第87話 一難去ってまた一難
「あ、危なかった……」
ギリギリのところで
しかし、ホッと一息つけるとタオルを床に音した瞬間、クローゼットがゆっくりと開いて中にいた人物と目が合ってしまう。
「み、ミク……」
「莉斗?! は、早かったわね……」
ただクローゼットの中にいただけなら、転んで入っちゃったなり奥の方に落ちてたものを拾ってたなりの言い訳ができただろう。
ただ、今の彼女は何故かスカートのチャックが半開きになり、服は下着が見えるギリギリまでめくれ、左手には莉斗のパンツを握りしめていたのだ。
「わ、わわわ私はそろそろお暇させて……」
「待ってよ」
「ひゃいっ?!」
そろりそろりとドアへ向かおうとするミクを呼び止めると、彼女はビクッと背筋を伸ばしてプルプルと震える。
どうやら悪いことをしている自覚はあったらしいし、注意すればまだ反省してくれる段階らしかった。
「ほら、そんな格好は真面目なミクらしくないよ」
「うぅ……」
スカートのチャックを上げ、服もきっちり下ろし、軽く反抗をする手からパンツも取り返す。
すごく悲しい顔をしていたけど、そんなに欲しかったのかな。いや、さすがにあげないけどね。
「えっと……そういうことをするなら、自分の部屋でやってね。僕も見つけると困っちゃうから」
「た、確かに困ってるわね」
「……っ?!」
ミクが視線を下げたのにつられて自分も下を見てみると、湯冷めのせいかトラブルのせいかシュンとしている自分のアレが視界に入る。
莉斗は慌てて巻き直そうとタオルを手に取るも、背中を向けた隙に腕ごと抱きつかれて、そのまま床に押し倒されてしまった。
「莉斗のソレ、元気ないのに昔より大きいのね♡」
「い、いつと比べ……ていうか、見ないでよぉ……」
「莉斗が見せつけてきたんじゃない」
「そんなつもりは……ひゃうっ?!」
身動きの取れないまま背中に口付けをされ、普段は出ないような変な声が漏れる。
続けて舌を這わされたり、肩甲骨辺りを甘噛みされたりすれば、いくら抗っても下腹部はキュンキュンと苦しいほどに感じてしまう。
「ねえ、莉斗」
「な、なに?」
「私、さっきのでもう準備できてるわよ?」
「準備って?」
「もう、そんなこと言わせないで……」
はぁはぁと荒い息が耳に吹きかけられる度、莉斗は自分の理性が削られていっているのが分かった。
ミクが穿いていたであろう下着が顔の横に落とされてから、その速度はさらに加速して思わず頭がクラっとする。
「莉斗もまだよね?」
「……う、うん」
「私、この初めてだけは絶対に交換したかったの」
「っ……でも……」
「今じゃなきゃ、手遅れになるかもしれないのよ」
真剣な彼女の瞳をチラッと見てしまえば、その気持ちを無下することなんて出来なかった。
何より自分の体もGOサインを出している。双方が準備できているにも関わらず、莉斗は何かに掴まれたように前には進めなかった。
「ごめん、やっぱりまだこういうのは……」
彼が床に突っ伏しながらそう呟くと、ミクは一瞬だけ悲しそうな顔を見せた後、「そうよね、先走りすぎたわ」と苦笑いして逃げるように部屋から出ていってしまう。
莉斗はその背中を追いかけようかとも思ったが、さすがに裸で部屋から出るわけにもいかず、結局数分後に『ごめん』とメッセージを送るだけにした。
既読だけついて返事は返ってこなかったけれど。
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