第3話の2 伝えたかった気持ち(解答編)
本当はこの気持ちを彼に伝えるつもりはなかった。きっと迷惑をかけてしまうから。でも、もう押さえることもできなくなっていた。
だから私は、彼に手紙を書くことにした。それも、暗号で。もし、伝わらなかったら、それはそれでかまわない。これまでの関係と何も変わらない。
でも、もし彼があの答えに気づいたなら、私の言葉で伝えたい。
そう思っていた矢先、その日のお昼休みに突然呼び出された。もしかして、もう手紙の内容が解き明かされてしまったのだろうか?
思いがけない展開にドキドキしながら、呼び出された校舎裏に向かうと、彼が既に待っていた。
「よう、高山。悪かったな、こんなところに呼び出しちまって。手紙の内容、分かったよ。ありがとう」
「なら、私の気持ちはもう伝わってますよね」
「ああ、あの手紙の数字『4/5 10/1 11/3 6/4』は日付を表してるんだよな。下の『 1月2日 4月4日 より』と同じように。1/2と4/4が名前を表しているって分かったら、とっかかりが見えたよ。1月を英語で表すとJanuary。その二文字目がA。4月を英語で表すとApril。その4文字目がI。つまり『AI』になるから『愛より』だ」
ああ、やっぱり先生には全部分かっちゃうんだな。この手紙で私が伝えたかった気持ち。
10月はOctober。11月はNovember。6月はJune。それぞれの5文字目、1文字目、3文字目、4文字目を読むと『LOVE』。これが私が彼に伝えたかった気持ち。
先生のことを好きになってしまった私の、抑えきれなくなった気持ち。
「分かった。おまえの気持ちはよく分かった。伝わってきたよ。本当なら伝えることも許されない、おまえの気持ちは……」
「先生、わたし。私は、先生のことが……」
「高山、僕はおまえの気持ちには応えられない。お前はまだ高校生。僕のクラスのかわいい教え子だ。だからこそ、この一線はまだ越えられない」
ああ、ふられちゃった。でも、気持ちを伝えることができて、そしてその気持ちがきちんと伝わって、本当に良かった。それに先生はまだって言ったよね。
「はい。先生、ありがとうございました。でも私まだ諦めませんから」
「おい、僕の言葉をちゃんと聞いていたか?」
「ええ、まだ応えてくれないんですよね。1月の第二日曜日を楽しみにしててくださいね。私、一途で諦めが悪い女なんで」
いつか、先生が振り向いてくれるような、いい女になろう。私にはこれから先の未来がまだまだある。どんな私にだってなれるんだから。
私の心は晴れやかな気持ちでいっぱいだった。
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