第33話 綻びに気付かれる
ミクの上達具合を思い出して、耳がこそばゆく感じていた翌日の昼休み。
そんな彼の耳に、少し離れた場所からコソコソと話す声が自然と聞こえてくる。
「
「そ、そう見える?」
「噂になってるよね、昼休みにこっそり2人でどこかに行ってるって〜♪」
「はぁ?! ち、違うからね?!」
あわあわと慌てつつ、こちらに視線を向けてくる彩音の目が『知らないフリをしろ』と言っていた。
それを察した莉斗はぷいっと目を逸らし、程よいタイミングであくびをしてごまかす。我ながらなかなかいい演技かもしれない。
「じゃあ、付き合ってるわけじゃないのか?」
「当たり前じゃん!」
「さすがにぼっち君と付き合うわけないよね〜」
「そうそう、男なんて他にいくらでもいるし?」
「そうだよな」
「だよね〜♪」
彩音の友達2人はお互いに目配せをしながら頷くと、何故か莉斗の方を見てニヤニヤと笑った。
そして『ほんとごめん!』と言いたげな表情を見せる彼女をその場に残して、こちらへと歩み寄ってくる。
「それなら私たちがどうしようと関係ないよな?」
「……へ?」
「前からずっと気になってたんだよね〜」
「え、ちょ……」
焦る彩音を無視して2人は莉斗の腕を掴むと、強引に教室から連れ出されてしまう。
そしてそのまま引きずられるように廊下を運ばれていくと、気が付けば見慣れた場所に連れてこられていた。
「鍵はこうやってかけるんだっけ〜?」
そう言いながら扉が開かないようにモップを挟むタレ目な友人A。そう、ここは通称『いつもの場所』である体育倉庫だ。
『ちょっと、何やってるの?!』
「彩音は静かにしといてくれ。これからお楽しみの時間なんだ」
『莉斗君、逃げて! 襲われちゃうよ!』
「酷い言われようだな。私はちゃんと合意の上でしか押し倒したことは無いぞ?」
扉越しにそんな会話をしつつ、リボンを解いて胸元のボタンを外す金髪黒ギャルな友人B。たわわな胸を包み込む下着が露わになり、莉斗は思わずじっと見つめてしまった。
「まあ、彩音には悪いな。私は狙った男に拒まれたことがないんだ」
「さすが男食べまくりの
「ゴムありなんて遊びと変わんないだろ、
「雪菜にはまだ分からないかな〜」
おっとりとした表情で莉斗に近づく友人A、もとい雪菜。彼女は莉斗の首に顔を寄せると、スンスンと匂いを嗅いで舌なめずりをする。
「美味しそうな匂い〜♪」
「今日は雪菜が先にやるか?」
「そうしようかな〜」
真唯に譲られて嬉しそうに「いただきまーす♪」と口を開ける雪菜。だが、彼女は外にいる彩音が『やめて!』と叫ぶ声を聞くと動きを止めた。
「おかしいな、長篠とは何も無いんだろ?」
『あ、あるよ!』
「じゃあ、2人はどういう関係なの〜?」
『それは―――――――つ、付き合ってるの!』
「えっ」と驚く莉斗には目もくれず、真唯と雪菜はその一言を聞くと教室の時と同じように目配せをしてから、にっこりと微笑み合って挟んでいたモップを外した。
「やっと認めたな?」
「やっぱりカレカノなんだ〜?」
「あ、いや……うん……」
何とかひとつの危機を乗り越えた莉斗たちだったが、また新たな問題が発生してしまったらしい。
「付き合ってるって証明してくれよ」
「私もみたいな〜♪」
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