第82話 久しぶりだとより求めたくなる

「うへへぇ、莉斗りと君だぁ♪」


 ミクとの勉強会の翌日、朝から莉斗は玄関先で彩音あやねに抱きつかれていた。

 ビリビリの件はあったものの、純粋に彼に触れるのは1週間ぶり。少し離れたところからミクが頬をピクピクとさせているけれど、そんなのもお構い無しだ。


「ほら、学校行こ?」

「彩音さん、キャラ崩壊してない?」

「莉斗君成分補給したら戻るから大丈夫♪」

「そ、そう?」


 すごく絡みにくい感じでグイグイ来るから思わず一歩引いてしまいそうになるけれど、いずれ戻るのなら大丈夫だろう。

 莉斗はそう思って放置したのだが、3m後ろにミクを連れたまま学校に到着してもなお、彩音のベタベタモードは解除されない。


「あ、彩音さん? 見られてるから……」

「ミクちゃんとだってこんなことしてたじゃん」

「あれは幼馴染だから……」

「私はダメなんてズルい」

「うっ……」


 オネダリするような目で見つめられれば、莉斗の理性は一発でノックアウト。なんでも許してあげたくなってしまう。


「わ、わかった。その代わり、放課後まで我慢して」

「待ーてーなーいー!」

「わがまま言わないでよ……」


 イジワルで大人な彩音も莉斗にとって勝てない相手だが、子供っぽい彩音にも同じく勝てない。

 ただ、彼女のいちばん厄介なところは、単にその二面性だけではないのだ。


「ほら、見て?」


 彩音はそう言って口を開けると、舌を出して見せる。彼女の口内は唾液で湿っていて、舌を動かす度にクチュクチュっといやらしい音が鳴って……。


「私のここ、すごくトロトロだよ?」

「っ……」

「1週間放置されて、こんなになっちゃったの」

「外だからそういうこと言うのはやめようよ」

「このままじゃ私、授業中に莉斗君を襲っちゃう」

「そ、それは困るけど……」


 ハァハァと吐き出される吐息は微かにミントの香りを漂わせ、湯気が立つんじゃないかというほどに熱い。


「今舐められるか、授業中に舐められるか。どっちが好きな方を選んで」

「どうしても放課後まで我慢できないの?」

「頑張ればできるかもだけど、保証は出来ないよ?」


 何せ、莉斗を前に耳を舐められない彩音は、肉を前に3日待てをされている獰猛な犬と同じ。いつ痺れを切らすかわかったもんじゃない。


「ちなみに、ミクちゃんとは何回したの?」

「1回の基準が分からないけど……」

「疲れて休憩までが1回とすると?」

「……1週間で15回くらいかな」

「それ、超えれるように頑張ろうね♡」


 ミクが背後で「温泉旅行が……」と呟いていたけれど、そんな声が聞こえていない彩音はグイグイと莉斗を引っ張って連れて行ってしまうのだった。

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