第39話 悩んでくれるだけいい
「
「まあ、
「じゃあ、デートだとして聞きたいんだけどさ」
彩音はそう言いながら莉斗よりも数歩先へ進むと、くるりと振り返りながら小さく首を傾げて見せた。
「デートっぽいこと、しないの?」
「デートっぽいこと?」
「例えば手を繋いだり、2人で思い出の写真撮ったり、似合う服を選んでくれたりとか!」
「写真はいいけど、僕に服のセンスはないし……」
「悩んでくれるだけでいいんだよ!」
莉斗は「ついでに褒めて愛でて、袋代わりに持つよくらい言ってくれたら文句なし!」と親指を立てる彼女に「ついでが多いなぁ」と思いつつも、とりあえずOKをしておく。
せっかくこうして遊びに来たわけだから、彩音にも存分に楽しんで欲しいのだ。
「じゃあ、まずはお店選びからリードしてくれる?」
「そういうの初めてだからさっぱりだよ」
「フィーリングで大丈夫」
彼女もそう言ってくれているし、頑張るだけ頑張ってみよう。そう心の中で頷いた彼は、今いる場所から見える服屋を順番に観察してみた。
1つ目はいかにも若い女の子向けの店といったデザインで、マネキンが着ているものにもフリルが着いている。
2つ目は大人の女性向けで、露出の少ないカッチリとした服が多く見える。派手なものは無いものの、綺麗な人が着ればすごく存在感が出るだろう。
3つ目はどこにでも着ていけそうなカジュアルなものがメインで、誰にでも似合いそうな無難なものに見える。
「4つ目は……あ、あれは違うのかな」
「莉斗君、私にあれを着て欲しいの?」
「ち、違うよ!」
にんまりと頬を緩めながら「どうしてもって言うなら考えたんだけどね〜♪」と呟く彩音。
そんな彼女が眺めていたのは、コスプレ専門店の店頭マネキンが着ているバニーガールの衣装だ。
「コスプレASMRってのもありだよね」
「今のままで満足だよ」
「仕方ないなぁ、そこまで言うならあれも買ってあげるね!」
「いや、僕は何も言ってないんだけど……」
「ナース服もあるみたいだね、追加しとく?」
「お願いします!」
突然の食いつきに若干驚きつつ「莉斗君はナース服派なの?」と聞くと、彼は照れたように頷いて見せた。
そう言えば、初めの頃に見た動画履歴にコスプレ系のものがいくつかあった気もする。
自分がしてみたいという気持ちはもちろんあるものの、彼が喜んでくれるのならやらない理由はなかった。
「まあ、そっちは後にしよっか。先に莉斗君の選んだお店を教えてくれる?」
「僕は彩音さんならやっぱりあそこかな」
「……ほう、良いチョイスだね」
その感心したような目を見て、内心自分の感性を疑っていた彼はホッと胸を撫で下ろす。
彩音のスタイルがいいだけに、どうしても着てみて欲しい服があの店にあったのだ。
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