第192話 20-7 成人式、東京マラソン、ソウルマラソン

 普通とは言いながらも毎日暇なしで、翌日1月10日は優奈の成人式なのです。

 武蔵野市文化会館で行われる式典は、午前10時に開場、式典開始は1030、終了は1220の予定です。


 参加する義務はないけれどこれも一つの区切りであり、晴れ着を用意してくれた祖父母のためにも出席して写真を送ってやらねばならないと思っているのです。

 そのために、式典の終わった後1400から同級生で成人式を迎える親しい人たちと駅近くの写真館で記念写真を撮ることになっているのです。


 マンションから武蔵野市民文化会館まで3.2キロ。

 歩いて行ける距離ではあるけれど、着物を着て歩く距離ではありませんよね。

 当日は、自分でヘアセットをして、化粧をし、着付けをしてからタクシーで式場に向かいました。


 友人達とは、ホールの受付付近で10時05分に落ち合うことになっていました。

 一人が少し遅れてきたのですが、10時10分には、中央前方寄りの席に陣取った日本*医生命科学大学の一団でした。


 和服姿も居れば洋装姿もいます。

 どちらかというと雑多な集団ではあるけれど女性ばかりなので華やかです。


 日本*医生命科学大学からは他にも来ており、何とはなしにそれらの集団も合流して結構な規模になっているようです。

 どちらかというと2回生は少なくて、1回生がかなり多いのですが、その理由はと言えば、日本*医生命科学大学も浪人生が結構多いからなのです。


 式典自体は大したものではありません。

 市長の挨拶や来賓祝辞に加えて、新成人代表の挨拶があるぐらいでしょうか。


 その後、市役所の人が出て来て種々のお約束を説明する勉強会もあるし、地元の若者主体による余興もあります。

 概ね2時間、比較的退屈な時間ではあったものの、まぁ、官製の式典ですからこんなものなのでしょうね。


 市からお祝いの記念品やら何やらを戴いて、最後に市長を交えて何度かに分けての撮影会です。

 市長さんは若い人に囲まれてそれなりにご満悦だったようです。


 その後、優奈達12名は、近場のくら寿司まで歩き、晴れ着が汚れないような昼食を食べてから、タクシーに分乗して、事前に予約した写真館に向かい記念写真を撮ってからお別れしました。

 当然、アバンチュールは、何もなしですよ。


 というよりも優奈はそう言った機会を避け回っているし、ひょっとしたら結婚披露宴二次会での大島、吉本の数少ない機会を潰しちゃったかもと思う優奈ですが、男女の出会いは運命と言うものがあるならば、少々のことがあっても、いな、どんなに邪魔が入ってもいつかは出会うものと思っています。

