第308話 28-3 優奈のとある一日
優奈は実家でゆっくりと英気を養っている最中なのですが、結構スケジュールは詰まっているのです。
朝6時に起床してすぐに、庭で鞍馬古流の鬼一楊心流の鍛錬なのです。
祖父の加山久三も高齢になったので流石に鍛錬に参加はしないのですが、軽めの準備運動だけは付き合って、祖母加山美玖とともに庭先にある縁台に座って優奈の鍛錬を見守るのがこのところの流れです。(久三87歳、美玖86才)。
30分から40分ほどの鍛錬でうっすらと汗をかいた程度なのですが、それから浴室に入ってシャワーを浴びて着替えると7時には食堂で家族とともに朝食なのです。
給仕はいつもの通りマリアが甲斐甲斐しくもてきぱきと処理しています。
マリアも優奈が生まれる前からの加山家奉公ですので、既に四十路も半ば。
好きな人はかつて居たのですが、死別して以来、結婚を諦めて、家族や親族への仕送りが生きがいになっているらしいのです。
日本語もすっかり板について、日本人と全く変わらない会話ができるのです。
父加山敦夫と加山聖子はパジャマ姿のままで朝食を摂ります。
二人とも朝食は和食です。
優奈は洋食でも構わないのですが、祖父母も和食派なので、加山家の朝食は何時も和食なのです。
ご飯に味噌汁、納豆に卵焼き、漬物少々に小魚の佃煮が定番です。
食事を終えると歯磨きの後でテレビをつけながら父が居間で読売新聞を、母がその隣で神戸新聞を読んでいます。
これも見慣れたいつもの風景ですね。
8時間近になると父母が着替えに寝室に戻り、8時半には二人連れだって神戸海王病院まで徒歩出勤。
普通に歩いて15分程度の距離ですが、雨の日はタクシーでの出勤もあります。
既に両親と祖父母にはユーリーとの婚約それに結婚の予定について伝えてあるのです。
日本の慣例では結婚前の儀式として結納の儀があるのですが、これは省略。
外国人に結納と言っても相手が困るでしょう。
両親や家族の顔合わせは結婚式の前日にホテルオークラで行うことにしています。
優奈には兄弟は居ないのですが、ユーリーの両親には兄夫婦、姉夫婦、弟一人、妹二人と子沢山であるほかに、祖父母4人もいるのです。
優奈の方は加山家、岸本の祖父母を併せても、6人、家族同然のマリアを含めても7人なのですけれど、ユーリーの側は、13人の大所帯なのです。
まぁ、いずれにせよホテルで顔合わせをすることについては両親・祖父母共に同意してもらいました。
因みにユーリーの家族は、便宜上フィンランド在住ということにしています。
異世界の話を一般人の両親や祖父母に知らせるわけには行かないのです。
このところ、ユーリーは1週間に一度、土曜日か日曜日には加山家を訪れています。
優奈の方も2週間に一度ぐらいユーリーの社宅にお邪魔して、時折開かれるパーティーなどでエストニア人のESTO-ITON社員の家族とも友好を深めています。
既に彼らも優奈とユーリーの婚約を知っていますし、結婚式の披露宴にも来ることになっているんです。
正式な招待状は9月の初旬、結婚式の3か月前に出すことにしています。
勿論、私の招待状は日本語ですが、ユーリーの招待状は英語で100通余り、それ以外は全て念話で終わっているのです。
優奈の海外のお友達には、メールでお知らせだけして招待状は出しませんが、ソニンは来るようなことを言っていますので、招待客の数の内に入っています。
既にユーリーの一族の方は、異世界での披露宴の準備に取り掛かっているようです。
異世界での披露宴は一族千人余りが一堂に会することになるだろうとユーリーに言われています。
一族の絆を大事にするからこそ、こうした行事にはこぞって集まるのだそうで、優奈も結婚後はそうした集いには極力参加しなければならないようです。
仕事との折り合いをつけながら参加するということでユーリーの了承は得ています。
結婚式の予定は、ホテル側のコンシュルジュと打ち合わせも済んでおり、式次第はほぼ出来上がっています。
尤も披露宴の方は、出席者の状況で変わりますが、多少の演芸披露なども企画されていますし、参加者からの要望も聞いて対応するようです。
既にユーリーの一族からは演奏をしたい旨の話が来ています。
さて、私の友人たちはどんな芸を披露するのでしょうね。
7月に入ったなら、事前に理子と愛ちゃんにも口頭でお知らせする予定ですので、それから話が来るかもしれません。
コンシュルジュからは、優奈の歌や演奏を入れてはどうかと提案があったので、ユーリーと二人での合奏にすることにしました。
ユーリーがピアノ、私はヴァイオリンです。
実のところ、10月8日の理子の結婚式でも歌と演奏の両方を頼まれています。
ために理子の結婚式ではエレクトーン演奏と歌を披露することにしています。
まぁ、先の話は別にして、午前8時半に両親が出かけると、私も外出の支度をします。
この外出では変装をしません。
先日購入したばかりの自家用車ベンツの四駆ブラバスⅡを駆って、ポートアイランドの建設現場に向かいます。
この車結構高いんですが、オフロードに向いているのと搭載容量が大きいので購入しました。
まぁ、似たような性能を持つ日本車もあったのですけれど、一番気に入ったのが魔改造のし易さでした。
日本車は構造材の強度が割合ギリギリに仕上げられているのですが、ブラバスⅡは鷹揚に作られていてそもそも若干の余裕があったのです。
別途新居ができたら、市街地走行用に燃費のいい国産車も購入予定です。
今のところは、実家に間借りですからね。
優奈の車二台を置くスペースは流石にありません。
月ぎめの駐車場も近くには少ないので無理はしないことにしているのです。
