第104話 12-10 放送局巡り in Seoul(3)
35分の生放送を終えて、次は8時半からFM TBS で生放送の予定。
此処はディレクターとの打ち合わせで内容が変わるかも知れないと言うことだった。
案の定、WBSとの対抗上、別の歌を一曲だけ歌ってくれとTBSから要望が出たのです。
リスナーからのリクエストは無いので、スタジオの一つを借りて30分の練習時間をもらい、新たなオリジナル曲『어머니(母)』を演ずることにしたのです。
この曲は、ソニンに渡した3つの曲のうちの一つなのです。
この曲は、トロットに近いけれど、テンポの取り方と旋律が別のものであり、ジャンルとしては全く別のものと考えても良いものでした。
どちらかというと壮年期の男女を購買層の対象にした歌なのです。
ユーナとソニンは此処でも30分の練習で新曲を見事に演奏して見せたのです。
先ほどと同じく、ヤンは放送局のマスターテープからのダビングをせざるを得なかった。
放送局も快く応じてくれたので非常に助かっているところです。
放送局側もメリットは十分にあった。
ユーナという音楽界の逸材をただで出演させることができたからである。
マネージャーのヤンは、以後すべての放送局と追加の契約を交わし、録音及び映像権を共有できるようにしたのでした。
従って、必要な場合、ソニンサイドは放送局に断らずに映像と録音を使用できるようになったのです。
9日の放送直後から、RBSとTBSの二つの放送局には相次いでユーナとソニンの歌がリクエストされる様になり、翌日昼過ぎにはその傾向が急速に増して行った。
何しろ何処に行っても聞けない演奏なのである。
聞きたいと思えば放送局にリクエストをするしかなかった。
10日の夕刻にはその傾向がより明確になったため、同日16時以降に収録のあったKMTV、JTBC、SBSでは、二つの新曲を必ず演奏するよう要請されることになりました。
その上で更に別の歌のカバーも要望されたのです。
ユーナとソニンがやむなくカバー曲で選んだのは、他の局から要請があった場合に備え、
1. 소찬휘 (So Chan Hui)の「Tears」
2. シークレット・ガーデン(アイルランド/ノルウェー)の『You raise me up』、
3. TAEYEONの『Fine』、
4. 아이유(IU)の『Lost Child (Mia)』
5. Polina Gagarina/Aida Nikolaychukの『Lullaby』
6. 鄧麗君の『月亮代表我的心』
7. 『뱃노래・자진뱃노래』
8. 『강강술래』
9. 『뱃노래』
10. 『사랑 없인 못 살아요』
11. 『내일(Tomorrow)』
12. 『해운대 엘레지(海雲台エレジー)』
13. 『사랑과 계절(Love And Seasons)』
14. 하늘(Sky)
など全部で14曲を用意しておいたのです。
更には、優奈が用意していたオリジナル「구름(雲)」も念のため優奈と共に若干の練習を行っておきました。
11日正午、音楽の殿堂にある野外劇場で、ソニンとそのバンドさらに優奈が揃ってミニコンサートを始めました。
主催者の挨拶とソニンの簡単な挨拶の後、優奈がエレクトーンを弾き、『아침의 노래(朝の歌)』の明るい面を強調すると前奏の段階から人が集まり始めた。
この野外劇場での演奏会はスポンサーがついての公演であり、席はない代わりに周囲全てが無料の観客席となる。
人々は立ち止まりあるいはその場に
だが、この日はエレクトーンを弾いている優奈に目が留まり、次いでソニンに目が移って、誰もが聴いて行こうかと花壇の縁に腰を下ろしたりしてその場にとどまるのである。
2曲目『홀로아리랑(一人アリラン)』を演奏し、3曲目の『태평가(太平歌)』をデュエットで始めた頃には、音楽の殿堂に来ている人全てが集まったのではないかと思うほどの人だかりができていた。
次いで『사랑 없인 못 살아요(愛なしに生きられない)』と『강원도 아리랑(江原道アリラン)』を歌って概ね開始から40分、一応これで終わる予定であったが、観客がアンコールを求めた。
やむなく、優奈のエレクトーン伴奏でオリジナル曲『포옹(抱擁)』を歌った。
この曲は今のところ優奈しか伴奏ができない。
