれもが流れる時間が異なるために、優奈の世界との乖離が生じたようです。
ユーリーによれば、ノーバック世界との時差は概ね1日について三時間ほどで地球世界の時間の流れが早いとのことなのです。
カルムル世界とモレンデスについても同様のことが有り、結果として二日の経過時間で地球の方が三日経過してしまったようなのです。
今後異次元世界を訪れるときには惑星の経線による時差よりも、時流時差に注意しなければ浦島太郎になってしまう可能性がありそうです。
とにもかくにも無事に優奈とユーリーはエルエルに到着、まるまる二日をカウアイ・シェラトン・リゾートで過ごし、それからクルーザーでハワイ島へ向かい、コナにあるマリーナに入り、、フォーシーズンズ・リゾート・ファラライで新年を迎えます。
ここで1月3日まで逗留、ホノルル港へ戻って1月6日に日本へ帰国しました。
24日から足掛け12日間、文字通り蜜月を過ごした優奈とユーリーでした。
早速13日からは二人とも仕事なのです。
ユーリーは処理しなければならない書類がたくさん、優奈には優奈の帰りを待っていた動物たちとその飼い主たちが大挙して押しかけて来ていました。
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これにて「ミラクル・ユーナ」は一応完結です。
優奈とユーリーの新婚生活は続きますし、二人の仕事も順調です。
二人とその子供達のお話は、機会があればまたご紹介することにいたしましょう。
長い間、読んでいただき誠にありがとうございました。
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