ポートアイランドの建設現場は目下建設工事の真っ最中。
依頼主ということで、週に二度ほど工事の進捗状況を確認に行っていますが、結構頻繁に顔出ししても今のところは業者さんから嫌われてはいないようです。
担当者や現場責任者が笑顔で迎えてくれますので・・・。
どうも彼らはミラクル・ユーナと会ったり、話をすることがとても嬉しいらしいのです。
どうやらここにも隠れファンが居たようですね。
ひとしきり現場を見せてもらうと同時に、優奈の特殊能力で既に出来上がった基礎部分や完成後は外見から見えなくなる構造部分などの確認をしていますが、大きな瑕疵(かし)は見当たりません。
まぁ、溶接などで多少の不備(主として若干の強度不足)も有ったりしたのですが、法令上は許容範囲に収まっているので認めるしかありません。
でも、関係者には内緒で優奈がその都度付与魔法で強化しているのです。
既に3階部分までの鉄骨構造の組み立ては終わり、コンクリートの注入が間もなく始まるとともに4階以上の階の鉄骨組み立てが始まるようです。
既に基礎部分と免震構造の機器設置は完了していますが、現在は上部構造組み立て中のために補強材が地階部分に施され、工事の完工で撤去される予定です。
午後10時半までに現場確認を終えた後、今日は、姫路に向かいます。
姫路にある家畜保健衛生所に医師免許の届け出を行い、開業予定の通知もしなければならないのです。
正式名称は『兵庫県姫路家畜衛生保健所』であり、中国自動車道のすぐそばにある結構山の中の施設なのですが、ここには二年に一回は免許登録手続きのために出頭しなければなりません。
ネットで調べた上で必要書類も準備して本日初登録です。
受付で迎えてくれたのは少し年増のお姉さま。
でもとっても親しみのある笑顔で接してくれましたので、凄く好感が持てました。
無事に登録を済ませたので、10月開業に向けて一つ進んだ気がします。
姫路市内からの帰り道、ドライブインで食事を済ませたのですが、変装していないために周囲から注目されサインを強請られました。
一年以上もマスコミとはご無沙汰なので、もうすっかり表舞台から退場したつもりでいたのですが、未だにミラクル・ユーナの印象は強い様ですね。
やむを得ないのでサインに応じていたらあっという間に目の前に列ができていました。
最近はとにかくスマホによるネット情報が素早いですね。
ふと窓の外を見ると、割合広かった駐車場がほぼ満杯でそれでもなお多数の車が入ろうとして道路に列を作って待っています。
なんだか優奈の存在が道路の混雑の原因になっているみたいなのです。
止むを得ず、30分だけと時間を限定して一生懸命にサインをしまくり、なおも残る人たちを置いて一目散に逃げました。
別に悪いことはしてなんかいないのに、もう逃亡するしかないですよね。
優奈にも予定があるんです。
ちょっとしたハプニングで予定より遅れましたが、続いて神戸三宮ベンチャービル5階にある神戸獣医師会を訪れて、獣医師会に入会しました。
日本獣医学会には既に学生会員として入会していましたが、今度は一般会員としての手続きが必要になります。
獣医学会の入会金はさほどでもないのですが、獣医師会の入会金は結構高いですから、個人開業の方は資金がない限りちょっと入会を躊躇するかもしれません。
某地域の入会金は50万円で、年会費が3万円なのだそうです。
獣医師がそれほど儲かる商売とは必ずしも思えないのですけれど、きっと儲ける方もいらっしゃるのでしょうね。
優奈の場合は、資金面に問題はありませんので、情報収集先として、神戸市獣医師会、それに日本獣医学会に所属することにしました。
別途日本薬学会にも入会手続きを進めているところです。
一応、動物薬学の方ですけれど博士号を取得していますし、インフルエンザワクチン及びYUNAペスト抗菌剤で有名になっていますので多分入会資格に問題はない筈です。
それ以外の学会等についてはその都度必要に応じて考えることにしています。
医師会については医師の資格がある者しか入会を認めておりませんので、優奈は入会できませんから、必要情報は父か母から入手しようと思っています。
神戸獣医師会の手続きを済ませて家に帰ると午後4時半になっていました。
家に帰るとまず愛用のPCでメールの確認です。
それから獣医関連の情報をネットで検索しているとあっという間に午後6時です。
早ければ両親が揃って帰る時間ですが、今日は少し遅いみたいですね。
結局両親ともに7時少し前に帰宅しました。
それから加山家のお食事です。
今日の夕食は、サバと大根のお煮しめに野菜サラダ、少々の付け合わせのお惣菜にご飯と味噌汁です。
加山家の食事は栄養とカロリーを考えつつも意外と質素な食事なんですよ。
両親も50歳を超えていますし、祖父母は米寿も近いんです。
そんな中に若者向きな食事は中々出せませんよね。
夕食を終えて、午後8時半には部屋に戻り、父が入浴した後に優奈がお風呂なのです。
そのあとに母が入り、マリアが最後に入ります。
祖父母は夕食前の夕刻にお風呂を済ませているのです。
お風呂の後は少し休憩した後で、読書又はネット検索の時間です。
午後11時ころまで過ごした後で、室内灯を消して麻生山に跳びます。
麻生山の秘密基地で概ね2時間から3時間ほど実験などを行った後、実家に戻ってベッドにダイビング。
三日に一度、北極と南極に行く時間もこの時間帯になりますね。
本日の就寝時間は午前1時半でした。
おやすみなさい。
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