第112話 旅は計画的に
今日のお昼過ぎのバスで家に帰る一行だが、
「ミクちゃん、まさか……」
「今日だけは聞かないでもらえる? 私もあんなことになるなんて思わなかったのよ」
「あんなことって――――――――――」
そう口にしかけた彼女が、床にころがっているビンを見て全てを察したことは言うまでもない。
ただ、一線を超えてはいないらしいのでホッと胸を撫で下ろした。こんな形で置いてきぼりになんてされたくないから。
「お姉ちゃん、昨晩はお楽しみでしたね♪」
「み、見てたの?!」
「動画もあるよ?」
「美月ちゃん?!」
「私だって年頃の女の子だから、そういうことに興味は出てきてるんだよ? もう少し分かりづらくして欲しいなぁ〜」
「つ、次からは気をつけるわ……」
「うん、よろしい♪」
お姉ちゃんであるはずのミクが美月に頭を撫でられているのを眺めつつ、莉斗は既に運ばれてきている朝食の前に腰を下ろす。
他3人もすぐに座ると、みんな揃って「いただきます」と手を合わせたのであった。
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その後は特に目立ったハプニングもなく、バスに乗りこんでそれぞれの家へと帰った。
今度は山じゃなくて海に行きたいなんて話もしたから、それが現実になることも十分有り得る。
そうだとしたら水着を買っておかないと……なんて思いつつ、ミクを隣の家まで送り届けてから自宅の前へと戻ってくる莉斗。
「懐かしの我が家だね」
「2日しか経ってないよ?」
「それでも久しぶりな気がするんだよ」
この旅行を境に、美月は変な関係をやめようと思っていたのだろう。だからこの間、何もして来なかった。
全く寂しくないと言えば嘘にはなるが、兄として妹の成長を心から嬉しく思う。同時に訪れる安心感も相当なものだが。
「ねえ、お兄ちゃん」
「どうしたの?」
鍵を取り出してドアに差し込み、回そうとした瞬間に背後から声をかけられる。
すぐに振り返ろうとするとそっと抱きつかれ、鍵を握る手を掴まれた。
「プレゼントがあるんだけど」
「え、何か買ってたの?」
「ううん、お金じゃ買えないものだよ」
そう言い終えるが早いか、莉斗の首筋に痛みが走る。首だけを動かして確認してみれば、美月が背伸びをして噛み付いてきていた。
「ちょ、何やってるの?!」
「何って、襲ってるんだよ」
「も、もう旅行は終わったじゃん!」
「まだ家に入ってないし」
彼女は「家に帰るまでが旅行でしょ?」と笑うと、手首を回してドアを開けて家の中へと莉斗を押し倒す。
「帰るまでに襲ったから、私の勝ちでいいよね?」
うつ伏せになった彼に覆い被さる美月は、莉斗を押さえつけながら意地悪な笑みを浮かべる。彼がその笑い声に冷や汗をかいたことは言うまでもない。
「いいよね?」
「で、でも……」
「お兄ちゃんは美月に負けたの。大人しく妹に欲情しとけよ、負け犬」
「……は、はぃ」
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