第85話 妹の欲望は兄にも制御不能

 ミクと彩音が話をしている一方その頃、2階では莉斗りと美月みつきに押し倒されていた。


「ま、まだするの?」

「テスト勉強でストレス溜まってるの。大人しく言うこと聞いて欲しいな〜?」

「僕は発散するための道具じゃ……」

「美月の玩具だもんね♪」

「っ……」


 それまで少し抵抗していた莉斗も、彼女に諦める気がないと悟って全身の力を抜く。

 少しの間我慢すれば、それだけで全部終わるのだ。逆らえない以上はこの方が楽に決まっている。


「美月ね、お兄ちゃんにはミクお姉ちゃんと結婚して欲しいの」

「どうして?」

「お姉ちゃんが大好きだからに決まってるでしょ?」

「その割にこの前、脅したらしいけど」

「それはそれ、これはこれ。むしろあの程度で秘密を隠してあげたんだから、感謝されるべきだよね」

「結局、その秘密ってなんだったの?」

「教えられるわけないでしょ?」


 美月はそう言いながら、右手の中指と人差し指を莉斗の口の中へと突っ込んできた。

 上下から舌を挟んだり、上顎をそっと撫でたりされると、無意識に体がピクっと反応してしまう。

 どれだけ平然を装おうとしても、もはや兄の威厳なんて微塵も残されていなかった。


「お兄ちゃん、初めよりいい顔するようになったね」

「うっ……」

「どっちに開発されちゃったのかな? あはっ、それとも美月のせい?」

「……」

「無視する悪い子にはお仕置が必要だよ……な?」

「んぐっ?!」


 指を一気に奥まで突っ込まれ、腹の奥から嫌悪感が込み上げてくるも物体が出てくるわけではなく、ただただ気持ち悪さだけが嗚咽として漏れる。


「はぁ、こうしてるだけで飽きないよ」

「っ……はぁはぁ……」

「あ、苦しかった? ごめんね」

「ねえ、こういう危ないのは勘弁してよ」

「やだ。苦しくなきゃ罰じゃないもん」

「僕にこういうことする理由だって、もうないんでしょ? なら普通の兄妹に……」

「戻れる。本当にそう思ってるの?」


 彼女は莉斗の口から引っこ抜いたばかりの指を眺めると、それを根元から舌先で舐め上げてにんまりと笑って見せた。


「お兄ちゃんには出来ても美月はもう無理だよ」

「ど、どうして……」

「美月ね、お兄ちゃんを虐めてる時が一番楽しいの」

「そんなのおかしい、どうかしてるよ!」

「うん、自分でも狂ってるってわかってる。けど、そんなんじゃ止められないの」


 美月はそう言いながら服を脱いで下着姿になると、細長い形に折りたたんだTシャツを彼の目元に押し当てる。


「何するつもり? 見えないよ……」

「お兄ちゃんは何も見なくていい。美月の音と感触に集中して」

「それってどういう―――――――っ?!」


 真っ暗な視界の中、何かがゆっくりと近づいてきたと思えば、それは自分の唇に優しく触れた。

 何度も短いタッチを繰り返し、少し長く、もう少し長くと回数を重ねる毎に時間が伸びていく。

 ついには何かヌルヌルしたものが入り込んできて、それが何かを理解した瞬間、莉斗は力任せに美月を押し退けた。


「やめてよ……兄妹なのに……」

「ねえ、美月に逆らっていいの?」

「僕はお兄ちゃんとして、妹がおかしくなるのを放っておけない。告げ口するならしていいよ、それで美月が元に戻るなら」

「……」


 彼女はしばらくこちらを見つめた後、「何それ、つまんない」と呟いてベッドから降りる。

 莉斗はこれでようやく解放されると胸をなで下ろしたのだが、あろうことかベッドの写るようにカメラ機能をオンにしたスマホをセットした美月は、すぐに戻ってきて彼の唇にキスをした。


「っ……んぁ……んん……」

「んっ……んぅ……ぷはっ」


 肩で息をしながらねっとりとした橋のかかるお互いの口を離した彼女は、頬を高揚したように赤く染めて意地悪な笑みを浮かべる。そして。


「この先もしちゃおっか、お兄ちゃん♡」


 完全に光を失った瞳で莉斗を見つめつつスカートのチャックを下ろし、抵抗しようとする彼の耳の中へと舌を突っ込むのだった。

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