第40話 2次と3次は別物
「着てみたけど……どう?」
試着室から出てきた
そこに彼女が元々持ってきていたポーチを斜め掛けすれば―――――――――――。
「……ちょっとイメージと違うかも」
「何のイメージ?」
「SNSで見かけた絵の女の子が似た格好をしてたんだけど、なんと言うかもう少し……」
「もう少し?」
「……いや、やっぱり何でもない」
確実に何か言いかけていたはずなのに、彼は中途半端に言葉を濁した。
そのせいでもどかしい気持ちになった彩音は、莉斗の肩を掴んで不満そうに顔を見上げる。
「言って、ちゃんと」
「本当に大丈夫だから」
「……言わないともう舐めてあげないよ?」
「そ、それは……」
「ほら、言って」
こう言われてしまえば抵抗はできない。莉斗は嫌々ながらも仕方なく、SNSで見た絵とは明らかに違っている部分を指差した。
「胸?」
「絵だと斜めがけにした紐が……その、くい込んでいたというか……」
「要するに胸が小さいからエロくないと?」
「ち、違うよ!」
「……はぁ。やっぱり男の子って大きい方が好きなのかなぁ……」
落ち込ませてしまったのか、彩音は悲しそうにくるりと背中を向けて試着室の中へ戻ろうとする。
しかし、その姿に胸がチクチクとした莉斗は、彼女が閉めようとするカーテンの隙間から入り込むと、その細い腕を掴みながら言った。
「あ、彩音さんは可愛いよ!」
「……莉斗君?」
「比べちゃったせいで気分悪くさせたかもしれないけど、2次元より現実の彩音さんの方がずっと可愛いから!」
「でも、莉斗君の理想には程遠いでしょ?」
「絵はそういう目で見てたから……」
性欲を向ける対象が必ずしも交際・結婚相手に向いているかと聞かれれば、そういう訳では無い。
AV女優に性欲を向ける男は事実として多いが、仕事とはいえ他の男と行為に至る相手と結婚したいかと聞かれれば、首を横に振る人の方が多いだろう。
つまり、莉斗は男子高校生の本能として巨乳の魅力を感じてはいるが、その点に関して純粋な好きには無関係ということだ。
「私のことはそういう目で見てないってこと?」
「もちろん興奮する時はあるよ。でも、少なくとも今は混ざりっけのない気持ちで居られてる自信はある」
「へぇ、そうなんだ♪」
さぞかし嬉しそうに笑った彩音は、「嬉しいよ、そう言ってくれて」と莉斗を抱きしめる。
それから背伸びをして耳元に口を寄せると、甘い声でボソッと囁いた。
「でも、今の彩音さんはすごく興奮してますよ?」
「……え?」
「試着室に二人っきり、こんなシチュエーションに憧れてたんだぁ〜」
「あ、ちょ、彩音さん?!」
「そういう目でしか見れなくなるくらい、すんごい気持ちいいことしてあげるね♥」
その後、莉斗の喘ぎ声が漏れたせいで店員に見つかり、「お釣り入らないので!」とお金だけ置いて逃げることになることを、この時の2人はまだ知らない。
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