第76話 隠し通すべき秘密
放課後、莉斗は「少し話が……」と声をかけてきた
「話くらいしてもいいでしょ?」
「休み時間とかは話してるんでしょう?」
「それはそうだけど……」
「この一週間はなるべく私だけを見てほしいの。この気持ち、莉斗にも分かるわよね?」
「……うん」
返事をしてからは止まることなく家まで最短距離で帰り、莉斗の部屋へ直行してカバンを置く。
それからミクは何も言わずに部屋を出ていくと、2分ほどして「これで大丈夫」と戻ってきた。
「
「なんて言ってた?」
「『自分もミクお姉ちゃんと勉強したい、お兄ちゃん抜きで』って言ってたわね」
「うっ……」
「あんなこと言いながらも莉斗のこと好きよ」
「そうだと良かったんだけどね……」
彩音と違ってミクは知らない、莉斗が妹にされていることを。だからこんなことが言えるのだろうが、当の本人からすればたまったものじゃない。
かと言って、暴露してしまえば二人の関係が悪くなってしまうために隠し通すしかないのだけれど、いつバレるかヒヤヒヤものだ。
「そ、そういえばさ。もしもの話なんだけど」
「……何?」
「例えば彩音さんとミク意外に僕が何かされたとしたら、やっぱり罰が下るの?」
「そうね、襲われたなら相手を東京湾に沈めるだけで済むわよ」
「沈める?!」
「大丈夫よ、何もなけばそんなこと起こらないから」
「う、うん、ソウダヨネ」
つまり、もしも美月がしていることがバレたら、妹に足枷でもつけて深い海の底にブクブクと……。
いや、それを言えば
「それで、どうしてそんなことを聞いたのかしら?」
「な、なんでもないよ」
「人が質問する時って2つあるの。ひとつは本当に分からない時。もうひとつは分かる?」
「……どんな時?」
「ふふふ、心配事がある時よ」
ミクの口元はニコニコとしているが、目が全く笑っていなかった。まさにカッターナイフなんかを持たせたら似合いそうな目をしている。
スっと伸ばした腕で莉斗の体をベッドに押し倒した彼女は、その刺すような鋭い視線のまま彼の腕を押さえつけた。
「私の知らないところで、何かやましいことでもしたのかしら?」
「そ、そんなことないよ!」
「ならどうして聞いたの?」
「興味というか好奇心というか……」
「……本当に?」
莉斗は必死で首をブンブンと縦に降ると、その様子をじっと見ていたミクは短いため息をついてから腕を解放してくれる。
ただ、嘘が通用したという訳ではなく、見透かされた上で許してくれたらしかった。
「莉斗って本当にわかり易いわね」
「……ごめんなさい」
「週間彼女計画が始まる前のことだもの、考えてみれば私に怒る権利はないわ」
「水に流してくれるの?」
「ええ、もちろん」
にっこりと笑って頷いた彼女は、体を起こそうとする莉斗に「でも……」と言いながらそっと耳元に口を寄せると、甘噛みをしながら小声で囁く。
「この一週間は私だけ、それは約束して」
「約束するよ、必ず守るから」
「ふふ、いい返事ね」
その後、ミクの「勉強、する?」という言葉に頷いた彼が、思っていた『勉強』とは違っていたことに戸惑ってしまうことは言うまでもない。
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