無口な窓際ぼっち君、実はASMRにハマっていることが隣の席の美少女にバレてしまいました―――彼女はいつでも僕の右耳を狙っている―――
第93話 自分が型にハマるより、周りを自分の形に変える方がいい時もある
第93話 自分が型にハマるより、周りを自分の形に変える方がいい時もある
旅行出発直前、『しののん』こと
「……はぁ」
「莉斗、どうしたの? 寝不足?」
「そ、そんなとこかな」
「あ、楽しみで眠れなかったんでしょ。小学校の遠足の日もそうだったものね」
「恥ずかしいから思い出させないでよ!」
「そのせいで寝坊して、急いで走ってきたら水溜まりの上で転んだのよね。みんなの前で謝りながらタオルで拭かれて―――――――――」
「ミク?!」
余計なことを言おうとするミクの口を塞ぎつつ、後ろでケラケラと笑っている
彼が寝不足なのは、もちろん遠足の時と同じ理由ではない。原因は他でもない美月なのだ。
「お兄ちゃん、ちゃんと寝ないと楽しめないよ?」
「……そうだね」
「そんなに見つめないでよ〜♪」
「……はぁ」
昨夜、つい優しさで警戒を緩めてしまったがために、早朝頃まで延々と耳を舐め続けられたのだ。
普段なら無理にでも拒んで追い出したのだが、昨日の彼女に強引さや力任せ感がなく、むしろ愛情を感じるほど優しい舐め方だった。
そのせいでどう拒んで良いか分からず、気が付けば自分の体は本人の意思ですら力を入れられない状態にまでされていたのである。
「ところで、汐音さんって運転出来るんですね」
「どういう意味かな?」
「いや、ペダルに足が届くのかなって」
「身長の低さを売りにしてるのがトップASMR投稿者のしののん様だよ? その程度で生活に支障が出たら困るっしょ♪」
汐音がそう言いながら見せてくれた運転席は、正直少し……いや、かなり変わっていた。
ハンドルの位置はやけに低く、座席の位置は助手席と比べてもかなり高い。
アクセルやブレーキのペダルもそれに合わせた高さに変えられており、まさにロリ大学生専用の運転席だった。
「座席とハンドルは元々高さを変えられる車種を選んだし、ペダルだって相談すれば自分に合ったものにしてくれるんだよ〜?」
「でも、これだと他の人は運転できませんね」
「運転席はしののん専用っしょ? 助手席は……莉斗君専用にしてあげよっか?」
「っ……それってつまり……?」
「ぷっ、顔赤くしちゃって可愛いにゃ〜♪」
彼女が「妹の彼氏は寝取れないって」と言いながら莉斗の肩を叩くと、彩音が「彼氏じゃないから!」と慌てて駆け寄ってくる。
「まだ、でしょ?」
「っ……う、うん」
「ああ、アヤちゃんが可愛すぎる。むしろお姉ちゃんがアヤちゃんをNTRしたい♡」
「だ、ダメだよ?!」
「女の子同士はノーカンだから……」
「あ、ちょ、待っ―――――――――」
その後、パシャッという撮影音と共に「なんちゃって〜♪」と笑いつつ、真っ赤になった彩音の顔写真を見せた汐音が。
「キレちまったよ、お姉ちゃん」
「ど、どうかそれだけは勘弁を〜!」
「どうしよっかなぁ?」
「結構高かったんだからね?!」
「なら、何すべきか分かるよね?」
「は、はぃぃ……」
トランクの中のダミーヘッドを人質にされ、土下座しながら画像を削除することになることは言うまでもない。
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