 だから当座はそのような出会いは気にしないでおこうと思っているのです。


 少なくとも女が酔っている時に、それに付け込むように近づいてくるような男なら排除すべきと思っています。

 優奈はアルコール耐性がかなり高い様です。


 披露宴の二次会では、カクテルを結構飲んだのですがほとんど酔ってはいませんでした。

 或いはウワバミかもしれません。


 それに自分で必要となれば血中アルコール濃度は簡単に減らせます。

 だからどれほど飲んでも実際に酔うことは無いだろうと思うのです。


 その意味では、飲み会も余り面白いものではないですね。

 まぁ、酔った人の様子や馬鹿話を聞いているのも、人によっては隠れた本性が出ることがあるから、それなりに面白いとは思っています。


 優奈に限って言えば、一人で酒を飲む楽しみはほとんどないと言えるのでしょう。


 ◇◇◇◇


 1月末からは、後期定期試験が始まり、同時期に入試も入って休講があるくらいで変わった話はありません。

 1月中旬以降は優奈にとっては、さほど興味のある話題もありませんでした。


 2月27日には東京マラソンが予定されており、招待選手としての招請状も来ています。

 同様に3月開催のソウルマラソンも招請状が来ているのです。


 後期定期試験は、いつもの通り満点でクリアした優奈です。

 教授陣も特段優奈を困らせてやろうというつもりは無い様ですね。


 むしろ優奈が、引き続き提出する質問で教授、助教授、講師たちを困らせているのです。

 優奈専用の質問票は、このところ99%程度の確率で回答することができなくなっています。


 むしろ優奈の質問の一つ一つが研究論文の対象になりそうな課題なのです。

 一つの授業について1問としても1日に2乃至3門、年間200日程度の授業で400から600の質問が溜まることになるのです。


  ◇◇◇◇


 2月26日、都庁で東京マラソンのエントリー手続きを終えて、京王プラザホテルにチェックインしました。

 優奈の名前と顔は既に知っているので、ホテルマンたちは笑顔で優奈を迎えてくれました。


 翌朝27日、氷雨の降る中でのマラソンは、走る前は相当に寒いはずです。

 そうは言いながら優奈は比較的薄い生地のコスチュームで耐えています。


 それこそ身体を内部から温めていると寒くはないのです。

 定刻にスタートし、国立競技場までの42.195キロ。


 優奈は1時間53分51秒でゴールインし、昨年のユージーン世界陸上に引き続き、またも世界新記録を樹立したのです。

 これにより1位の懸賞金1100万円、更に世界新記録のボーナス3000万円、併せて4100万円を手にしたのです。

 優奈の世界記録更新は、もうほとんど当たり前の雰囲気となっているのです。


 トラック競技やフィールド競技に限っては常時ではないのだけれど、マラソン競技に関しては間違いなく走る都度早くなっている印象があります。

 但し、東京オリンピックの際は、30度を超える猛暑の中で流石の優奈もタイムが悪くなっていたのですが、それでも2時間を切るタイムで走り切っていた。


 その時は世界のマラソン競技者でも強者と呼ばれる者が軒並み途中棄権して脱落し、残った者も全員が自己記録を更新をできなかったという非常に珍しいレースでした。

 何れにしろ、優奈は初マラソンからずっと2時間を超えたことがないという稀有のランナーなのです。

 そうして男女を問わず、未だに2時間を切るランナーが優奈以外に現れていないのも現実なのです。


  ◇◇◇◇


 3月に入って六回生の卒業が近くなりました。

 優奈が一回生の時に各部の部長若しくは代表や世話役であった人は、落第していなければこの3月で卒業なのです。


 そうして4月には優奈が三回生になります。

 時の経つのは早いものですね。


 特に優奈のように手掛けているものが、徐々に増え続けると特に時間が経つのが早いのです。

 最初は、精々、陸上競技の種目が増えるだけだったのが、合気道に手を出し、音楽に手を出し、馬術に手を出し、水泳に手を出し、柔道に手を出して、そのほかにも盛んにラブコールが続くものがあるのです。


