第91話 女の子との買い物ではコメントが大事
「そう言えば、何を買う必要があるの?」
「そうね、とりあえず新しい服を買おうかしら」
「私も買いたい!」
翌日の買い物に無理やり荷物持ちとして連れて来られた
「美月ちゃん、こんなの似合うんじゃない?」
「ほんとだ! お兄ちゃんはどう思う?」
「あ、うん。似合ってる、かな?」
「なんか反応微妙……」
「り〜と〜?」
「いや、似合ってる! すごく可愛い!」
「えへへ、ありがと♪」
ミクに睨まれて半ば強制的に褒めさせられる形になったけれど、確かに体に当てているだけでも似合うのがよくわかる。
ただ、夏だからといってデニムのショートパンツというのは、少し露出が過ぎるのではないだろうか。
「でも、これの方がいいと思うな」
「ええ……ロングスカートは暑いよ」
「なら、こっちの半ズボンとか」
「小学生じゃないんだから」
「じゃあ、こんなのは――――――――」
そんな風に妹の露出度合いを抑えようとしてみるも、全て「好きじゃない」と跳ね返されてしまう。
果てにはその意図を勘づかれ、「美月のこと、心配してるの〜?」とニヤニヤされる始末。
「美月ちゃん、莉斗をからかっちゃダメよ」
「はーい」
「ふふ、莉斗も心配し過ぎ。せっかくの旅行なんだし、好きな格好させてあげた方がいいわ」
「でも……」
「大丈夫、本当にダメそうなのは私が止めるわよ」
「お、お願いします」
女の子のファッションについて莉斗は無知だ。ここは任せておいた方がむしろいいのかもしれない。そう判断して大人しく身を引くことにした。
「美月ちゃんならこういうのもいいと思う」
「私にはまだ早いような……」
「そんなことないわ。チャレンジよ!」
少し離れた位置にあるイスに座りながら、彼はそんな会話に耳を傾ける。
あそこでニコニコしている妹が兄を襲うような子だなんて、誰も思ってもみないだろう。隣にいるミクでさえも知らないのだから。
このまま何事もなく旅行も終わってくれればいいんだけど、勝負の話がある以上はそうなるはずがないし……。
「お兄ちゃん、見て見て!」
「ん?……ぶっ?!」
飛び跳ねるような足取りで、試着室からこちらへと駆け寄ってきた美月。
莉斗はそんな彼女の格好を見て、驚きのあまり思わず吹き出してしまった。
「な、何その格好!」
「どうかな、大人っぽい?」
少し頬を赤らめながら聞いてくる彼女の格好は、肩見せタイプのタイトなワンピース。
肩どころか鎖骨まで見えるレベルな上に、体のラインがはっきりと分かってしまう。
正直、大人っぽいというか……うん、エロい。
「お兄ちゃん鼻の下伸びてる♪」
「の、伸びてないよ……」
「伸びてるもん!」
否定しつつも、自分でもこの反応を抑えきれていないことは分かっていた。
ただ、妹相手にそういう目を向けるなんて兄としても人としても終わってしまうわけで、違うと言い張る他ないのである。
「ミク、これはセーフなの?!」
「んー、ギリギリアウトかな」
「ならどうして着せたの?」
「夏の暑さのせいにすればセーフなのよ!」
「ミクに任せた僕が間違ってた……」
結局、吹き出した時に莉斗の唾が飛んでしまっていたため、買い取ることになってしまったのだけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます