第309話 28-4 YUNA動物病院開業までのあれこれ

 9月22日ポートアイランドで建設中だったペントハウス付きの動物病院がついに竣工しました。

 引き渡しは翌日の23日。


 登記が済めば名実ともに一国一城の主になります。

 この時点でスタッフ予定の北条さん、林さん、岡崎さんも神戸市内にアパートを借りてスタンバっています。


 スタッフ三人で話し合いの上、ルームシェアを行ってポートアイランド内の3LDKの賃貸マンションに住んでいるようです。

 築40年のマンションですが、6畳の和室と、5.9畳と6.3畳の洋室に、13.6畳のLDKなのだそうです。


 14階建ての6階で、オートロック付きなのでセキュリティも安心です。

 家賃は月10万円ですが三人で割れば一人当たり3万円強、しかも勤務先の動物病院までは歩いても20分以内で行ける距離なんです。


 実は4月の段階で三人には支度金一人当たり150万円を支給して、身の回りの準備をしてもらっていました。

 この額では4月からの生活費までは出ないかもしれませんが、賃貸料ぐらいは十分に賄える額の筈です。


 正式な雇用は10月からになっているほか、開業は10月10日の予定なのです。

 でも、開業の前に各人には就業の準備をしてもらい、機器の取り扱いにも慣れてもらう必要があります。


 市販の機器もありますけれど、設備予定の医療機器の9割方は優奈が製造・作成したモノなのです。


 そのために9月の初めから看護師二人については三宮周辺の貸しビル内で機器の取り扱い研修を行いました。

 各種非接触型センサー、採血用分析機器の類、放射線医療機器、YUMA方式電子顕微鏡、カテーテル等手術器具、アニマルセラピー関連機器など動物看護士に支援を行ってもらう分野は結構多いのです。


 そのために機器の取り扱いに熟知してもらう必要がありました。

 彼女らは優秀ですし、優奈の特殊能力で睡眠学習を多用した結果、短期間で目標としていた技量に達してくれました。


 同じく、医療事務担当の岡崎さんも獣医関連の医療事務に慣れてもらうための特訓も行いました。

 優奈の見込んだ人ですから、さすがに学習能力も優れており、動物看護士の二人と同様、短期間で必要な医療事務を取り扱えるようになってくれました。


 この研修期間中は正式な雇用とは別なのですが研修手当として月額20万円のお手当てを支給しています。

 これらの収入は、正式雇用によるものではないので12月の確定申告で各自が申請してもらうことになるはずです。


 因みに彼女らの賃金について半年間は仮賃金として月額25万円を予定しており、来年4月以降は労使協定に基づく雇用契約により、別途の賃金体系にする予定です。

 病院経営も下手をすると破綻するのですが、優奈の場合は、年間数千万円の赤字が出ても数十年は経営可能です。


 まぁ、そんなに赤字経営はしない予定ですけれどね。

 動物病院の固定資産税だけでも結構な額になりますから、当然のことながら2026年は赤字経営の予定です。


 2027年からの収支がどうなるかはお客さん次第でしょうか。

 勿論ネットを利用した広告も出す予定で、既に準備してあり、10月1日からネット及び新聞等に広告を出す予定なんです。

 一応、ホームページも作成して、10月1日から解禁です。


 そのほか、優奈が製造した医療機器の設置は、病院引き渡し後に優奈が単独で行いましたが、病院内部で行われていることですから誰も疑問には思っていないですし、疑問視されるような場合は超能力でそういった疑惑そのものがなかったことにしてしまいます。

 ヒュプノという洗脳の超能力なんですが、マインドコントロールを受けた者自身が自分の意思の発現と考えているので他から操られているとは気づかないのが特徴です。


 無論、超能力者の能力によってはできる対象とできない対象があり得ますが、優奈の場合、ユーリーレベルの超能力者ではない限り、自由に操ることができるはずです。

 尤も、恣意的に他人を使うことになるので余程の理由がない限りその能力を使いません。


 強制的に従わせることによって対象者のメンタルに傷を負わせることにもなるからです。

 本来は意志にそぐわない行動をさせることからどうしてもメンタルに大きな負担がかかるのです。


 認識疎外なども一応洗脳の部類に入りますが左程負担のかからない軽度な認識疎外であればリスクがないので比較的容易に使うことができます。


 ◇◇◇◇


 10月1日ネットで動物病院のホームページを解禁しました。

 ネーミングは、YUNA動物病院です。


 院長は優奈ですから、プロフィールにユーリーの撮ってくれた見栄えのよさそうな写真を掲載し、略歴として、ミラクル・ユーナとしての来歴、在学中及び留学中の実績などを掲載しました。


 多少は反応があるだろうと思っていましたけれど、予想外の反響で驚きました。

 正直言って「凄い。」の一言です。


 ホームページには、日本語以外にも取り敢えず英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、中国語、韓国語の七か国語を掲載しましたけれど、その所為せいなのか、僅か一日だけでホームページに200万件を超えるアクセスがありました。


 スマホでは、SNSやツィッターでYUNAの名前が乱れ飛んでいます。

 本当に今でもミラクル・ユーナの名前は売れているみたいです。


 その日だけでホームページ掲載の動物病院のアドレスにお祝いのメールが二千通以上も届いたのでまたまたびっくりです。

 職場のメールが使えなくなると困るので、自分で選別プログラムを組んで病院に関連するものとそうでないものの仕分けを自動でするようにしました。


 調べたところでは、YUNA動物病院に関連するモノは、関連業者からの広告が主で数十通ありましたが、それ以外のメールは明らかにミラクル・ユーナ宛の個人メールでした。

 YUNA動物病院のアドレスなんですから、優奈個人宛のメールは甚だ迷惑なのですが、・・・。


 仕分けされた個人宛メールは、優奈個人の予備PCに送られ、同じくプログラムにより読む価値のあるものとそうでないものに自動的に仕分けられました。

 当然、仕事にも関連しないメールにはいちいち返事は出しません。

 念のため、ホームページでその旨お断りを入れました。


 10月1日は機器の設置がありましたので、北条さんたちスタッフの出勤は10月2日からとしていました。

 2日に出勤してもらってすぐに行ってもらったのは、病院内の施設の作動確認と機器の作動点検でした。


 北条さんと林さんで二階の診療室と手術室等、三階の隔離病棟等、4階の実験及び検査測定室等を順次回ってもらい、それぞれの設備の作動確認を行ってもらいました。

 岡崎さんには二階の診療受付の機器およびセキュリティの確認をしてもらっています。


 因みに一階入り口にあたる階段室、エレベーター、エスカレーターの入り口には複数のセンサーが取り付けられており、自動的に防疫ができるようになっています。

 危険度の高い感染症の患畜が当該ゲートをくぐった場合、受付と診療室の警報が表示するようになっています。


 念のためなんですけれどが、患畜だけではなく付き添いの人間の感染症も重大なものは検出できるようになっています。

 少なくとも法定伝染病は全てアウトになりますよ。


 点検確認は2日と5日の二日をかけてもらいました。間の3日と4日は土・日でお休みです。

 尤も、開業してからは土曜日と日曜日は休みにはなりません。


 一応月曜日と金曜日が休診日の予定になります。

 優奈の場合職住接近なので休診日でも都合がつけば急患は見るつもりでいますが程度問題ですね。

 重症か否かは、見てすぐにわかりますし、見なくても現在位置さえわかれば様子は把握できますから、適宜判断して対応することになるでしょう。


 但し、クリスマスイブの12月24日から正月3日までは新婚旅行で臨時休業です。

 事前にホームページでお知らせしようかと思っていましたが、今回のホームページ開設だけでも反響が大きすぎたので、結婚式を挙げた後に改めてしようと思っています。


 尤もお客様でいらっしゃった方たちには事前に結婚のことは伏せて休診予定を告げておくようにスタッフには言ってあります。

 因みにスタッフ三人も結婚式の披露宴には招待しています。

 結婚式当日は勿論午後から休診です。

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