第22話 相談相手は選ぶもの

 美月みつきとの一件があった翌日の昼休み。

 たまにはこういう場所でと中庭で昼食を食べていた彩音あやねは、隣に腰かける莉斗りとの顔を心配そうに覗き込んだ。


「莉斗君、どうかした?」

「ううん、大丈夫……」

「でも、朝から元気ないよ」


 彩音に隠しておいても余計気にかけさせてしまうだけになる。そう察した莉斗は、昨晩のことを彼女に話すことにした。


「じゃあ初対面で冷たかったのは、もうバレてたからってこと?」

「多分そうかな」

「んで、莉斗君は妹ちゃんに二つの意味で舐められちゃったと」

「……そうなるかな」


 莉斗が顔を赤くして俯くと、彩音は彼の両頬に手を当てて自分の方を向けせる。

 そして「負けちゃダメだよ!」と言いながら軽くペシペシと叩いてきた。


「妹ちゃんは唯斗君が抵抗したら言いつけるって言ってるんでしょ?」

「う、うん」

「なら、抵抗せずに堂々としてればいいよ」

「そんなこと言われても……」


 困ったようにそう言う莉斗をジト目で見た彼女が、「もしかして脇舐められて感じてたの?」と普段よりワントーン低い声で聞く。


「っ……」

「莉斗君ってどこでも感じちゃうんだね」

「そ、そんなことないよ!」

「じゃあ、試してみる?」

「……へ?」


 ちょうど食べ終えた弁当箱をベンチに置き、莉斗の腕を引いて茂みに隠れた彩音は、誰も見ていないのを確認してから彼の背中に指を這わせた。


「あぅ……」

「まず背中」


 次に制服のシャツを引っ張り出すと、中に手を突っ込んでお腹を指でクルクルと弄る。


「んぁっ」

「お腹もだね」


 今度はその手を太ももを掴み、撫でるように下から上へと移動させた。段々と下腹部に近づいてくるごとに、全身の筋肉の強ばりが増していくのが分かる。


「ふぁ……」

「気持ちよさそうだね?」

「こ、これは心地いいだけだよ」

「へぇ、じゃあこれは?」

「はぅっ?!」


 彩音がニヤリと笑った直後に唇に感じた幸福感。当たり前のようにキスをしてくる彼女に戸惑いつつも、徐々に口内を犯し始める舌に体が反応してしまった。


「お口も感じちゃうんだもんね♪」

「うぅ、ズルいよ」

「ズルいのは莉斗君だよ。色んな女の子に舐められて、体ビクビクさせちゃってさ!」

「彩音さん、本題はそこじゃなくて……」

「あーもう! なんでこんなにモヤモヤするかな!」

「あ、彩音さん?」


 完全に自分の世界に入り込んでしまった彩音は、声をかけても肩を叩いても反応してくれない。

 しかし、突然何かを思いついたように動きを止めると、莉斗の両肩をガッシリ掴んで瞳をきらきらとさせた。


「そうだよ! バレてるなら好きなだけ莉斗君の家でできるじゃん!」

「……へ?」

「今日の放課後、一緒に帰ろうよ。お姉ちゃんに教わった新しいテクニック、披露してあげるから♪」


 この時、莉斗が『この人に相談したのは間違いだったかもしれない』と後悔し始めていたことは言うまでもない。

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