第147話 選べるって幸せ
片方が目を離せばもう片方が引っ付いてくる。それだけならまだしも、他の人に見られる危険も顧みずに体を押し当てたり頬へのキスをしありするのである。
「えへへ、お兄ちゃん♡」
「美月、やめてよ」
「やめなーい」
「あ、ちょ……?!」
「妹に欲情しちゃえ♪」
「お兄、届かないぞ」
「届かなくていいの」
「お姉にお兄としたこと話してもいいのか?」
「っ……わかったよ」
「初めからそうすればいいんだよ。ほら、こうやってされるのが好きなんだろ?」
「み、見られちゃうから……」
「ふふふ、耳を触ってるだけなんだけどな?」
そんな感じで弄ばれ続け、注文した料理を受け取った時にはもう体力がかなり吸われている状態だった。
何より、妹相手に下半身を反応させるわけにはいかないため、それを隠すのが大変だったのだ。
まあ、2人の反応から察するに、既にバレてしまっているらしかったけれど。
「お兄、早く来いよ」
「料理が冷めちゃうよ!」
2人に急かされて、食べ物が乗ったトレーを腰を曲げながら運ぶ
彼がもう少しで彼女たちに追いつくというところで、後ろから「少年!」と呼び止められてしまった。
「な、
「莉斗少年に少し用が……って、腰痛めた?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
「どっちでもいっか! とりあえず、そのトレーは妹ちゃんたちに預けて着いてきてくれない?」
「別にいいですけど、何をするつもりなんですか?」
「それは秘密♪」
莉斗が何度聞いても、夏菜さんは頑なに内容を教えてくれない。その様子は確かに怪しいものの、ここまで隠されると逆に知りたくなってしまうもの。
彼は美月に先に食べ物だけ運んで貰うように頼むと、「すぐに戻るから」と言い残して店の奥へと連れていかれた。
「あの、
「少年は特別な客だからさ!」
「特別、ですか?」
「その通り。実は私、整体師の免許持ってて、マッサージ師を目指してるんだよね。明日から時間を限ってマッサージサービスを始めるんだけど……」
「感想が欲しいとかですか?」
「さすがは莉斗少年、察しがいいねぇ♪」
彼女は満足げにウンウンと頷くと、診察室にあるようなベッドを軽く叩きながら「この上に仰向けで寝てくれる?」と微笑む。
「えっと、うつ伏せじゃダメですか?」
「どうして?」
「なんというか、色々と事情がありまして……」
莉斗の言葉に眉をピクっと反応させた夏菜さんは、「その事情っていうのはさ」と言いながら羽織っていたパーカーのポケットからスマホを取り出す。
そしてその画面に映る映像を見せつけると、にんまりと悪い笑みを浮かべながら「これのこと?」と聞いた。
「そ、それは……」
「誰も見てないと思った? 妹ちゃんとこんなこと、していいと思ってるのかな?」
バッチリと撮られてしまっていたのだ。美月と茜がそれぞれ彼の耳を弄って楽しんでいる様子を。
「莉斗少年、私は君に興味を抱いてしまったよ。手伝い、嫌とは言わないよね?」
もはや、選択権なんてなかった。
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