第32話 努力の成果
彼は相変わらず
「莉斗、疲れてるの?」
「ちょっとだけね」
「そ、そんな時に悪いとは思ってるんだけど……」
そしてまさに今、莉斗はミクの部屋で耳を狙われていることに気がついた。しかし、彼女ならこういう時はちゃんと遠慮してくれるから安心だ。
「今日だけはどうしても舐めさせて欲しいの」
……いや、前言撤回。こういう日に限って、何故か引き下がってくれそうにない目をしている。
しかし、莉斗はもうくたくただ。今日は2度も強引にされているから、夕方にもというのは帰宅部には少しハードすぎるからね。
「ごめん、明日にしてくれない?」
「だめ、今日がいい」
「わがまま言わないでよ」
「
「まさか見てたの?」
「ぐ、偶然見かけただけよ!」
「偶然であの場所は見つけないと思うけど」
今日彩音に連れていかれたのは、いつもの体育倉庫ではなく別棟にある空き教室だった。
別棟自体調理実習や実験が無ければ立ち入ることは無い上に、あの階にそういう教室は入っていない。
つまり、何か目的があって立ち入らなければ、昼休みに空き教室で莉斗を見つけることは無いのだ。
「ち、違うの! あの場所はカップルの密会に使われてるって聞くじゃない、私はそんな淫らな行為を阻止するために……」
「じゃあ、ミクも今度一緒に行こっか」
「行くー!」
「……あっさり画面剥がれたね」
期待の眼差しを向けてくる彼女に「ごめんね、冗談だから」と伝えて宥め、不満そうに膨れさせた頬を優しく撫でてあげる。
「ミク、ずっと見てたの?」
「……そりゃ、好きな人が他の人に喘がされているのよ? 興奮す……いえ、悔しいじゃない!」
「今興奮するって言いかけたよね?」
「そんなことないわ」
「本当かなぁ」
怪しいものの証拠を出せと言われても出せないので、余計なことを言ってしまう前に莉斗は話を元に戻した。
今の彼が一番気になっているのはことは、やはりこれなのだ。
「どうして今日は外せないの?」
「そ、それは……」
「熱を出した日の夜にも沢山したのに、もう我慢できなくなった?」
「違うわよ、私はそんな変態じゃないわ。ただ、なるべく早く試してみたくて……」
モジモジとするミクに「試すって何を?」と聞いてみると、彼女は「教えてもらったの、耳舐めの仕方」と紙を見せてくれる。
そこには見覚えのある顔写真と、その人物がダミーヘッドを舐めるシーンが貼り付けられていた。
どうやら教えを乞うた相手は『しののん』こと
。
「この前、鈴木さんに制服を貸す代わりにって、教えてもらえるように約束を取り付けてもらったの」
「あの人はもうプロだもんね」
「ええ、すごく上手だったわ。耳に舌が入ってくる感覚が気持ちよくて―――――――――」
「……ミク、耳舐めされたの?」
「か、体で覚えなさいって言われたんだもの! でもそれ以上はしてないから安心して?」
「それ以上って?」
「っ……もぅ、バカ」
ミクは耳まで真っ赤にすると、軽く莉斗と胸にパンチしてからぎゅっと抱きついてきた。
「少しは上手くなったから、莉斗に早く喜んでもらいたいの」
「……わかった、ミクのために頑張るよ」
「ふふ、ありがとう♪」
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