無口な窓際ぼっち君、実はASMRにハマっていることが隣の席の美少女にバレてしまいました―――彼女はいつでも僕の右耳を狙っている―――
第143話 エレベーターで開くボタンを押しておいてくれる人とは仲良くなれる気がする
第143話 エレベーターで開くボタンを押しておいてくれる人とは仲良くなれる気がする
ホテル内のレストランでお昼ご飯を食べた後、
しかし、彼が水着の上からTシャツを着終えると荷物と一緒に外に追い出されてしまう。「先に準備して待ってて」とのこと。
「ミクも人使いが荒いなぁ」
独り言で文句を零しつつも、後で見られるであろうみんなの水着姿を想像すると胸が踊った。
「問題は
他の4人には素直な感想を伝えればいいとして、実妹にだけはなんと言えばいいのか想像もつかない。
もちろん可愛いだろうし、本心なら愛でたい気持ちもある。しかし、そんなことをすれば隙を晒しているようなものだ。
「かと言って、一人だけ無視する訳にも……」
しっかりと感想を伝えた上で、そこはかとなく意識なんてしてませんよ感を出せる言葉。それこそが今の彼にとって必要なものなのである。
「……まあ、正直が一番だよね」
隙を晒したとて、警戒しておけばみんなの前なら大丈夫なはず。莉斗は心の中でそう呟くと、目の前にある下ボタンを押した。
それから待つこと数十秒で到着したエレベーターに乗り込み、一階を選択してから閉まるボタンを押す。
「ま、待って!」
半分叫んだような声に慌てて開くボタンを叩くと、声の主らしき女性が駆け込んできた。
彼女は一階のボタンが光っているのを確認すると、「ありがとうね」と微笑んで壁にもたれ掛かる。
「あなたも海に行くの?」
「あ、はい」
まさか話しかけられると思っていなかった莉斗は、若干挙動不審に視線を動かしながら頷いた。
何せ、振り向いた時に見えた20代前半くらいの女性は、水着の上から前を開けたパーカーを羽織っているだけの姿だったから。
目のやり場に困るとはまさにこの事。下なんて水着だと分かるからよかったものの、パンツですと言われたら鼻血が垂れそうなレベルだ。
「私、
「えっと、莉斗です」
「もう、ナンパじゃないから警戒しないでよ。夏休み中、そこの海の家でバイトしてるだけのお姉さんだから」
「あ、なるほど」
夏菜さんはにっこりと笑いながら「お腹空いたら覗きに来て」と言うと、片手に持っていた手提げから取り出したメニューチラシを渡してくれる。
「夏菜お姉さんに会いに来たって言えば、店長が1割引きにしてくれるから♪」
「それはお得ですね。覚えておきます」
「ありがとー!」
階層表示が2から1に変わったのを確認したお姉さんは、最後に莉斗の手を握ってから「またね!」と開いた扉から飛び出していった。
「綺麗な人だったなぁ」
そんなことを呟きながら、ポタッと垂れてきた鼻血を抑えていたら、いつの間にか扉が閉まったエレベーターが元の階にまで戻っていて―――――。
「莉斗、何かいいことでもあったのかしら?」
「随分と怪しいね?」
「正直に吐こっか、お兄ちゃん?」
「お兄、情けなすぎるな」
乗り込んできた4人に取り囲まれ、頼みの綱だったはずの葵からすら見放されてしまったことは、また別のお話。
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