第144話 浜上のお節介
「なるほど、あのお姉さんに
「危険人物リストに登録ね」
「ぐぬぬ、お兄ちゃんに手を出すなんて……」
砂浜に敷いたレジャーシートの上に荷物を置いた一行は、離れた場所に見える海の家の前で呼び込みをしている
「別に手なんて出されてないよ」
「手を出されてないのに、鼻血垂らしたの?」
「それはそれで問題ね」
「初対面なのに……結局、誰でもいいんだ?」
夏菜さんを庇えば、今度は自分に攻撃が飛んでくる。かと言って無関係な彼女を巻き込むわけにもいかないため、
「ボクが夏菜さんを見て勝手に――――――――」
「おーい、少年!」
そんな決意を遮って声をかけてきたのは、まさにこの場にいるほとんどの女子の目の敵である夏菜さん。
彼女は何やらペットボトルの入った袋を持ってこちらに駆け寄ってくると、肩で息をしながら他のみんなに頭を下げた。
「莉斗少年、可愛い子たちと一緒だったんだねぇ」
「過半数は妹ですが」
「なるほど。あとの二人はお姉ちゃん?」
「僕ってそんなにモテなそうに見えます?」
「んー、見えなくもないかな♪」
話の外側で「莉斗のお姉ちゃん……」「莉斗君の姉って……へへっ」なんて言ってる2人は無視するとして、夏菜さんにここまで来てくれた理由を聞いてみる。
「あ、そうそう! クーラーボックスみたいなのも持ってないし、まだ飲み物買ってないよね?」
「そう言えば買ってないですね」
「夏の海は危険なんだから。彼女たちの前で倒れるなんて、情けないことしちゃだめだよ」
彼女はそう言いながら一人ずつによく冷えたアク〇リアスを配ると、「お姉さん、いいことしちゃったなー!」とケラケラ笑った。
「あの、お代は……」
「そうだね。タダであげる訳にも行かないから……1人30円でいいよ」
「そんな安くないですよね?」
「どうせみんなお腹空いたら買いに来るでしょ? お客様が倒れて6人も減るくらいなら、これくらい安い出費だよ」
「夏菜さん……」
夏菜さんは最後に「30円はご飯買いに来た時に払ってねー!」と言い残してから、空になった袋片手に店へと戻っていった。
彼女が店長から怒られたりしないかは心配だが、お節介を焼いてくれるのなら全力で甘えさせてもらうのが莉斗の信条。遠慮は必要ないだろう。
「普通にいい人だったわね」
「敵視する必要は無さそうだね」
「でも、警戒は怠らない方がいいよ」
「お兄も気をつけろよ。一時の感情に流されたら、お姉たちに海に流されることになるからな」
「わ、わかってるよ……」
夏菜さんはそんな人じゃないだろうから心配はないが、それよりも何かを企んでいそうな
誰に流されたとしても、きっと結末は同じになるだろうからね。頑張れ、僕の理性。
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