第135話 差別、ダメ絶対
もちろん
「茜と葵も必要なものがあったら言ってね」
「はいです!」
「おう……って、なんか距離遠くないか?」
「そ、そうかな?」
ここまで来る間、莉斗はずっと茜から離れて歩いていた。何せ、昨日あれだけのことをされたのだから。
彩音やミクのようなものじゃない。美月に近い襲い方だったせいで、無意識のうちに逃げてしまうのである。
「茜ちゃん、なにか悪いことしたですか?」
「いやいや、そうじゃないよ! ただ、今日は少し離れたい気分かなって」
「私からも離れたいですか?」
「いや、葵はそんなことないけど……」
「差別は良くないです! 茜ちゃんと仲良くできないなら、私も莉斗兄ぃと仲良くしません!」
葵にぷいっと顔を背けられてしまい、その場でガクッと項垂れる莉斗。
さすがは姉想いの妹だ。この状況を何とかするには、気まずくても茜といつも通りでいる他ないらしかった。
「わ、わかったよ。茜、おいで」
「そんな言い方じゃ行けねぇな〜?」
「っ……来てください……」
「ふっ、そこまで言うなら行ってやるよ」
「海なんだろ? じゃあ、日焼け止め買いに行くか」
「あ、うん……」
「ほら、急げ急げ!」
「早くしないと売り切れちゃいます!」
「日焼け止めはそんな人気商品じゃないと思うけど」
2人から背中を押されながら、少し離れた場所にあるお店へと向かう莉斗。
そんな後ろ姿を微笑ましそうに眺めていた彩音とミクは、お互いにクスクスと笑い合いながら3人を追いかけて歩き出す。
「そう言えば、莉斗君って色白の方が好きなのかな」
「昔見つけたエロ本には、日焼けした女の子もたくさんいたわよ?」
「でも、エロと純粋な好きには差があるから……」
「それもそうね。少なくとも、私たちに振り向いてくれてるなら色白寄りよね」
2人とも普段から日焼けはしないようにと気を使っているからこそ、露出しても問題ない綺麗な肌が手に入っているのだ。
莉斗はその努力を知る由もないが、彼女たちはそれでもいいと思っている。努力は誰かに見せてこそだなんて思っていないから。
「で、どんなエロ本だったの?」
「やっぱり気になるわよね」
「ぜひ聞かせて欲しいかな」
「ふふ、印が付けられて所には――――――――」
2人がコソコソと自分の性癖について話しているとは露知らず、双子たちに振り回されている莉斗は何か嫌な予感を覚えて身震いするのだった。
「……風邪かな?」
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