第30話 純粋な目で見れば単なる医療行為
身動きの取れない状況で、体の中に異物が入り込んでくる感覚。それは感じている本人ですら言葉にできないほどの違和感だった。
「ひぅ……んん……」
「声が漏れちゃってますよ? 痛いですか?」
「い、痛くはないけど……はぅっ?!」
「あ、すみません♪ 入りかけだったのに引っこ抜いちゃって」
「ひ、酷いよぉ……」
お尻以外は見えないように半ケツ状態にしてくれてはいるが、その目付きや手の動きからして完全に一線を超えてしまっていた。
「もうむり……」
「震えちゃって可愛いです。最後は一思いにやっちゃいますね」
「ま、待って。せめてゆっくり―――――――っ?!」
制止する声も聞かず、彼女は指ごと一気に押し込んできた。直腸の奥の方を押される初めての感覚に上手く呼吸ができない。
普段は排出するためだけに使っている場所へ、他人によって何かが侵入してくる異物感が、苦しくて苦しくて仕方がなかった。
「ほら、お腹に力入れたらダメですよ〜?」
「そんなこと言われても……んにっ?!」
「馴染むまでこのままでいてあげますね」
「い、痛いから……もう抜いて……」
「お断りします♪」
「んぇぇ……」
目には見えないが、彼女の細くて綺麗な指で腸の壁を撫でられているのが分かる。
その度に何かが口から飛出そうになる不快感と、体の危機から心を守るための快感が混ざって頭がおかしくなりそうになった。
「顔が真っ赤じゃないですか、熱が上がったんですか?」
「ゆ、夕美さんのせいだよ……」
「それなら責任を取って看病してあげないといけませんね♪」
「や、やめて。もういいからぁ……」
じたばたと暴れてみるも、「そんなにしたら抜けちゃいます……よっ!」と指を二本に増やされて全身から力が抜けてしまう。
「ふふふ。つい最近まで癒しだった声、もう嫌いになっちゃいましたか?」
「嫌いじゃないけど……怖いよ……」
「すみません、今度こそ優しくしますから」
「ほ、ほんと?」
涙目でそう聞く莉斗に、夕美はにっこりと微笑みながら指をスポッと抜いてあげた。
そして小走りで手を洗いに行ってから、鍵を片手に戻ってきてて鎖の束縛から解き放ってくれる。
「BLは激しいのが好きなんです。怖がらせてごめんなさい」
「だ、大丈夫……あくまで治療だから……」
「ここからは少し路線を変えましょうか」
「……へ?」
てっきり作画資料役は終わりだと思っていた莉斗は、彼女がカバンの中から取り出したものを見て目を丸くする。
黒髪ロングのカツラに白いTシャツと水色のスカート、全て夕美の私物なのだろうか。
「次はGLの資料を取らせて貰えますか?」
「そ、それってつまり……」
「前から絶対に似合うと思ってたんですよ〜♪」
ニヤニヤと笑いながら歩み寄ってくる彼女を前にして、莉斗は男らしさの欠片もなく腰を抜かして動けなくなってしまったのだった。
「男の娘って設定もありですよね?」
「な、なしだよぉ……」
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