第4話の1 カレンダーに記した想い(問題編)
「なあ、倫太郎。この暗号の意味…分かるか?」
行きつけの喫茶店で、大学時代からの友人と旧交を温め合っていたとき、突然スマホに写った6枚の写真を見せられた。その6枚の写真にはそれぞれ月の違うカレンダーが写されており、よく見たら赤字で数字が書き込まれていた。
「これが暗号だっていうのか?」
「ああ。実はこれ、職場の同僚から渡されたものなんだけど、絶対に解き明かさないといけないんだ」
「職場の同僚って、このあいだ相談してきた例の女性か?」
つい先日、俺はこの友人から恋愛相談をされていた。なんでも、お互い推理小説好きということで話が盛り上がり、良い雰囲気になっている。どうやらお互い両思いの雰囲気は感じているのだが、お互いに奥手なのか、付き合うには至っていないのだとか。
「ああ。昨日も彼女と二人で食事をしたんだけど、そこでおもむろにこの6枚のカレンダーを渡されたんだ。で、この意味分かる?って……」
なるほど。つまりこの写真は、推定両片思いの彼女からのメッセージというわけだ。それは是が非でも解き明かさなくてはなるまい。
「頼む。色々考えたんだが、正解にたどり着けない。倫太郎だけが頼りなんだ」
「分かった。友人からそこまで頼まれたのでは、挑戦しないわけにはいかないよな。ちょっと考えてみるか」
「ありがとう。恩に着るよ」
俺は改めて写真に写ったカレンダーに注目する。カレンダーは全部で6枚。
1枚目は2021年1月のカレンダー。1月2日(土)に①と書き込まれている。
2枚目は2021年5月のカレンダー。5月2日(日)に⑧とある。
3枚目は2021年6月のカレンダー。これには2つ書き込まれており、1つは6月1日(火)に⑤と、2つめは6月5日(土)に⑦と書き込まれている。
4枚目は2021年8月のカレンダー。8月3日(火)に⑥と書き込まれている。
5枚目は2021年9月のカレンダー。これにも2つ書き込まれており、9月3日(金)に②と④が二つ並んで書き込まれている。
6枚目は2021年10月のカレンダー。10月6日(水)に③と書き込まれている。
「これは……、思った以上に難解な暗号だな。彼女はなにかヒントとか言っていなかったか?」
「そういえば、2021年のカレンダーで作ったらこうなったよって言っていたな」
2021年のカレンダーでなくてはいけなかった。それはどうしてだろう?
俺は思案する。
おそらく、この書き込まれた数字は読む順番なのだろう。同じ月のカレンダーに数字が二つ書き込まれていたり、同じ日に数字が重なっているのは、そうせざるを得なかったからだと思う。
そして、2021年のカレンダーでなくてはいけない理由。他の年のカレンダーだと何が違う?
少し考えてピンときた。日付に対応する曜日が変わってしまう。例えば2020年のカレンダーだと1月2日は木曜日だ。
そこまで考えたとき、暗号に秘められたメッセージが分かった。
「ああ、俺にはメッセージが分かった。でも、これは君が解き明かさなくてはならない暗号だよ。さあ、レッツシンキング」
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