 元々、自ら意図して手を出したのは、陸上と合気道ぐらいなものなのですが、何故か他の事柄も優奈に関わってくるのです。

 日本*医生命科学大学の野球部がそうですし、プロ野球の始球式へのラブコールも未だに多いのですよ。


 今のところ都合がつかないことを理由に断っているのですが、最近では数か月前から打診が来るのが巨人と西部なのです。

 西武球場は所沢にあり、武蔵境から電車を乗り継いで45分前後です。


 車でも混んでなければ概ね50分コースでしょう。

 後楽園も電車で50分足らず、車では高速利用で40分程度で到着できます。


 千葉ロッテマリーンスタジアムへは、車で高速を使っても1時間強、電車では時間帯にもよるけれど最寄り駅の海浜幕張まで1時間半ほどかかります。

 更に神宮球場で30分前後、横浜スタジアムで1時間20分程度なので、在京球団については神戸と同じルールを適用すれば何処へでも行けることになってしまいます。


 更には大学野球や高体連の予選も多いので、これらに対応し始めると土日が殆どなくなる可能性があるので、取りあえずお断りしている状況なのです。

 単なる色物企画にしか過ぎないから、断ったからと言って何ら支障は無いですよね。


 3月1日にはHALSを通じて、韓進プロダクションに新曲5曲を送ってもらいました。

 同時に大橋美空にもHALS経由で2曲の新曲をプレゼントしています。


 春季休業中のソウル公演も前回と同じオリンピック体操競技場を使って行われる計画であり、今回も三日間の公演です。

 但しこちらの都合で優奈が参加するリハーサルは1日だけにしてもらっています。


 優奈にとっては、必ずしも公演が主ではないことをソニンにもわかってもらうためでもありました。

 そうして翌年(2023年)は、さらに厳しく2日公演若しくはリハーサルなしになる可能性が高いんです。


 ◇◇◇◇


 関東学連春季オープンでは、タイムレースであるけれど、それ故に多種目への出場が可能なのです。

 その点について事務局に確認したところ、優奈が出場するのであればできるだけの便宜は図るという回答を得ているのです。


 端的に言えば、トラックとフィールドの重複許容及び集合時間の弾力的運用なのです。

 3月中旬までに行ったことと言えば、東京陸協に対して、TOKYO Combined Events Meet 2022【東京陸上競技選手権(混成競技)】と東京陸上競技選手権の申し込みをし、期日までに参加料の払い込みも済ませている。

 これで4月開催の二つの陸上競技大会には出場ができることになりました。


 ◇◇◇◇


 春先に向けての準備も鋭意進めながら、3月19日に優奈はHALSの3人と共にソウルへと向かいました。

 ソウルマラソンは3月20日から、ソニンとのデュエット公演は3月22日から三日間であり、25日には帰国する予定です。


 因みに今回はテレビ局への出演予定はありません。

 一方で、SBSは三月公演の放映権を昨年の5割増しで獲得していました。

 SBS以外にも2社ほど問い合わせがあり、共同ではなく独占中継を望んだために競争入札となり、SBSが15億ウォンで放映権を獲得したのです。


 HALSは純益の45%までの契約を新たに造り、優奈にはこれ以上は要求しないと宣言した。

 HALSは年2回の公演だけで1億円以上の利益を上げることになり、それ以上の欲はかかないようにしたのです。


 ソウルマラソンでは、優奈は1時間53分28秒で優勝、世界記録を再度更新しました。

 賞金は8万ドルに加えボーナスの50万ドル、合わせて58万ドルですが、例によって税金を引かれて、34万8千ドル(約3800万円)の小切手が貰えたのです。


 デュエット公演については、またまた大成功のうちに終了し、SBSの視聴率もまたまた少し上がったのでした。

 優奈とソニンのデュエット公演は、完全なドル箱路線になっているのですが、放送局にとっても非常に大きなイベントになりつつあったのです。


 25日に帰国すると、翌日には初めて出場する関東学連春季オープンでした。

 過去のエントリー・リストを調べたところ、一般、大学生、高校生合わせて延べで女子は357名、実数で284名の人がエントリーしており、多い人でも三種目出場ぐらいのようです。


 そこにリレー、3000m障害及び10000m競歩を除く15種目に出場しようというのですから、当初事務局は随分と慌てたようです。

 尤も、名前を確認して、ミラクル・ユーナならばあり得るかという話になったようです。


 出場種目が多いので参加料金だけで12000円になってしまいました。

 今回の場合、エントリー人数が延べで女子540名ほど、エントリー実数は430名ほどになるのですが、当日出場できない者などが1割程度として概ね400人程度の出場者がいるだろうと思われるのです。


 これに男子を含めると千人規模の大会となりますよね。

 このため、メインスタンドは色とりどりのジャージやベンチコートで半分ほども埋まっています。


 まぁ、なんだかんだで手を抜きながらも、世界記録に肉薄する記録を出すとその全てが大会記録となり、普段はほとんど来ない観客が数千人も集まって優奈が出場するたびに歓声を上げて盛況ぶりを見せました。

 インカレで普段寂しい競技場に慣れている大学生たちはある意味で驚いているのですが、その分テンションも上がっていたようです。


 メインスタンドは、出場者に開放しているため、観客はその他に回ったのですが、バックスタンドで2750名、サイドの芝生スタンドに2000名収容できるところへ、推定で4000名ほどの観客になり、関東学連春季オープン始まって以来の出来事でした。

 これはネット情報でミラクル・ユーナの出場競技大会が流されたためなのでした。


 関東学連のエントリー・リストが出されるとすぐにネットでミラクルユーナが出場するという情報が流されたから、誰かは知らないけれど頻繁にネットでデータを監視しているかあるいは自動検索でデータ監視をしている者がいるようですね。

 28日には、神戸へ帰省して、4月2日まで滞在、実家と京都の祖父母に成人式の写真を届けた優奈でした。

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