第27話 Mでも怖いものはある
責任という言葉は使いようである。これを使えば、善良な人間の心に漬け込むことが出来るのだから。
「そういうわけだから、
「……は?」
しかし、その要求があまりにも非常識なものだった時に限って、洗脳が解けてしまうこともあるのだ。まさに今の
「さすがにそれは無理だよ」
「私の秘密を知ったんですよ? それくらいしてもらわないと割に合いません」
「で、でも……」
中澤くんというのは、以前『夕奈を保健室に連れていく』というイベントの時に莉斗の邪魔をした人物だ。
一見完璧に見えるものの女
莉斗は
「中澤くん、女遊びが酷いらしいですよね」
「し、知ってて要求してきてたの?」
「女誑しが男の子同士で……なんて、逆に萌えるじゃありませんか!」
「そんなに熱く語られても、無理なものは無理だよ」
さすがにこればかりは聞いてあげることは出来ない。そもそも、中澤くんに話しかけたところで不可能なのはわかり切っていることだし。
莉斗が心の中でそう呟いていると、夕美は教室の窓の外を見ながら「あ、中澤くんがいますよ」と指差した。
「これから部活ですね」
「そ、それじゃ、僕は宿題があるから……」
「おっと、帰しませんよ?」
逃げようとした彼の腕をがっしりと掴み、口元をニヤリとさせる夕美。
どうやら本気でリアルBLをさせるつもりらしい。彼女の構想では莉斗が受けだから、もし実現したとすれば狙われるのは彼のお尻になる訳で……。
「さあ、今から頼みに行ってください♪」
「それだけは許して、お願い」
「抵抗しちゃうんですか?」
「だ、だってぇ……」
想像するだけで怖いのだ。好きでもない相手とそんなことをして、おそらく痛い思いをすることが。
プルプルと震える莉斗を見た夕美は、彼が心の底から嫌がっているのを察したのか、短くため息をついて「やっぱりやめます」と言ってくれた。
「い、いいの?」
「私も莉斗さんに嫌われたくありませんからね。ですが、責任の取り方を変更する条件があります」
「条件?」
彼女は聞き返してくる莉斗に頷いて見せると、そっと彼の額に手のひらを押し当てる。
そして、その条件とやらを口にした。
「明日の朝、熱を出してください」
「……へ?」
「どんな手を使ってもいいですから、絶対に熱で学校を休んでくださいね」
どうしてそれが条件になるのかはわからなかったが、莉斗はとにかく自分にとって大切なものを守るためだと言い聞かせながら、スマホで『熱を出す方法』を検索するのであった。
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