第28話 熱は熱でもそういう意味じゃない
「熱? 莉斗、学校休みたいの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……」
「ダメよ、健康が一番なんだから。まあ、その時は私が看病できるからいいけどね」
「はぁ……」
やっぱり教えてはもらえないか。彼はしゅんと肩を落としつつ、もう一度ネットで調べることにする。
どこのサイトを見ても書いてあることは大体同じで、玉ねぎを脇に挟むだとか、醤油を飲むだとか、そういう有名なものばかりだ。
しかし、玉ねぎは匂いが残る上に処理に困るし、醤油も飲みすぎると死ぬ恐れがあるため実行できない。
他の方法も信憑性に欠けるものが多く、試してみる気にもなれなかった。
「どうすればいいのかなぁ」
「莉斗、どうしてそんなに熱出したいの?」
「そ、それは……」
「幼馴染にも言えないこと?」
その質問に反応出来なかった莉斗を見て、ミクは深いため息をついてから彼に顔を寄せる。
「もしかして、私の知らないところで新しい女でも現れた?」
「っ……」
「図星みたいね」
彼女の知らないと言えば、
この2人はどちらがバレてもかなりまずいし、両方バレれば愛想を尽かされる可能性もある。
だからこそ、その危機感から体が強ばってしまったのだが、完全に気付いているはずのミクは莉斗の体を優しく抱きしめてくれた。
「私にあなたを止める権利はないわ。だから、私は私が勝てるチャンスをくれるだけでいい」
「ミク……」
「どれだけ女の子が増えても、私との時間は無くさないで。そうしてくれれば文句は言わないから」
こんな優しい言葉をかけられると、フラフラしている自分が情けなく思えてしまう。
いや、実際情けないのだ。好きだという気持ちも見つけられず、強引にされるといつも鳴いてしまう男らしさの欠片もない自分は。
「いつか答えは出すつもりなんだけど……」
「焦らなくてもいいわよ。私だって幼馴染として失った時間を取り戻したいし」
「僕も出来る限りミクと一緒に過ごす時間は作るようにするよ」
「ふふ、これから楽しみにしてるわ」
ミクはそう言って微笑んでから、「それと……」と言いながら膝の上に股がってきた。
そして莉斗の背中を後ろのベッドの縁に付けさせ、ゆっくりと舌なめずりして見せる。
「莉斗ならこれだけで熱出せるでしょ?」
身動きを取れないようにされたまま否応なしに唇を重ねられた彼は、舌で舌を撫でられる感覚に思わず腰が動いてしまった。
「もぅ、動かさないで」
「ご、ごめん……」
「ふふ、そういうことは私を選んでからね♪」
もはや自分を選べば何でもさせてあげると言っているようなものである。
健全な男子としてその誘惑に乗りそうになるが、たとえ今選んでもミクはそれで許してはくれないはずだ。
一時の感情による行動ほどわかりやすいものは無いのだから。ましてや幼馴染、見透かされないはずがない。
「ほら、莉斗も舌動かして?」
「ふぁぃ……」
「ぁん、これすごいわ……」
くすぐったそうに肩をすくめるミクの表情に見蕩れてしまった莉斗は、突然包むように両頬に手を当てられる。
そして彼女の言葉でようやく自分の肌の赤らみに気がつくのであった。
「ほら、もう2人とも熱々ね♥」
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