第41話 知らないことは知りたいと思う
「ごめんね、逃げ出すことになっちゃって」
「ううん、僕の声のせいだから」
何とか店員から逃げ切り、冷たいジュース片手にフードコートの一角へ腰を下ろす2人。走ったせいで体温が上がり、流れてくる汗を慌ててタオルで拭った。
「最後まで出来なかったけど、後で続きする?」
「出来るならしたいけど……」
「けど?」
「いや、最後ってどこなのかなって」
「……確かに」
「
「気持ちいいから満足感はあるけど、ここって決まった終わりは無いかな」
「私も舐めたことしかないから、される側の気持ちは分からないんだけど―――――――――あっ」
その瞬間、何かを思いついたように声を上げた彼女がにんまりと笑ったのを見て、莉斗は今後の展開を全て察してしまったのだった。
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「ほ、本当にここでするの?」
「嫌なら歌うだけにする?」
「嫌ではないけど……」
曖昧な返事をする莉斗に擦り寄るように隣へ腰を下ろした彩音は、カゴからマイクを取り出してスイッチをオンにする。
そう、ここはショッピングモールの近くにあるカラオケ屋さん。よくないとは分かっていながらも、2人きりになれる場所を求めてここに来てしまったのだ。
「私、歌ってるから好きなタイミングで来ていいよ」
「う、うん……」
しかし、これから行われるのは決していかがわしいことではない。あくまで耳舐めにおける『最後』を探すお手伝いをするだけ。
莉斗は自分にそう言い聞かせつつ、心地よさそうに熱唱する彩音の横顔を見つめた。
体が揺れる度にチラチラと髪の隙間から見える耳。自分が彼女のを舐めるなんて想定していなかったからか、普通の耳のはずがものすごくいけないものを見ている気分になってしまう。
「……はぁはぁ」
いつがいいかとタイミングを伺っていたが、もう我慢できない。莉斗は彩音の歌がサビに入った瞬間に限界を迎え、彼女を押し倒すようにしてその耳にキスをした。
「んぁっ、莉斗君……」
「彩音さん、すごく可愛い声出てた」
「そ、そういうのは言わないで……」
恥ずかしかったのか両手で顔を隠してしまう彩音は、指の隙間からちらりとこちらを覗くと、いつもよりか細い声で言う。
「私、初めてだから激しくしないでね?」
「彩音さんは初めから激しかったよ?」
「……なら、莉斗君のしたいようにして。全部受け止めてあげるから、ね?」
優しく微笑んだ彩音の目を見つめながら頷いた莉斗は、軽く突き出した舌をゆっくりと彼女の耳の中へと滑り込ませていった。
「んにゃぁっ?!」
「ごめん、びっくりさせちゃった?」
「違うの。莉斗君の舌がすごく熱くて……」
既に真っ赤になっている彩音の艶っぽい声を聞きながら、莉斗が腹の奥底で蠢く何かを感じたことは言うまでもない。
「……そんな顔されたら、そういう目で見ちゃうよ」
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