バックのバンド連中はそれぞれの譜面で目下特訓中であり、人前で演奏するには今少し時間がかかる。
だが、この演奏を聴くと更にアンコールの大合唱が始まった。
優奈とソニンは苦笑しつつも言った。
「では、もう一曲だけ演奏します。アンコールはもうこれだけですよ。
これ以上は此処の管理人に叱られます。』
優奈とソニンはオリジナル曲『어머니(母)』を演奏し、喝采を浴びた。
13日は、朝からソニンと一緒に市内観光なのです。
光化門付近のバス停からソウルシティツアーバスの都心・古宮コースに乗り2時間コースを楽しみました。
ソウル北部にある旧跡を訪ねて歩くツアーであり、優奈もソニンもそれなりに変装はしていたけれど、さほど凝ったものにはしていなかったのですぐにばれてしまいました。
一番最初に気づいたのはガイドさんでした。
ガイドさんは、優奈もソニンも良く知っていたのです。
いずれにしろ、同乗者にサインを求められ、土産物店で購入した絵葉書の裏にサインをねだられました。
一人で5枚、6枚と頼むので優奈もソニンも結構忙しい思いをしたのです。
昼食は、光化門広場近くのホテル、フォーシーズンに入り、連れのメンバーと共に楽しい昼食をしました。
優奈だけではなく佐伯女史他2名、ソニンのマネージャー他バンドマン等スタッフ6名がずっと一緒だったのです。
12名の団体さんは昼食後に南山タワーの麓まで移動、ロープウェイで山頂駅まで行き、タワーに登ってソウル市内の眺望を楽しみました。
タワー自体の高さはそれほどでもないのですが、山頂にあることからタワーの展望階は東洋一の高さを誇るのだそうです。
確かに眺望は良く、夜景を眺めるのには最適の場所でもありそうです。
夕方からはテレビ局の出演があるので午後3時にはホテルに戻りました。
13日のKBSの生放送では、とうとう新曲を要求され、やむなく구름(雲)を披露するとこれもまた評判になってしまいました。
それ以後の出演は必ずこの三曲がセットで要求されたのです。
無論、放送局でも時間の見直しがなされました。
精々1曲か2曲のつもりが増えてしまったのですから調整が大変なのですけれど、リクエストの情勢を見ると他の出演者を削ってでも視聴率を上げることが優先されたのです。
ユーナとソニンが出演すれば、視聴率が間違いなく上がったのです。
優奈がその都度衣装を替えて出て来るのですけれど、洋装でありながら韓服のソニンに合わせたような衣装であり、その体型と整った顔は十分にカメラのアップにも耐えるし、歌の変化に合わせた表情の変化は見応えがあるのです。
特に、13日のKBSへの生放送では、韓服によく似た衣装を着こなし髪型もカツラで凝ったものにしていたので会場から拍手喝采を浴びました。
司会が確認してみると奈良時代の日本の宮廷女官の扮装であると言う。
ソニンへのお土産として持って来たものと優奈から説明がありました。
色合いの鮮やかさはソニンが着用する韓服とマッチしており、一種独特な雰囲気になる。
その二人が古の歌にも通じるパンセリの뱃노래・자진뱃노래を歌うとそれだけで会場に居合わす者すべてが歌に引き込まれ感動が沸き上がっていた。
その上で三曲のオリジナル曲が続けられると、壮年以上の年代の者たちはみんな涙目になって震えていた。
若者たちでさえ感動する曲である。
パンセリに至る道筋を示唆していながら現代風にアレンジした作風が人々を感動させていた。
僅か一週間の間に3曲の新曲が披露され、それが全てネットで大評判となり、早くもCD作成のためにプロダクションが動き始めていた。
しかもその作詞作曲が全てユーナであると言うのだから、韓国歌謡界は驚愕した。
何とかユーナとつなぎを付けようとするプロダクションが相次いだが、優奈の周りには常に三人のガード・ウーマンが付いており、どうやってもそれを切崩すことはできなかった。
頼みの綱は、ユーナと親しいソニンだけであった。
このため、多くの団体がソニン及びそのマネージャーに群がったが、いずれも良い返事はもらえなかった。
ソニンのスタッフでさえ金の卵ともなり得るユーナをつなぎ留めておくのにどうしたらよいのかを模索中であり、とても他人のことに構っている余裕はなかったのである。
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