第132話 14-2 近代五種
オリンピック陸上競技の10日目は、男子のマラソンが予定されているのですが、優奈はそれを見ることはできません。
女子近代五種に出場するからです。
近代五種出場者は全部で38人です。
午前8時からフェンシングですが、会場(東京体育館)に6つのピストが置かれ、一度に6試合を行って、出場選手全てが総当たり戦を行うのです。
つまりは一人が37試合を行うわけですが、正規の時間(3分×3セット;15点先取)でやっていると選手の体力が持ちません。
そこで1分間1本勝負とし、勝ち負けを決めるのです。
相打ちの場合、時間があれば再試合、なければ両方負けとなります。
優奈の装備は特注品であり、7月半ばにもらってシャドウ練習はしていました。
そうして本番が始まり、多くの観衆が見守る中で優奈は勝ち続けたのです。
優奈の試合は、全試合が僅かに3秒以内で終わっています。
5試合を過ぎた頃、各国のコーチが種々の指示をしてみたが全くダメであった。
開始と同時に突っ込む方式は、エペを撥ねられ隙ができたところを確実に突かれていた。
開始と同時に間合いを開けた者は素早い動きで追いつかれ何もできずに敗退。
終わってみれば優奈が独り勝ちの全勝でした。
一人の選手が全勝という例は非常に珍しいらしいのです。
何れにしろ、優奈はフェンシングで1312点を獲得したのです。
1235から同じ会場のプールで水泳なのです。
優奈の場合、1分48秒58をエントリー・タイムとしたので、最終組の7人でスタートです。
今日は遠慮なく泳げるので全力でも良かったのですが、念のために95%程度の力で泳いでみました。
結果は1分42秒08秒でした。
勿論、女子水泳200mの世界記録であるし、男子の記録にも0.06秒差と肉薄していたのです。
ちょっと頑張れば男子の記録も追い抜いてしまいそうですね。
加点があって優奈の点数は1575点でした。
合計得点は、2887点となったのです。
この時点で当然に大騒ぎなっていました。
これまで優奈の五種競技のデータはほとんど無いに等しく、フェンシングの力量も、泳力についても非公式情報ばかりであったのですが、ここにきて明らかに噂以上の強豪であることが明確となり、フェンシング界並びに水泳界が注目するに至ったのです。
1435から馬術ですが、馬場は世田谷区用賀にある馬事公苑であり、選手全員が大型バスで移動、馬事公苑で着替えて馬の抽選になります。
馬の抽選が終わると競技の20分前から試乗して準備をし、競技開始で12個障害(ダブル障害・トリプル障害×各1を含むので、実質15個)を所定時間内に飛越する競技です。
優奈の場合、20分あれば馬との意思疎通は十分なのです。
クレアールと名付けられた馬は利口であり、優奈と何をすべきか、そしてどうすべきかも十分に承知していました。
後は、如何に優奈がしっかりと乗っていられるかどうかだけなのです。
何しろクレアールがすべての障害を跳んでくれるのですから、優奈は単に乗っていればいいだけです。
優奈とクレアールは時間内にすべての障害を何の減点もなしに飛び越えていました。
優奈の得点は満点の1200点です。
この時点で優奈の得点は、4087点でした。
再度、全員が東京体育館に戻り、ランニングの用意をして待機します。
1800から射撃及びランニングのコンバインド競技が行われます。
陸上競技場の中に設置された射撃場入り口からスタートするのですが、これまでの三種目の点数によってハンディキャップが与えられ、上位程早くスタートすることになります。
優奈は断トツのトップであり、他の選手とは2000点以上の差ができているのです、
4点1秒なので500秒以上、10分近くの差がついたハンディキャップレースとなってしまいました。
余程のアクシデントが起きない限り、優奈の優勝は間違いないでしょう。
優奈は射撃も速いのです。
射撃位置について10秒以内に5つの標的を撃ち当てる。
射撃に10秒足らず、千mに2分40秒ほどかけて、再度の射撃、これを繰り返して、ゴールに入ったのは8分28秒後の事です。
最終得点は2968点となりました。
当然のことながらこの得点は歴代一位の記録でした。
そもそも3種目合計で4087点という得点も前代未聞であり、これがために2位以下は全員がマイナスの点数になってしまったのです。
何しろ2位の者がスタート時点でつけられたハンディキャップは9分48秒であったのです。
従って、本人はスタート時点で2分42秒しか余裕がなく、これを過ぎると毎秒4点が減らされるのです。
一般のアスリートでは千mを三分前後で走ることができるけれど、仮に最初の射撃を10秒で成し遂げたにしても1周目途中からマイナスの対象になるのです。
射撃2回とランニング2回で最低でも概ね8分の時間がかかるけれど、それだけで1920点のマイナスになる。
2位のアデール・キャラハンは、スタートしてからのネットタイムは13分9秒でしたが、グロスでは22分57秒、すなわち10分27秒分の減点があり、点数はマイナス496点であった。
3位以下は言わずもがなの結果となりました。
東京オリンピックで、優奈は19個の金メダルと、銀、銅のメダルをひとつずつもらったことになります。
更には、馬術大会や、女子水泳に出場できたなら間違いなく金メダルだったと評価されたのは当然のことでした。
その日午後7時から新国立競技場で閉会式が開催されました。
優奈達も少し遅れて閉会式に参加することができました。
因みに東京オリンピックでも多額の賞金や報奨金が出ました。
JOCから日本人選手が取得する金メダル一個について800万円、銀メダルで400万円、銅メダル200万円となっており、優奈の場合かなりの額になってしまいます。
また、競技団体である陸連から金メダル一個について2000万円、銀メダル800万円、銅メダル400万円が報奨金として支給されます。
近代五種については、そのような制度がなかったのですが、何か連盟で考えているようです。
もう一つ、マラソンについては日本記録を更新した場合に一億円と云う副賞が以前はあったのですが、既にハワイマラソンに最初に参加した時にいただいており、それからオリンピック開催までの特別処置でしたので、基金は無くなっていました。
何れにしろ、19個の金メダル等でJOCから、1億5800万円、陸連から3億9200万円の額が出るらしいのです。
JOCからは1か月後、陸連の方は財源の問題で今後3年間の分割払いになるようですね。
優奈はこれでまた税金の心配をしなければならない様です。
一応、控除は少しあるようですけれど、額が額だけに多少の控除では有って無きが如しなのです。
高々500万か800万程度の基礎控除では、税金がごっそり取られることに変わりはないですね。
〈まぁ、新車分ぐらいは控除されるからその時に考えましょう。
今回は世界新記録でもボーナスは無しだけれど、今は蓄えが十分にあると思うので格別にお金は要りません。
世界陸上ではまた出るのかな?
今度は2021年に米国だけれど、出場するかどうかは勉強との兼ね合いだなぁ。
情報では8月14日から23日の予定らしい。
夏休みだったら行ってもいいかな?〉
因みに賞金・報奨金の類は総額で5億5千万円、今年中にもらえるのは2億9千万円で、概算で税抜き後の預金残高は12億円近くになる筈です。
7800万円のマンション購入金額以上の収入が入って来るとは流石に考えていませんでした。
まぁ、分割払いの分1億3千万円は直ぐには入ってこないのだけれど・・・。
万が一を考えて遺産相続の問題を避けるために、公正証書の遺言書を作成しようかと本気で考えている優奈です。
前世では、預金の利息はないも同然で手数料にもならない額でしが、優奈のいる世界では、少ないながらも0.8%ほどの利息がつきます。
仮に10億円を預けると年間800万円ほどの利子がつくことになりますよね。
優奈の生活費と学費が概ね600万円ほどになると見込んでいますから、預金は余り目減りしないことになります。
多分東京マラソンでもさらに賞金が獲得できるだろうから、また預金残高は増えることは有っても減ることはないかもしれません。
因みに東京マラソンでは、世界記録3000万円、日本記録500万円、大会記録300万円(男子のみ)のほか、1位800万円、2位400万円、3位200万円、4位100万円、5位75万円、6位50万円、7位40万円、8位30万円、9位20万円、10位10万円の賞金が出るようです。
まぁ、余程の事がなければ、800万円は貰えるでしょう。
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